第38話 ~夢の中~

 うぅ……。

 随分眠っていた気がする。

「朱火ちゃん起きた? 何だかずっとうなされていたけど、どんな夢見てたの?」

 彼氏の小雨さんが私の顔をのぞいてきた。

「う~ん……思い出せません」

「そっか。でもうなされていたのなら何か悪い夢でも見ていたの?」

「そうかもしれません」

「そうしたら今日は俺と一緒に寝ようか?」

「えぇ! 何処で寝るのですか?」

「う~ん……ホテルとかは高いからな」

「ホテル……って! 何かいやらしい事考えていません!?」

「バレた?」

「普通にバレますよ!」

 私と小雨さんは笑い合った。

 付き合って一ヶ月。お互いに親しくふれあう事ができている。

 今日は小雨さんの部屋に遊びに来たが途中で寝てしまったらしい。

「今日さ、最近近所にオープンした喫茶店に行かない?」

「いいですよ。小雨さんと一緒なら」

 私は小雨さんが大好き♥。

 小雨さんに誘われたのなら何処にだって行く。

「その喫茶店、普通とは違っているんだって。それも入らないとわからないみたい」

「楽しみですね。さっそく行きましょう!」

「ああ!」

 私と小雨さんは喫茶店に向かった。

 歩いている途中、私はおねだりしてみた。

「……小雨さん」

「なんだい?」

「手、繋いでいいですか?」

「もちろん! 大好きな朱火ちゃんの頼みなら!」

 小雨さんは張り切って右手を出してくれた。

 私は左手で握った。

「いたたたた! 朱火ちゃんって力強いね!」

「ご、ごめんなさい!」

 私は力を緩めた。

 中学まで負け無しの『喧嘩女王』だった私の握力は男性並だ。

 気を付けないと!

「あ、それくらいが丁度いいな」

「わかりました。これからはこのくらいの力で握りますね」

 私と小雨さんは手を繋ぎながら歩いた。

 小雨さんの温かい思いが伝わってくるみたい。

「さぁ、着いたよ」

 木でできたかわいらしい目的の喫茶だった。

 小雨さんが入り口のドアを開けてくれたので先に中に入った。

「「「おかえりなさいませ! お嬢様! ご主人様!」」」

 三人のメイドさん達が迎えてくれた。

「へぇ~。『普通とは違う喫茶店』ってこの事だったのか」

「はいご主人様。ここは従業員がメイドと執事なのです。お席へご案内いたします」

 一人のメイドさんに連れられて席に案内された。

「ごゆっくりどうぞ」

 私達が席へ座るとメイドさんは違う仕事に戻っていった。

「可愛いメイドさんですね」

「へぇ~。朱火ちゃんメイドさんに興味あるの?」

「きょ、興味というかその……制服が可愛くて」

「あぁ。あれね。可愛いよね」

「でも結構大変ですよね。スカート長いと歩く歩幅は狭くなりますし、何より普通の服より動きづらいですよ」

「……朱火ちゃんメイド服着た事あるの?」

「あ、ありませんよ! ほら! スカートは制服で着ていますし!」

 あれ?

 何で私、メイド服について話せるんだ?

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