受信料徴収員 ★★★★
翌日、帰宅するとドアの郵便受けに小箱ぐらいの大きさの郵便物が届いていた。
箱を開けると「プチプチ」に包まれた同軸アンテナケーブルの分配器の様な部品と取り付け説明書、アンケートに放送局への返信用封書が入っていた。
蓮田は仕事の早い人物らしい、昨晩のやり取りも話し方や説明は丁寧だった。
問題なのはあの見た目だな~、、、ずいぶん損してるよな、、やはり独身だろうか?
相手のプライバシーを詮索しながらTVへ送られてきた部品を取り付ける、一応説明書を確認しながら行ったがその必要は全くなかった。
外見的には特殊な機械には全く見えない。強いて言えば張り付けられたラベルが日本語表記ではない事ぐらいだろう、特にそれが珍しいという訳でもないが見たコトもないメーカーのロゴ。
花か何かを衣装化したものだろうか?中央には目の様な模様、そこから三方に習字でも書くように太めの線が跳ねたり、曲げたり、丸を書こうとするような感じに3本伸びている。
黄色で書かれた不思議なロゴの周りに書き込まれ文字は、表記は細かすぎて英語かキリル文字か?判断する気にもならない。
もしかしてロシア製品か?
さほど国際情勢に興味のない武、日本より「北」にある国々は動画チャンネルやSNSで仕入れた「やばい奴等」程度の知識しかない。
アンケートはこんなモノが役に立つのか?と思えるような簡単な状況変化を確認する内容。
どのみち専門的な質問を回答しろと言われても答えられる訳もない、どちらかと言えば「その他のご意見」の記入欄に、これまでの状況を細かく記述するほうが役に立ちそうだ。
テレビのスイッチを入れチャンネルを次々と変えてみる、一瞬期待したものの特によくも悪くも成っていない。
正常なチャンネルに問題がない事を確認し、今度は録画の調子を確認してみる。どちらかと言えば、こちら回復もしくは現状維持のままである事が武にとっての重大案件だった。
結果、無事?現状維持を確認。ちょっとガッカリしたがそこは予め解っていたコト、何より物事が解決に向けて動き出したのだから一つ一つを確実にやっていこうと気を取り直した。
早速、チャンネルを合わせる、真っ暗な画面。
その昔、アナログ放送時代は「ザ~」と言う音ともにチラチラする白黒の何か?がブラウン管画面いっぱいに広がり、誰が名付けたか知らないが「愛の砂嵐」とか呼ばれていた。
24時間放送が一般では無かった時代。深夜に国営放送にチャンネルを合わせてこの砂嵐を見ているとアニメが始まる。そんな下らないオカルトな?噂話があったくらいだ。(武は昔その噂を信じて真夜中画面を見続けた経験がある。)
正式名称は「スノーノイズ」と言うらしいが、デジタル化してからは受信不良も場合によるが少し味気ないかもしれない。
「さてと!」
真っ暗で反応の無い液晶画面を横目に武はPCを起動させ、海賊動画の視聴に入った。
初めは面倒臭いと思ったが悩むことなどなかった。このスタイルなら全く問題なく調査に協力できる。楽しみにしている番組を見ながら十分なデーターを取ることが出来るだろう。
蓮田の言った一週間などアッと言う間に終わる、武は今季名作の呼び声高いアニメの海賊動画を熱心に視聴しながら、この罪悪感のある行為から解放されることは身勝手に願った。
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