第37話 ~牙を剥いた初恋~
雷のロープは椿姫の手から出ている。繋がっているのか?
「くっくっく。身動きが取れなくなったか。実はさっきある法則を見つけたんだ」
「法則だと?」
「お前の避け方にはパターンがあるみたいだな。右と下に雷を打つと左へ、左と上に雷を打つと右に避けるみたいだな」
パターン!? 自分でも気がつかなかった!
「だから下に雷を打った直後左に雷の縄を向かわせたのだ。そうしたらまんまと引っかかってくれた」
「くそ!」
はめられた!
まさかこんな手を使ってくるとは!
「これだけではない! 今からお前にはあの時の感情を思い出させてもらう」
「あの時?」
「お前がこの感情になっていた時だ」
な、何だこの感じ。
体が熱くなっていく。
……これはあの時の!
私は必死でロープを解こうとした。あの時の様になったらまともに戦えない!
「無駄だ。あの時は中途半端な初恋だっただろ。ここで本当の初恋を味わおうではないか」
「だっ、誰があんな奴を好きになんか!」
「嫌いなのか?」
「嫌いと言う訳じゃないけど」
「だったら好きなのか?」
「それは無い!」
「だったら『嫌』なのか?」
「そ、そうだ! 私は嫌なのだ! あいつのしつこいアタックが!」
「そうか、そうか。……だったらそいつの事を思い出してみろ」
「何でそんな事しなくちゃいけな」
な! 何だこれ!
自然と奴の顔と一緒にいた記憶が頭の中に流れてきた!
「思い返してみろ。奴と一緒にいた記憶。お前は奴と接しているうちに心変わりしていったハズだ」
思い返してみた。
神社で出会い、再び会って二人きりになって……。
「お前は奴と一緒にいて決して悪い気持ちではなかったはずだ。それに気付いたのがあの時だろ」
あの時。
「二人きりになった時、気付いてしまったのだろ。自分の本心に」
本心。
「思い出せ、奴に言われた熱い愛の言葉を!」
あの時、奴、いや、月詠小雨は。
「朱火ちゃん……愛してるよ」
「愛してる……♥」
月詠小雨。
私を好きになってくれた男♥。
「ふっ。『恋する乙女』だな」
「朱火さん!」
「ビリニュス。見てみろ。お前のパートナーは『恋する乙女』と化したぞ」
「朱火さん! しっかりしてください!」
「ほどこうとしても無駄だ。このロープは朱火の恋心でできた物。その恋心が今、熟しているのだ!」
「そんな! ……朱火さん? 寝ているのですか?」
「夢を見ている。恋に関する夢だろう」
「朱火さん! 起きて下さい!」
「ビリニュス! お前は人の恋路を邪魔するのか?」
「そ、それは!」
「そうでなければ黙っていろ」
「うぅ……」
「くっくっくっ……そうだ思え。思い続けろ。お前は想い人を愛し続けろ。その恋心こそが」
「私が人間達を制する第一歩となるのだ」
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