異世界銭湯♨ ~松の湯へようこそ~

大場鳩太郎

まえがき

「やあ、松の湯にようこそ。


 ここは東京都葛飾区に江戸時代からある公衆浴場だ。

 外観は、神社仏閣風の甍で、唐破風造り。

 おんぼろじゃなくてレトロで趣があると言って欲しいね。


 設備は、コインランドリー、売店(駄菓子あり)、石鹸、シャンプー、リンス、ドライヤー、体重計、マッサージ機(故障中)、電気風呂(危険)、ジャグジー、薬湯(お勧め)、サウナ、水風呂、以上。

 水質は超軟水だから、お肌の弱い女性や乳幼児の方にもお勧め。


 年中無休。営業は午前十時から午後十時まで。

 入浴料は大人が四百円、学生は三百円。十歳以下のお子様は無料だ。


 ……ああ申し遅れた。

 自分は松の湯の店主をやってる若旦那ってえもんだ。


 勿論、本名じゃない。

 代変わりしたばかりの若造なもんで、常連さんからこう呼ばれてる。


 この銭湯の売り?

 そうだな……働き者な番頭さん?

 でも入浴マナーに五月蠅いから注意した方がいいぞ。


 後はそうだな。

 『あちら側』からちょっと変わったお客さんがやってくることだな。


 その入り口に掛かってる古ぼけた暖簾。

『男』と『女』の間にある『異世界』ってところから……ほらな?」

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