第421話 グッドエンディング④
一方、その頃。
やや間隔のある木々の間を、零号は走っていた。
彼の後方にはホバリングスラスターで高速移動する着装型鎧機兵――メルティアが付いてきている。
『こっちでいいのですか? 零号』
『……ウム』
走りながら尋ねるメルティアに、零号も足を止めずに返答する。
『……リーゼト、リノノ、匂イガチカイ。コッチニイル』
と、その時。
「メルティア! 零号!」
繁みの奥から声を掛けられた。
リーゼの声だ。
彼女はすぐに繁みの中から出てきた。
「良かったですわ! 無事なのですね!」
『ええ』
メルティアは、ホバリング移動を急停止して地面に着地した。
零号も、すでに足を止めている。
メルティアは前面装甲を解放し、森に降りた。
「ホッとしましたわ」
「ありがとう。リーゼも無事で良かったです」
リーゼとメルティアは、互いの手を重ねて再会を喜んだ。
「……ふむ」
すると、繁みの奥からもう一人人物が姿を現す。
リノである。
「よくあの攻撃を凌げたの」
彼女は、零号に目をやった。
対し、零号は「……ウム!」と親指を立てた。
続けて、両手を前に突き出して。
「……コレゾ、ゴーレム奥義。アルティメット・ゴーレムバリアダ!」
「いえ。何ですか? それ?」
と、メルティアが眉根を寄せてツッコんだ。
「今回は助かりましたが、あまり私の知らない機能を見せないでください」
「ですが、流石に今回ばかりは焦りましたわ」
リーゼが、改めて胸を撫でおろした。
「まさか、わたくしたちに攻撃の矛先が向くとは想定外でしたから」
「そうじゃのう」
リノもあのタイミングを思い出し、あごに手をやった。
「しかし、何故、わらわたちの場所が知られたのじゃ?」
「零号やメルティアの着装型鎧機兵の恒力を探知されたのでしょうか?」
リーゼが推測するが、それはメルティアが否定した。
「いいえ。私たちの恒力値は、本当にささやかな出力です。《万天図》で拾い上げるのは難しいでしょう」
「よもや、獣のごとく匂いや気配でも察したのかのう……」
と、冗談交じりに言いつつ、リノは嘆息した。
「まあ、ここで考えても仕方があるまい。それより他の四人は無事なのかの?」
「そうですわ。アルフレッドさまたちも無事ですの?」
リーゼも尋ねる。
と、零号が親指を立てた。
「……ダイジョウブダ」
次いで、額に手を当てると、遠くに目を向ける仕草を見せて、
「……四人トモ、匂イガアル。イマ、ウゴイテル。アルフレッドト、アンジェリカ。ジェイクト、フランガ、一緒ダ」
「ふむ。そうか」
リノは、苦笑を浮かべた。
「無事なのは僥倖じゃが、本能なのかどうかは分からんが、男衆ども、咄嗟に自分の女を優先して助けておらんか?」
「……それは」「……答えにくいことですね」
リーゼ、メルティアは言葉を詰まらせた。
「まあ、それも責められんか。仮にコウタもあの場にいれば、間違いなくわらわを最優先で助けるじゃろうしな」
「それは異論がありますわ」「寝言は寝て言ってください」
これには両者とも即答した。
三者がジト目で視線をぶつけ合う。と、
「……ム。コウタカ?」
不意に、零号が口を開いた。
「……ソウ言エバ、コウタハ、イマ、コッチニ、ムカッテイルゾ」
「「「………え?」」」
三人とも、キョトンと目を瞬かせた。
「……GNSガ、ツナガッタノダ。サザンⅩニ、レンラクシタ」
「ほ、本当ですか!」
メルティアが、両手で零号の頭を掴んだ。
「コウタが、私のところに向かっているのですか!」
「……ウム。ソノ通リダ」
「その通りではない」
ポコンッとリノが零号の頭を叩く。
「コウタが向かっておるのはわらわのところじゃ」
「それを言うのならば、わたくしのところであると主張させて頂きますわ」
と、これに関しては、リーゼも退かなかった。
そうして、三人が再びジト目で視線をぶつけ合った時。
「……ム。少シ、トラブルカ?」
零号が呟く。
「……コウタト、一緒ノ、サザンⅩノ、ウゴキガトマッタ」
「……敵と遭遇したのかの?」
リノが少し鋭い顔つきでそう問うと、
「……ワカラヌ。ウム。少シ、サザンⅩ二、リンク、シテミヨウ」
零号はそう言った。
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