第31話 ~対面~

 後ろを振り向くと鈴蘭の父親と数人の側近がいた。

「朱火ちゃん……何のつもりだい?」

「鈴蘭の本心を聞きたかっただけですよ」

「本心だと? それはもちろん許婚と結婚する事だろ」

「いいえお父様。私は葛葉の彼女になります。なので今回のお見合いはお断りさせていただきます」

「そんな事が許されると思っているのか?」

「確かに今日、こんな事になってしまった事については相手の謝ります」

「オレも謝ります」

 葛葉も前に出て雪壱(ゆきひと)さんに伝えた。

「そういう事ではない。鈴蘭! お前は若宮家の跡取り娘だぞ! 若宮には若宮にふさわしい相手と一緒になるべきだ!」

「どうして私が付き合う人を選んではいけないのですか!?」

「……よく聞け鈴蘭。今回が最後のチャンスなんだ」

 最後? 何の事だ?

「今回のお見合いが成功したら若宮は安泰なんだぞ」

「安泰? どういう事ですか?」

 私はさっきから訳ありの話をしているので気になって聞いてみた。

「鈴蘭と紫陽花には言ってはいないが、最近の若宮は経営不振でな。どの営業もうまくいっていないのだ。だから他の企業との結びつきを強め、存続させていく事にした」

「つまりこのお見合いは政略結婚という事ですか?」

「……言ってしまえばそういう事だ」

 だから12歳からお見合いさせようとしたのか。

「そんな……若宮を存続させる道具として私を利用したという事ですか?」

「お前は若宮の大切な跡取りだ。だからこそ若宮を未来永劫残してもらう為にも今回のお見合いを破談させる訳にはいかないのだ!」

 私は一応聞いてみる事にした。

「雪壱さん。鈴蘭の気持ちは考えた事があるのですか? 鈴蘭は嫌がっていますよ。少しは鈴蘭の気持ちを配慮した方がいいんじゃないですか?」

「……君にはわからないだろうな。おい、鈴蘭を早く連れていけ」

 雪壱さんは側近に鈴蘭を無理やり連れて行こうとした!

 そうはさせない!

「きゃあ! お姉様!?」

「逃げるぞ!」

「あ、朱火さん!?」

「待てよ! オレを置いていくなよ!」

 私は鈴蘭をお姫様抱っこして全速力でその場を去った。

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