最終話 ~それから~
「え! 離婚!?」
日曜の昼、起きてリビングに行って食事をしているとお袋から速報が入った。
どうして昼まで寝ていたのかというと、昨日帰ってきてから私はすぐに眠ってしまった。
ビリニュスの話によると帰ってきたのが夜の10時くらいだったみたいだ。
それから昼間で寝ていたのだからかなりの体力と精神力を使い切った。
自分でもわかる。
泊っていた紫陽花さんは私が寝ているうちに帰ったみたいだ。
「ええ。これからはお母様の所で暮らすとおっしゃっていたわ」
なるほど。そこには婆さん……紫陽花さんとお袋の母親がいる。3人で暮らすのだろう。
ん? という事は……。
「鈴蘭は遠距離恋愛になるじゃ……」
「そうなのよね。せっかくカップルになったのに可愛そうに……」
カレカノになった途端離れ離れになるからな。
「それで鈴蘭は納得しているのですか?」
「お姉様が直接伝えるみたい」
鈴蘭……。
「もしお母様の所へ来るなら、これから会いに行きやすくなるわね」
「そうだな」
それもいいかもしれない。今まで半年に一回しか会えなかったからな。
食事も終わり着替えたりした後、部屋に向かって入るとビリニュスが寝ていた。
死んだように眠っていた。私もこんな風に寝ていたのか?
……ビリニュスの寝顔初めて見たな。
いつも私が起こされていたから見た事がなかった。
しばらく見ているとスマホが鳴った。見てみると紫陽花さんの番号だった。
「もしもし?」
『お姉様。昨日はありがとうございます』
「鈴蘭! 今何処にいるんだ?」
『今は家にいます。あれから葛葉の家に泊らせていただき、朝にお母様が迎えに来てくれました』
「そうか」
『私、お母様と一緒にお婆様の所へ行きます』
「い、いいのか? せっかくカレカノになったのに」
『実は葛葉と相談しました。葛葉は「あのお父さんから離れられるのならいいんじゃないか? それに学校で付き合っている事がバレたら色々大変だろ」と言われて決心しました』
「そうか。ちゃんと気遣ってくれる彼氏で良かったじゃないか」
『そ、そうおっしゃられると……私まで嬉しいです』
まぁ彼女だからな。
「じゃあ、待ってるよ。これから会いやすくなるからな」
『はい! 私も楽しみに待っています』
通話終了ボタンをタッチした。
「ふわあああ……」
電話を切るとビリニュスが起き上がった。
「よく寝れたか?」
「はい……」
まだ眠そうだ。
「ビリニュス、伝えたい事がある」
「はい?」
「お前のおかげで鈴蘭のお見合いを止める事ができた。ありがとう」
私はビリニュスをしっかり見て礼を言った。
「そ、そんな! 大した事何てしていませんよ」
「いや、お前に出会ったからこそできた事だ。出会わなかったらメイドになんてなっていなかったし、鈴蘭の本心も聞けなかった。最初はメイドになって嫌な事ばかりだったけど、鈴蘭の事でやりがいを感じたよ。椿姫を浄化したからこれからも蟲を浄化していきたいと思う」
「……僕、そんなに褒めてもらうの初めてです」
「そうなのか?」
「仲間外れ扱いでしたから」
そうだったな。
「朱火さんは周りからも慕われていたんじゃないですか? 僕と違って」
「いや、私も周りからはお前と同じ扱いだった」
「えぇ!?」
かなり驚いている。
「ど、どうしてですか? そんなに強いのに」
「だからこそだ」
「?」
「私は自分のこの力を使いたくて中学生や高校生と喧嘩していたんだ。そこで負けた事なんかないからクラスメイトからは恐れられて友達なんていなかった」
「寂しくなかったのですか?」
「その時は『周りが弱すぎる』って見下していたからな。別に何も思っていなかった。それから中学に入ってさらに喧嘩して学校もサボるようになったんだ。勉強よりも喧嘩のほうが楽しかったから」
「……」
ビリニュスは黙って聞いている。
「でもこれじゃいけない、って事で途中から学校に通うようになったけど高校は知っている人が一人もいない学校にしたんだ。喧嘩も辞めたかったし」
「それで一番近所のあの高校にしなかったのですね」
「ああ。でもそのおかげでお前と出会う事ができた。だからビリニュス……」
「はい?」
私はビリニュスに顔を近づけた
「ちょ、朱火さん!?」
「これからお前は私の……」
「執事として頑張るんだぞ!」
「え? ええ!?」
「だってお前椿姫に言ったじゃないか。私に従う、って」
「あ、あれは椿姫様に言われて言っただけであって……」
「おい、もうアイツは主人じゃないだろ。これからは呼び捨てで呼べ。敵だからな」
「は、はい」
「私への呼び方は今のままでいいぞ」
「わかりました」
他に言う事は無いな。
「ビリニュス!」
「は、はい!」
「改めて……よろしく!」
~第二章へ続く~
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