第10話 ~一年生vs三年生~

 私は助走をつけて勢いよく蹴ろうとした。

「!」

 副会長は蹴り上げた私の右足をしっかり捕まえた。

「こんな蹴りじゃ私には勝てないわよ」

 捕まえられた右足を振り払われ、私は右足を地面につけた。

「次はこっちから行くわよ」

 シュッ

「!」

 消えた!

 一瞬で何処かへ移動したのか!?

 しかしあちこちから気配がする。

 私の回りを高速で移動しているのか?

 ……そこか!

 私は気配がする所へ武器を振りかざした。

「! ……やるわね。かなり早く移動していたけど」

 副会長は私の三叉槍を両手で捕まえて動かないようにしていた。

「気配を出していたのはワザとですか?」

「そうしてそう思うの?」

「気配をワザと出して何処にいるのか迷わせ、その隙に攻撃しようとしたのか?、と思って」

「そこまでわかるなんてますます気に入ったわ」

「それはどうも」

 私は三叉槍から副会長の両手を離そうと強く引っ張った。

「離そうとしてもしても駄目よ」

「そうですか」

 私は副会長の膝を蹴った。

「きゃ!」

 バランスを崩し、力が抜けて両手が武器から離れた。

「ちょっと! 今のはさすがに卑怯よ!」

「卑怯?」

「そ、そうよ! 武道で卑怯なんてご法度じゃない!」

「武道? 副会長、もしかして私が武道をやっていたとでも?」

「ち、違うの? さっきの綺麗な蹴りは空手やテコンドーで鍛えた蹴りじゃないの!?」

 『綺麗』か。初めて言われたな。

「副会長は体を鍛える為に武道の英才教育を受けたのですか?」

「ええ。それと自分の身を守る為にね」

「なるほど。私も鍛える為に英才教育受けてましたよ。『武道』なんてたいそうなものではありませんが」

「どんなの?」


「『喧嘩』です」


「それは英才教育じゃないわ!」

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