第5話 食事をしてみるは・・・
さっそくお店に入ってみようと行動に移したのだが、一歩目がなかなかに苦労した。
なにせ入り口が、物理的になかなか入りづらい。
正面から入ろうものなら、肩口のマウントジョイント部が邪魔になるし、横向きになろうものなら、背面のバックパックが引っかかるし、さらに高さも低いから
身体をかがめてギリギリかどうという状況で‥‥
あぁもぅ狭い!!!
と、心の中で大絶叫しながらも、知恵の輪でいう所のナナメな状態で外せれる様な恰好で店内へと入り込むと、そこには複数人の客でにぎわっており、繁盛していそうだという印象を受けた。
そんな中、自身が座れる場所をと探すように見渡すと、頑丈そうな長椅子を見つけた為、そこへ腰かける為に手前の長テーブルをいったん横にやってからよっこらショット座って、長テーブルをどっこらショットと元に戻す事に成功する。
ほんと、これだから
「い、いらっしゃい‥‥‥ませ?」
と、ウェイトレスがなぜか疑問形で現れた。
雰囲気的にはよくある元気が取り柄な娘さんといった所で、明るさが売りなんだろう。見た目も美人というよりも、可愛い系というモノで、後ろで髪を一つに結っており、その姿が店の仕事着と合わさってなかなか様になっている。
だが
自分の評価はそれまでである。よくある興味とかはまったく無い。アウトオブ眼中の対象である。なので、さっさと要件だけ伝える。
「オススメ」
「はい、本日のオススメですね!」
「10ニンマエ」
「は、はい?」
「10ニンマエ」
「10人前、ですか?」
「ソウダ」
「は、はい!おすすめ10人前入ります!」
とりあえず、10人前で試そう。
VRMMOの時は、いくら食っても食っても仮想世界の為に特に問題なくいけたのだから、というかそれぐらい接種しないとゲージ回復しなかったし今回もそれぐらい必要だろう。
食事が出される前にエネルギー状況の確認をしておくがまぁ、三分の一は残ってるから当面は影響はなさそうだろうが……
視覚に入っているステータス画面を眺めながら、EMPTYまでゲージがいくらあるかの確認をしつつ、ほかのステータスを確認するも、なんか微妙に前とは違う項目が増えてたりする。
これらは一体全体なんなんだろうか…と思っていたら
「お待たせしました!
後の分はこれからお持ちしますね」
と、 長テーブルの上に同じ料理が3つほど置かれ、ウェイトレスはそう伝えてくると、そそくさと席から離れていった。
テーブルの上に置かれた料理を見れば、見事に肉だった。それはもうそれ以外の評価がつけれないぐらいの焼いた肉の塊であった。
よし、ナイフとフォークも一緒に置かれてあるので、あれだな、ステーキというやつだな。これで口に放り込め…‥ば?
口?
口‥‥‥口…‥‥ねーよ!!
ちょっとまって、ゲームの時どうしてた?このフェイスマスクは"私にいい考えがある某司令官"みたいな状態の口なのに、どうやって食べてた?摩訶不思議設定なのか?ちょっとまてまて…
口開け!開け!オープンマスク!!
カシャ
あ、マスクが開いた…っぽい?うん、手で触れてもなんか左右に分かれる様に開いてそう‥‥というか、空洞?‥‥よくある金属の口とかじゃないのか。って、そういう仕様で作ったはなかったけか…
まぁいいと割り切り、とりあえず開いた空洞へ放り込んでいけばよいかと。肉と主張している存在を切り分けて、その口らしき穴へ放り込んでいくと…
味も何もわからない
それよりも、何か異物が入ってきたという認識しかない…
正直気持ち悪いという感触がものすごいあるのは何故だ?いやにリアルな感触というか、一緒についてた果実ジュースらしきものも飲みにく!!穴ほうりこみにく!!あ、けど、液体の方がさっきの感触が無い分いくらかマシだな。これは他の飯を食うロボはアリ派に言っておきたい。これは無いわ。無し派の主張が正しい。液体系ならまだしも、この固形物系が特にひどい、これが体内に入ったあとにくるこう変な異物が体の中を這い回ってるという感触というか、正直これに耐えて食料摂取し続けているロボたちに同情を禁じ得ないレベルである。食事がこんなにツマラナイ物というか、もう嫌悪感が半端ない状況というのが、機械生命体になるという弊害なのだろうか。ああ、そういや、飯系食ってるロボって
そんなこんなを思いながらも、10人前として置かれたオススメを一つ、また一つと消化していく。固形物であろうと構わない状態でホイホイと入れれるのだが、入れれば入れる分だけ、違和感プラス嫌悪感が増していくという……ね、なんという苦行感。
そういえば、消えていく数が多くなるたびに、周囲に"ざわめき"というか"どよめき"が発生しているみたいなのだが、それらを気にする意思はない。
たとえを上げるなら、嫌いな食べ物を無理やり口に放り込むという作業がまっているのだがら、そんなのを気にしている余裕がない。
ようやく、ほうりこむ作業を終了し、エネルギーゲージを見てみると、一応は上がり始めていた。
おお、増えとる増えとる
こんな荒行みたいな事して、増えなかったらどうしたもんかと思っていたが、実際にはちゃんと増えいくというう事は、もっと取れば増えるんだろう。
オナカいっぱいという感覚も全くないし、というか、エネルギーゲージみても半分以下のままだしで、そりゃ腹半分にすりゃ届いてないし
そうなりゃ物は試しである。
「スマナイ」
「はい?何かありましたか…?それともお会計ですか?」
ウェイトレスの娘さんを呼び止め、要件を伝える
「10ニンマエ ツイカ」
「へっ?」
「ツイカ」
「ひぇっ‥は、はいぃ…!」
「まだ食うのか」「俺、もうイラねぇ」「見てるだけで、うっぷ…」
そのさなかにヤジの様な言葉が耳に入ってくるが、こっちは生命活動ができるか否かの重大事の確認だ、無視である。そんなヤジの中で慌てて涙目になりつつカウンターの方へと戻る娘さんだった。
一応エネルギーゲージが徐々に増えているのは良いのだが、結構ユックリと増えるもんだなと。
ゲームの時は、エネルギーパック使えばほぼ瞬時に増えていたのに、いまではブレークタイムがいる感じである。
待っている間手持無沙汰になるため、メニューから
くそぅ、こんなことなら余剰パックを購入しておくべきだった。
「お、お待たせしました」
と、そんな確認から愚痴を内心で行っていたら、同じ料理を再び長テーブルへと並んでいく娘さんがいた。
その料理をおいていく娘さんの表情は、困惑という感じだろうか、不安げとでもいう感じであるが、それは関係ない、こちとら生命にかかわる重要なことなのだから
再び、フォークとナイフを使い…ええい、まどろっこしい。もう穴に放り込んじまえと、がっついている感じに放り込む作業の開始だ!
「うえぇっぷ…俺もういいわ…勘定‥‥」
「俺も…」「私も…」「俺も「俺も‥」‥」「当分肉はいいわ……」
「あ、ありがとうございました……またお越しください」
気が付いたら、店内は自分だけしかいなかった。
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