第114話 出れないであるからして

 シューマ大暴れ事件から数日たったのち、シャスティであるお達しが下った。

 簡単に言えば、従魔の行動制限である。行動制限といっても普通に外に出てはいいのであるが、シャスティより外に出てはならないということらしい。狂操状態のことが詳しく分かっていない以上、外に出てシャスティ内で暴れられたらお互い不幸なことにしかならないということだ。まぁ納得はできるである。

 でもその行動制限、勿論であるが我輩も引っかかるであるからなー……従魔で登録しているであるからなー


「別にコーリィ達は依頼に行っても構わないであるぞ?我輩ら、留守番しているであるし。」

「ワウ。」


 我輩とポチがいなくとも、コーリィ達であるならば上手く立ち回れるであろう。……というか下手な同ランク冒険者より強いまであるであるぞ。

 ティナとロッテは、了承したのであるが、コーリィは我輩がいないと嫌だと言い出した。と言われてもであるな。我輩出れないであるし。シャドウダイブで隠れて抜け出してもいいであるが、バレたときの1年冒険者活動停止が恐ろしいであるからな。我慢せねばならん。


「であるから、行ってくるであるコーリィ。心配せずとも飯はマジックボックスにあるであるから。」

「でも……」

「ぐうたらするのは慣れているであるから。」

「でも……」

「たまには女子水入らずで行ってくるである。」

「でも……」

「とっとと行くである!!!!!」

「は、はいいい!」


 でもでもと繰り返すコーリィに、大声で叱ることで部屋から追い出したである。やれやれ、ようやく一息付け……ん?ポチよ、何であるかその訴えかけるような目は。


「バウ。」


 不満げな鳴き声に我輩はさっきまでの会話を思い出し、ある一つの結論に至った。


「あー、そうであるな。お前も女子であったな。」

「ワウ。」


 忘れんなよとでも言いたげな鳴き声を上げるとポチはベッドで伏せると次第に寝息を立て始めた。

 くぁあ……我輩も眠たくなったであるな。ポチを枕に寝かせてもらうであるかな。お休み。


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 私は外に出てから何回目でしょうか、大きなため息をついてしまいました。原因は分かっています。ネコ様がいないことです。

 今まで別行動がなかったわけではありませんが、それでも主人であるネコ様と離れるというのは心苦しいものを感じます。


「コーリィ、駄目よ?そんなにため息ついてちゃ幸せが逃げてくわ。」

「ネコ様と離れることが私にとっての不幸よ。」

「あっそ。」


 私の返答を予想していたのか、ロッテは特に突っ込むことはなくスルーしました。いや、私もボケたつもりはないんですよ。ネコ様と離れるのはそれほど私にとって重要なことなんですよ。

 というか、私と同じくらいネコ様を大切に思ってる――いえ、私のほうがネコ様への愛情は強いですよね。――ティナは何故あそこまで楽しげなのでしょうか。ネコ様と離れて辛くないんでしょうか?


「ティナ、貴女はネコ様と離れても平気なんですか?」

「うんー?そりゃ私だってネコと一緒に行きたいよ?でもー」

「でも?」

「夫の見てないところで頑張ってそれを褒めてもらえるって素敵じゃない?」

「……」

「……」

「なるほど!!!」

「え、どこに納得する要素があったの!?」


 ティナは時折私に電撃をビビッと走らせるいい子だと思います。ただ一つ、ネコ様のことを夫と言うのは少し心がむかむかしますけどね!


「ちょっと待って……この娘たちのツッコミ全部私が引き受けなきゃいけないの?」……はぁ……」


 おや?ロッテが何か独り言を漏らし方と思うと大きくため息をついちゃいましたね。駄目ですよ、幸せが逃げちゃいますよ?


 さて、私たち3人は、冒険者ギルドに入り、早速貼りだされてある依頼を吟味しました。後ろで何やらざわざわ聞こえますが気にしません。いつものことですから。

 この中で私たちでも行けそうなものと言えば、滝つぼの近くに生えてる空気草の採取でしょうかね。2人に確認をとるとティナは討伐系のほうが良さそうではありましたが、私とロッテで説き伏せてこの依頼に決定することにしました。

 私が依頼書を取ろうとしたところで、後ろから声を掛けられました。

 知り合いだろうかと思ったのですが……誰でしょうか?3人の男が立っていました。


「なぁなぁ、俺らこれからゴングコング討伐行くんだけどよ。パーティたんねぇんだわ。だからよ、人助けだと思って手伝ってくんね?お礼は弾むからよ。」

「あ、結構です。」

「声かける相手間違ってるわよ。」

「お兄さんたち前からずっと私たち見てたよね?何でネコ居ない時に声かけたの?」


 明らかに下心のありそうな気持ちの悪い申し出に私たちはそれぞれが言葉を発し、空気草の依頼書をつかみ取ると唖然とした男たちの間をすり抜け受付へと向かいましたが、その途中で背後から品のない笑い声と勝った負けたと声が聞こえましたね。大方賭けでもしていたのでしょう。冒険者の中でもそう言うの好きな方はいますからね。

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