第93話 よのなかは つねにもがもな

世の中は 常にもがもな 渚漕ぐ

海士の小舟の 綱手かなしも


よのなかは つねにもがもな なぎさこぐ

あまのをぶねの つなでかなしも


鎌倉右大臣


訳)

世の中はこのまま変わらないでいて欲しいな。

渚にある海士の小舟が引き綱さえも愛おしい。


超訳)

あ~、平和だな~。

この平和がずっと続けばいいのに。

海に浮かぶ小舟さえも愛おしい。


ちょっと一言)

鎌倉右大臣とは鎌倉幕府三代将軍源実朝の事。

偉い人なんだけど、蟄居(自宅謹慎の厳しい奴)を命じられた部下が歌を詠んで許しを請うと許してあげたり、死罪を命じられた罪人が詠んだ歌を聴いてそれを許してあげたりと、何だか憎めない人なのだ。

2代目将軍が追放された為実権を持たないまま将軍となった実朝、その時はまだ12歳。

そして甥で養子の公暁に暗殺されたのが28歳。

心休まる暇などなかったのかも知れない。


そう考えると切ない歌なのだ。

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