反逆者/2ー3

「さぁて、ここからが本番だぞ、クソガキ共」


 リベリオンは強暴な笑みを浮かべた。


「鎧がなくなったんなら私達の攻撃ももっと通りやすいってことでしょ!」


 リリィが攻撃を仕掛けようとするが、フリードリヒが制止する。


「待て、那須。まずは様子を伺うべきだ。俺達だけでなく、あいつも感覚共有している。先程は鎧もあったから命を奪うことはなかったが……」


 リベリオンは今ほとんど生身だ。少しの攻撃も致命傷になり得る。それはつまり、僕らがリベリオンを殺してしまう可能性があると言うことだ。


「安心しろよ、クソガキ共。俺は感覚共有なんてしねぇから」


 リベリオンの一言に、全員が言葉を失った。


「ていうか気付けよ、俺とお前らの違いにさぁ!!」


 リベリオンの髪が……いや、触手が伸び僕らに向かう。それを各々が武器で防ぐ。


「だから加減なんてしなくていいぜ、クソガキ共ぉぉぉぉぉ!」


 触手の攻撃はそのままに、リベリオンは突っ込んできた。


「どういうことだ一体!?」


 猛攻を何とかいなしながら、蓮が叫ぶ。それに答えたのは風音先輩だ。


「こいつが言ったままの意味ですよ。こいつは……卑怯者です」

「卑怯者たぁ随分な言い方だなぁアマ」


 触手がイリーナを捕らえた。


「勝つための方法を取る。お前達とどう違う、えぇおい? 一人ひとりを嬲るお前らのほうが卑怯なんじゃないのかい?」


 いくつもの触手がイリーナを縛り上げると、それはイリーナを持ち上げ地面に叩き付けた。


「くっ……!」

「勝つためなら相手の心をへし折るお前らと俺、どっちが卑怯か答えてみろよクソアマぁ!」


 再び地面に叩き付けたあと、リベリオンはイリーナを触手から解放した。しかし、攻撃を中断したわけではなく、一気に距離を詰めてイリーナを蹴り飛ばした。


「きゃあ!」

「可愛い声で鳴くねぇ、メスってのは!」


 ぎろりとリベリオンの瞳が王城先輩に向いた。


「で、どう違うんだい? クソガキ様?」

「俺達は全員、戦う相手に賭けている。〝このままでは終わりたくないだろう?〟とな。〝また挑んでこい〟と!」


 フリードリヒが大剣を振るい、それをリベリオンが出刃包丁で受け止めた。


「ご都合主義ばんざぁぁぁぁい!」

「黙れ!」

「図星かクソガキ!」


 大剣を弾き、リベリオンが爪を振るう。直撃しないが、爪の風圧が刃となり、フリードリヒを傷付けた。


「ちぃ!」

「おらぁ!」


 リベリオンはフリードリヒを蹴り飛ばす。


「さてさて〝レアタイプ〟の様子も見ましょうかぁ!」


 次の狙いはノクト。


「ノクトぉ! 防御は捨てるぞ、怒涛!」


 ノクトがその場で踏ん張り、力を溜めた。


「この状況で捨てるもの間違えてんだよ、クソガキ!」


 出刃包丁を投げ飛ばした攻撃を、ノクトは避けてリベリオンに向かう。


「だからどうしたぁぁぁぁ!」


 蓮の気合いと共にノクトが大剣を振るうが、それを触手が防いだ。


「後ろにご注意くださいギャハハハハ!」


 投げ飛ばした出刃包丁を、リベリオンの触手が掴み、それがノクトに向けて戻ってくる。


「ちぇいさー!」


 それをリリィが弾き、ノクトの直撃を防ぐ。


「テラス、他力本願セット、速攻!」

「それはもう使わせねぇよ! リジェクトぉぉぉぉぉ! サボってんなぁ!」


 きん、と冷たい音がする。

 すると、駆けようとしたテラスが盛大に転んだ。


「いってぇ……テラス、無事か!?」


 テラスは頭を何度か振って起き上がった。鼻血が流れていたが、それをテラスは着物の裾で拭う。


「リジェクト、そろそろ出てこいよ」


 一瞬の沈黙の後、リベリオンの隣の空間が割れる。


「リベリオンうるさすぎぃ。私の空間がヒビ入っちゃうよぉ」


 割れた空間から現れたのは、黒い鎧に身を包む、背丈の小さなナニカだった。


「リジェクト、お前も手伝え」

「えぇーだってジャスティスがもう来てるよぉ」

「あぁ? んだよ、興醒めだな」

「あと少しで私の空間も壊されちゃうの」


 リジェクトと呼ばれたナニカは、少女のような声をしていた。リベリオンとは違いフルフェイスの兜ではなく、顔から下半分が見えている。そして兜の後方からは、薄い桃色の髪がポニーテイルのように伸びていた。


「だからさっさと女神様を拉致ろうって言ったじゃーん」

「ちっ。仕方ねぇなぁ。あぁでも死に損ないがいるから、殺してからな」

「わぉ! リベリオンってば名案じゃーん! 私、私が殺したいでぇす!」

「パーフィディに任されたのは俺だ。ゴッドタイプも死に損ないも俺が貰う」

「ちぇ、つまんないの」


 二人の狂者は、僕とテラスを見た。すると瞬きもしていないのに、いつの間にかリベリオンは目の前に現れた。


「じゃあ行くかゴッドタイプ。俺達の地獄は楽しいぜ?」


 リベリオンの触手が一瞬でテラスを巻き取り捕まえていた。

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