第10話 120連ガチャ
戦勝会があった日の翌日、俺は女王に謁見することになった。なんでも、褒美がもらえるらしい。オ・ジーさんの説明によると、女王は7歳ほどの子供で、俺が召喚される前に急死した王の娘とのことだ。勇者に権力を奪われることを恐れていた前の王は、勇者の召喚にはずっと反対していたらしい。
そんな王が急死したため、早速俺を召喚したとのことだ。俺はあやしいと思いながらも、そのことには触れないでおくことにした。面倒事が起こることは避けたい。
女王からもらった褒美は、魔石50個だった。ガチャ10回分だ。魔石は貴重品らしく、1個売るだけで1か月は暮らしていける位の価値があるらしい。
女王にお礼を言って王の間から出た俺は、早速10回ガチャを引いたが、全てNだった。
これから自分を鍛えていくにあたって、俺に剣術や魔法を教えてくれるユニットが必要になる。アレクやリョフと訓練するのはお金がかかりすぎて無理だ。そもそも、今の俺の手持ちの金は0に近い。とりあえずは、現実世界でお金を稼いで、その金で★★★★SRユニットを引いて、そいつに稽古をつけてもらおう。
そう決めた俺は、自分の世界に戻ってきた。この世界では失業中だった俺だが、明日からは自動車ディーラーの販売員として働くことが決まっている。……派遣社員として。
翌日、勤務店で全員に自己紹介をした後、店長にいろいろと販売員の心得を聞かされた。
「冠王 昇君。車を売るときに重要なことって何だかわかるかい?」
「うーん、値引きでしょうか?」
「まあ、そこを重視される方もいるけど、もっと重要なのは、販売員の人柄や魅力なんだ。もちらん、同性にも異性にも、若者からお年寄りまでに好かれなくちゃならない。好きになってもらうことが出来たら、もう売れたも同然だよ」
「魅力……ですか」
「うん。そこの本棚に、営業ノウハウや実践的な心理学なんかのビジネス本があるから、帰りに借りて持って帰ってもいいよ。もちろん読まなくてもいいし。俺はどっちでもいいよ。ただ、数か月すぎて成績がひどいようなら辞めてもらうけど。逆に成績が良ければ正社員にするよ。まあ、君が努力するかしないかは君の自由だ。俺は君の親じゃないんだし、君の人生がどうなるかは俺にとっては関係ないからね」
「ええ、ちょうど自分に磨きをかけたいと思っていたところです。是非、お貸しください」
「うん、いい心がけだ。そういう姿勢は好感が持てるよ」
会話の後は、店長や社員の横に付き添って仕事を覚えた。この日の仕事は終わり、俺はビジネス本を数冊借りて帰った。笑顔の重要性やミラーリングといった聞いたことのあるメジャーなものや、もっとマイナーなものまで、俺はどんどん心理テクニックを学んでいった。後は、明日から実際に使って、知識を自分のものにしていこう。
俺は必死に仕事と勉強に明け暮れ、仕事にも慣れてきたころ、初の給料日がやってきた。
「冠王君、初月にしては予想以上に活躍してくれたね。給料はもう振り込まれているはずだから」
ATMから金をおろして家に帰る。今日はもう寝て、明日はあっちの世界に行こう。
俺は異世界に来て、ガチャを回している。思い切って5万円分の魔石で120連ガチャを回した。120枚の裏向きのカードの中に、4枚ゴールドのカードがあった。★★★★SRのようだ。他は銀色のRや茶色のHN以下だった。
ゴールドのカードがめくれていく。
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ここまでお読みいただきありがとうございます。
11話の投稿は、28日の20時頃に考えています。
私はここのマイナールール等には疎いのですが、もし、1日に2話以上投稿する行為が非難される類のものであれば、1日1話のペースで投稿します。その場合、ご連絡していただければ助かります。
今、ツイッターやブログについて勉強しております。それらを始めた場合は、ご連絡します。
皆様のご感想をいただけると、励みになります。
今後もよろしくお願いします。
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