第40話 緊急依頼である!?

 明らかな異常事態に吾輩は、急ぎコーリィを起こした。


「ふぁあ?ネコ様……?」

「ギルドに行くであるぞ。急ぐである。」

「ふぁーい……」


 未だ眠け眼のコーリィの頬を軽めに叩き、覚醒させる。

 その後、タオラの店で2つ干し肉を買い、2人で干し肉を咥えながら冒険者ギルドに向かったのである。あ、これ美味しい。

 


 ギルド内には、この街の冒険者が全員そろっているのではないかと思うくらいの人間と、その中の何人かの従魔なのか数匹の魔物が揃っていた。

 皆が皆、冒険者ギルドから招集がかかったのは初めての様で、何があったのかとお互いに聞きあっている。

 というか、本当に何があったのであろうと考えていると、受付の奥からギルド長が、ずんずんと足音を立て冒険者たちの前に進み出た。


「鎮まれッ!!」


 重くよく通る声がギルド内に行き届き、あんなに騒いでいた冒険者たちは口を噤み、静寂が訪れる。

 静かになったのをギルド長が確認すると、重々しい表情と声で話し始めた。


「おはよう。まずは、突然の招集にも関わらず来てくれたことに感謝する。さて、早速本題に入るが、今この街に200程のオークの軍勢が向かっているのを確認した。」


 オーク?オークというと吾輩が昨日討伐したあのオークであるか?それが軍勢とは……


「昨日、ある冒険者がオークを狩ってきたのだが、皆も知っての通りここ近辺でオークは確認されたことが滅多にない。そんなオークが現れたのか不思議に思ってな、職員に調べさせたところ……軍勢を発見したという事だ。しかも最悪なことに、そいつらはこの街へと進行している。」


 少しずつざわついていた冒険者たちであったが、ギルド長の最後の街へ進行しているという発言で一気に爆発し、再び騒ぎ始めた。

 「俺が殲滅してやる!」とか威勢のいい声もあったが、それ以上に動揺、恐れなどといったような声が多く聞こえた。

 だが、そんな喧噪もギルド長が背負っていた鞘に入った大剣の先を床にたたきつけた音で一気に静まり返る。


「そこで、緊急依頼だ。諸君らにはオークの討伐をギルドから依頼したい。報酬は狩ってきたオークの数と種類によって異なるため、公言は出来ないが、相応の額を支払うことを約束しよう。」


 ほう、それは面白そうであるな。いや、街の危機に対してそれはいささか不謹慎であるかな?

 だがしかしである。あの豚が何匹も増え、それを狩るだなんて……考えただけで高ぶりが収まらないであるな……どれほど理性的に振る舞っていても所詮は吾輩は獣であるかなーハハハ。


「だが、制限をこちらで決めさせてもらった。」


 え?制限?何であるかそれ、もしかして参加できないとか刈る個数に制限掛けるとかであるか!?

 これには吾輩だけではなく、他の冒険者も反応したようで、次々と疑問の声を投げかける。


「まずはFランクに関しては参加は禁止とし、同時に街から出ることを禁止にする。申し訳ないが、オークの件が終わるまで街の中で解決できる依頼のみ受注できることにさせてもらう。もちろん、こちらの事情で稼げなくなるので、解決するまで、一日生きるだけの金は至急しよう。あとで受付に来てくれ。」


 危ない危ない……昨日付でEランクになっていなければ不参加であったところであるなぁ……

 だが、だからといってEランクに制限がないとは言っていない。まさかEランクも出るなというのではないのだろうか、こンの金剛力士像。あ、目があった。吾輩何も言ってないである。考えてただけである。


「さて、Eランクだが、Eランク以上の冒険者と3、4人のパーティを組んでもらい、時間までに組めなかったものは、Fランク同様街で待機してもらうからな。Dランクは最低でも2人パーティ。それ以上は制限を設けない。」


 ゲ、パーティであるか……うぅむ。これは少し困ったであるな。吾輩たち、そんなに他の冒険者と関わったことが無いから組めるか不安であるなぁ……特にコーリィが。

 

(ネコ様、どうかなさいましたか?)

(……コーリィ。もしお前とパーティを組む者が吾輩を馬鹿にしたり、囮にしようとしたらどうするであるか?)

(殺しかけるかもしれません。)


 予想通りの即答であった。昨日のリンピオよろしく、魔物であれば犠牲にしても構わないという冒険者は少なからずいるはずであるからな。そう言った奴らはコーリィとは合わないであろう。


「それでは解散!」


 ギルド長の言葉を合図にパーティを元々組んでいた者や、ランクの高いソロの冒険者たちは受注受付に。Fランクの冒険者は登録受付に行き、生活費を受け取る。

 それ以外の者はパーティに組む者を探し、しきりに話し始めた。

 さて、どうしたものであるかな。と、コーリィと共に考えていると――


「ねぇ!ちょっとあなた!」

「はい?」


 おや?見知らぬ白髪の女が話しかけてきたであるな。見るからにはコーリィよりかは少し歳上にも見えるであるが……む。彼女の足元に犬……?いや、これは……黒い狼であるか?


「そう、あなたよ!名前は?」

「コーリィですが、そう言うあなたは?」

「あら、私を知らないの?」


(知ってます?)

(それを吾輩に聞くであるか?他の冒険者なんて興味持ったことないであるからなぁ……)


 本当に知らんである。依頼達成したらそこに留まらずタオラの店に向かっていたから他の冒険者の話題なんてそんなに耳に入ったことは無い。

 もちろん、目の前の女の事なんて全然知らん。


「まぁいいわ、教えてあげる!私は、ラカロッテ。いずれこのギルドの中でトップになる期待の星よ!」


 あ、痛い奴であるなコイツ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る