第50話 乗合タクシー

 中国には乗合タクシーというものがある。

 空港からホテルまで往復してくれる便利なタクシーだ。


 珍しく、その日は日本人ばかりだった。

 1人偉そうなオヤジが乗る前から幅を利かせていた。

 部下らしき男をアゴで使うさまが気に入らなかった。


 タクシーが来ると、当然といった顔で助手席に座る。

 大抵は女性優先か老人を優先させるのだが、ドカッと座り込んだのだ!


 後ろは3人。

 正直、窮屈である!

 いつもことだが…。


 走り始めると…運転手が中国語で助手席のオヤジに話しかける。

 ホテルから空港まで2時間半…しゃべりっぱなしだ。

 オヤジは中国語を話せない…最初は

 あ~とか、う~んとか言ってたが…最後は下を向いて寝たふりし始めた。


 それでも揺さぶる様にオヤジを起こして話しかけるのだ運転手が。


 偉そうなオヤジが困った顔をして…後ろを振り返り…

「誰か席を変わってください」

 と言いたげな、情けない顔を、僕は一生忘れない。


 ざまぁねぇぜ!Ho!

 車内のイライラが吹き飛んだ瞬間であった。

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