嵐を呼ぶ紅茶御嬢様!編

 オーッホッホッホ! 皆様、お疲れ様ですわ! 私はリジャスト・グリッターズの一番の出資者スポンサーにして、お祖父じい様の意志を高貴なる戦いで体現する乙女……於呂ヶ崎麗美オロガザキレイミ

 ユーラシア大陸に来てから、戦闘、戦闘、また戦闘……うんざりしましてよ?


「あ、あの、御嬢様おじょうさま。お洋服のクリーニング、終わりました」


 あら、ロキ……ありがと。そこに置いといて頂戴ちょうだい。さて……新たな戦場は、荒涼こうりょうたる無限の大地。どこまでも続く地平線、勇壮な景色がどこまでも広がっているのね。できるなら、いつもみたいにバカンスの観光で来たかったですわ。

 ロキ、お茶を。


「は、はいっ! 御嬢様」


 んー、やっぱり紅茶はアッサムが一番ね。そうそう、一口に紅茶と言っても、茶葉によって軟水なんすい硬水こうすいの差を意識すると、グッと美味おいしくいただけますのよ? 以前の補給地が上海シャンハイだったので、今の飲料水は硬水……うふふ、アッサムの濃厚な茶の味がしっかり抽出ちゅうしゅつされますわね。


「えと、御嬢様、実は――」


 そして、焼きたてのマフィン……ええ、ヴィクトリア朝の貴族達もこうして、ティータイムを楽しんだんでしょうね。ロマンですわ……さ、ロキ。あなたもおあがりなさいな。これは先日、エリィさんやシファナさん、篤名アツナさんと一緒に焼きましたの。

 え、ええ、そうね! 美李奈ミイナさんも一緒でしたわね!

 もーっ、何が『私も日頃より、おやつは自分で作ることにしてます』ですの?

 ……でも、酷く手際がよかったわね……私もそろそろ、花嫁修業はなよめしゅぎょうの時期かしら。


「あ、美味しい……御嬢様、ありがとうございます! それで――」


 マフィンの程よい塩気と甘み、小麦本来の旨味うまみ……そして、また熱いアッサムを一口。ふう、最高ですわ。ふふふ、戦いのさなかであっても、於呂ヶ崎の令嬢たるもの、常に優雅であれ! これがお祖父様の教えですわ。常に泰然たいぜんとして揺るがぬ態度で、落ち着いて。決して取り乱さず、静かに凛々りりしく、そして毅然きぜんと。


「……あのぉ、御嬢様。すみません、茶葉が切れてて。それ、ティーバッグの紅茶なんです。リプトンの」


 ッ! ななな、何ですって! ちょ、ちょっと早く言ってくださる!? もぉ、ほら! ほらほら! 笑われてるじゃありませんの? こ、こここ、この私が、うっ……そ、そういえばそうですわね! ティーバッグの味ですわ! そう、それを言おうと思ってましたの。もぉ、最初からわかってましたわよオホホホホホ!

 ……うう、穴があったら入りたい。

 あとでアサヒさんに言って、掘って欲しい。

 それ以前に……墓穴ぼけつを掘ってしまいましたわ。


「あっ、でで、でも御嬢様! 本当に美味しいお茶ですから。きっと、こうしてご一緒してくださるプレイヤーさんのおかげですよ。それに……笑ってるって、それは御嬢様が戦いで疲れたプレイヤーさんを笑顔にしたってことですから」


 ……そうよね。そうよ、ね? そうですわ、オーッホッホッホ! そうですわ、私は於呂ヶ崎麗美! 今をときめく最強の御嬢様! 真の鋼鉄令嬢こうてつれいじょう! それくらいわかってますたわーっ! では、プレイヤーさん? 一休みしたらすぐに戦いを再開してくださいな。私がスタメンメンバーとして出撃しますわ。共に勝利を……それまで、しばしの憩いと休息を。すぐにまた、戦場でお会いしましょうですわー! オーッホッホッホ!

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