第13話 ~特訓前~
昨夜の出来事は忘れられない。
一生思い出として残るかもしれない。
入ったことが無い高校に深夜に入った事。
しかも明かり無しで歩いた事。
さらにはこれからもメイドとして活動していく事を宣言した事。
悪夢のような体験をして精神的に疲れた。
昨日は行く時と同じく、ビリニュスに掴まって帰って来るとすぐに寝た。
そして今さっき目が覚めたところだ。
「朱火さん、起きてください。もう九時ですよ」
「まだ眠いんだ。昨日帰ったら四時になっていただろ」
「メイドにそんな言い訳は許されません! これから活動するという事は『早朝深夜関係無く働く』という事なのですからね!」
それはわかっている。なので、なるべくそんな時間に呼び出さないで欲しい。
いくら体力に自信がある私でも深夜早朝に毎回起こされて仕事をさせられると嫌になってくる。
でもそんな時は人間をバカにしているあいつらの事を思い出すようにしようと思う。そうしたらムカついてやる気が沸いてくるだろう。喧嘩女王の頃によくやっていたやる気が沸いてくる方法だ。
さて、九時まで寝てはいられない。これから朝食をとって着替えなどを済ませて宿題をやらなければいけない。
その後にはやらなければいけない事がある。
「ビリニュス! 午後から飛ぶ特訓をしたい」
「わかりました。それから一つだけ鍛えなければならないものがあるのですがいいですか?」
「何なんだ? それは」
「精神力です。蟲を浄化するには何かをやり抜こうとする気持ち、すなわち精神力が必要なのです。精神力はメイドと執事にとって、とても大切なものなのです」
「そうか……」
人間の場合、浄化する時に精神力も使うんだっけ。
「朱火さん。初めてメイドに変身した時、少し前の記憶を無くしていませんでしたか?」
「ああ。突然光に包まれたと思ったら朝からさっきまでの記憶がとんでいたな」
「あれはメイドの仕事に専念する為に一時的に記憶を無くすのです」
「仕事に専念する為に記憶を無くす必要なんてあるのか?」
意味がわからない。
「変身できても気持ちが落ち着かないままだと、戦いに集中できません。そうなると浄化すらできません。その対策として記憶を一時的に消すのです」
「何か嫌だな」
一時的とはいえ記憶を消されるのは。
「人間は気持ちを落ち着かせるには時間がかかりますから」
なるほど。まあ、わからなくはない。
記憶を消せば何で落ち込んでいたりしていたのかも忘れる事になる。
気持ちをリセットする方法でもあるな。
「よし! 午後は特訓だ!」
メイドとしてまずは飛ぶ特訓をする事にした。
空を飛ぶ特訓するメイド。……こんなメイドは世界初だ。
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