第九話 ディーとの戦闘Ⅲ


 リョフの隠れアビリティ・裏切りの飛将の精神的成長  が発現した。



――裏切りの飛将の精神的成長  

・発動型アビリティ  

・劣勢になると味方を裏切ることもいとわない。そんな人間が、裏切るどころか命をかけて他人を守ることによって、自分のためだけに戦っていた、それまでの自身の限界を超えた

・自身の強い感情によって発動する  

・一定範囲内の味方の力を吸収し、さらに、その力を増幅し、自身への能力値アップバフとする






 アレクや、トカゲ兵を全滅させ、近くまで来て応援している千人以上の兵士全員と、リョフを繋ぐ無数の黄金のオーラの糸。その糸を通して、慈愛の左蒼眼によって高められた各個人の力がリョフに集約され、リョフの全身を黄金のオーラが覆うと、オーラは黄金の鎧、兜、大剣に具現化した。


 漆黒の装備のボストカゲと、黄金の装備のリョフ。両者は何十太刀も剣戟をかわしていたが、兵士やアレクの声援が後押したかのように、リョフの渾身の力をこめた斬撃が、受けた大剣ごと、兜や鎧さえも含めてボストカゲの身体を真っ二つにした。


 その瞬間、兵士達は歓声をあげる。その喧騒の輪の中心でリョフとアレクは微笑みあった。


 こうして、数百人の兵士は犠牲になったものの、プルーメ王国の脅威は取り除かれた。






――所変わりアスタロス城


「はーはっは。まさかあの状態のディーを殺すなんてね。やっぱり人間はおもしろいなあ。いいおもちゃを見つけたよ。これからどうしたら最高に楽しめるか考えなくっちゃ。うーん、よし決めた」

「どうされるのですか?」


「うん、僕は久しぶりに寝るよ。ベッドの中で、楽しみなことについてあれこれ考える時間が、僕はものすごく好きでね。もしかしたら、その楽しみにしてた時間を実際に過ごす時以上に楽しいんじゃないかと思うほどさ。そういうわけで、何か月か何年かはわからないけど寝るよ。ベッドメイキングよろしくね」

「かしこまりました。こんなに嬉しそうなアストロス様はお久しぶりですな」


「彼女たち、いや、あの国はもっとおもしろいことになる。そんな予感がするよ。僕が寝てる間に魔帝たちに滅ぼされないか心配だけど、まあそうなったら、所詮その程度だったということだ。僕が寝てる間も、部下たちにはいつも通りにするように連絡しといてね。じゃあ、お休み」

「かしこまりました。お休みなさいませ」






――所戻りプルーメ王国





 プルーメ王国に凱旋した兵士達は国中の者に祝福され、特にアレクとリョフは英雄ともてはやされた。


 戦死者を弔い、その日は十分な休憩をとり、翌日に戦勝会が開かれた。俺とアレクとリョフの3人は、俺たちと話したがる大勢の人に対応するのに忙しくしていた。皆から感謝されて、人の役に立つことができる幸せをかみしめる。俺は、今までの人生の中で一番の充実感を得ていた。


 その反面、アレクとリョフの、命を懸けて皆のために戦う姿を見ているだけしかできなかった自分を、情けなく思った。彼女たちと対等な関係になり、一緒に戦いたい。


 俺は強くなる決意をした。できることなら、彼女たちを守れるくらいに。






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 ここまでお読みいただきありがとうございます。



 10話の投稿は、28日の朝7時頃に考えています。


 私はここのマイナールール等には疎いのですが、もし、1日に2話以上上げる行為が非難される類のものであれば、1日1話のペースで投稿します。その場合、ご連絡していただければ助かります。


 今、ツイッターやブログについて勉強しております。それらを始めた場合は、ご連絡します。


 皆様のご感想をいただけると、励みになります。


今後もよろしくお願いします。

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