第29話 ~葛葉の本心~

「いって来る」

 バタン

 パーン!!

「!!」

「おめでとうございまーす!」

 家を出た葛葉を私はバニー姿に百均で買った黒いパーティ仮面を付けた姿でクラッカーを鳴らして迎えた。

「……何なのですか? 貴方」

「私、全国の小学生について調査をしている者です。全国の小学生の中から抽選で貴方が選ばれました!」

 なるべく高い声で話しているので疲れる。

「……何に選ばれたのですか?」

「『好きな女の子に告白サプライズの権利』です!」

「!?」

 お! ちょっと驚いたぞ!

「べ、別に好きな人なんていませんよ!」

「若宮鈴蘭さん」

「!!」

 ほほう。ちょっと赤くなったぞ。

「な、何の事だか知りませんよ」

「朱火さん。これ」

 隣にいたビリニュスがメモを渡してきた。

「『お前のような立派な家庭で産まれた人と俺みたいな奴とは付き合っちゃいけないんじゃないか?』」

「ど、どうしてそれを!?」

 これにはさすがに驚きが顔に表れていた。

「ふふん。私は貴方の事を調べたのです」

「いつの間に!?」

 顔が赤くなっている。

「いいのですか? 彼女、許婚が決まって婚約するみたいですよ」

「そ、そうですか……」

「本当にいいのですか?」

「別にオレが知った事じゃないですし」

「彼女、まだ貴方の事が好きですよ」

「困りますよ! そんな事言われたって」

「貴方も好きなのでしょう! 彼女の事!」

「……ふん! 冷やかされたりするの嫌だし。断って正解ですよ!」

 少し黙ったな。だがそれも通用しない。

「朱火さんその調子です!」

 実は葛葉の後ろにはビリニュスが心を読み取っているのだ。

 これは作戦だ。

 無理やりお見合い会場に連れて行ってもマズイので本人が『行く』という気持ちにさせる為に作戦を立てた。

 それは、私と葛葉が直接対面して鈴蘭の事をどう思っているかビリニュスに読み取ってもらう作戦だ。

「読み取れました。……」

 ビリニュスが私に伝えてきた。

「……本当に好きなのですね。彼女の事」

「どうしてそんな……」

「守りたかったのでしょう。彼女が周りの人からからかわれないように」

「!!」

 これは誤魔化せなかった。

 同様が顔と体にも現れていた。

「だからこそ伝えに行きましょう! 本当の気持ち!」

 私は精一杯言った。

 鈴蘭の事をここまで思ってくれる男は信頼できる。

「……わかりました」

 やった!

「やりましたね!」

 私はさすがに声を出さなかったがビリニュスと同じ様に喜んでいた。

「では! その日に備えて準備をしましょう!」

「お願いします!」

 よかった。これで鈴蘭の本心がわかるぞ!


 

 

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