暁の向こう側

森神南

第1話

僕の目に写るものは「赤」しかない。

遠くで誰かの叫び声が聞こえる。

僕の回りを炎が包み、目の前には動かなくなった僕の家族。僕の白い服を赤に染める家族の血。あぁ。僕ももうすぐ死ぬんだ。

迫り来る炎。僕の白い服を赤黒く染める血。

僕は、呆然とその光景を眺めた。

僕らの一族は髪が赤いというだけで殺されるんだ。僕らは何も悪くない。目の前で家族を殺された。僕は、守られた。母上に父上に兄上に、僕は守られた。ただ、隠れることしかできなかった。そんなことを考えていると。。。

突然目の前に黒服を着た青年が現れた。

彼は僕を抱えて飛び上がった。

僕が次の瞬間見たものは、炎の海。僕の生まれ育った村が炎に包まれている。青年は僕を抱えたまま炎を避けながら家々の屋根の上を走った。

「よかった。もうみんな死んでしまったのかと思ったよ。」

彼は唐突に話しかけてきた。

僕は彼の声を聞き取れないほどショックを受けていた。

「君の名は?僕はコクライ」

僕は彼が何を話してるかわからなかったが、

彼の名が「黒雷」だと言うことだけ聞こえた。

まるで、その言葉が木霊してるのかのように聞こえた。

「ぼ、僕は、、、ハ、ハク、ライ。」

僕は無意識の内に答えていた。

「そうか。君が僕の弟か。こんな形で会いたくなかったな。」

僕にそう呟いた黒雷。

僕は黒雷の言葉を聞いてビックリした。

僕には双子の兄がいたが、死んだと聞いていた。

「え?あなたが、、、ぼ、僕の、、。」

僕は目の前で家族を失い、頭が可笑しくなったのだと思った。

生まれてすぐ亡くなったと聞いていたと兄がここにいるわけ無い。僕は幻覚を見てるんだ。

黒雷は、方針状態の白雷を高台へとつれていき白雷を立たせようとしたけど白雷は全身から力が抜けていて座り込んだ。

「ごめんな。こんな形で再会して。そして、こんな形でお別れして。僕は、君を残して行かないといけない。」

そう言い残して立ち去ろうとする黒雷を僕は、全力で止めにかかった。「だめ。だめだよ。行かないで。」と涙がかれている目を大きく見開き、両手で黒雷の服を掴みながら言った。

「僕を独りにしないで。」

白雷は必死に彼の服をにしがみついた。彼は困った顔をしながら、僕の手をほどいた。

「ごめんな。僕は君を残して行かないといけない。」

力無く座り込んだ白雷を残して、黒雷は闇夜へと消えていった。残された白雷は、枯れた涙を流し、掠れた声をあげて泣いた。ずっと意識が無くなるまで。ずっと。白雷泣き続けた。

自分の髪が白く色素が抜け落ちるほどのストレスに犯されながら、泣き続けた。







この日村が1つ炎に包まれそこに住んでいた一族のものを皆焼き付くした。

生き残ったのは白雷のみ。

この日の夜空には、赤い月が昇っていた。人々はこの日のことを「赤月の悲劇」と呼ぶ。

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暁の向こう側 森神南 @kagu1302

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