82.千葉
【
元老院、【
対。
無所属。
【
──勝者、【
──生涯という過程を徒爾に帰す、無辺なる
──生涯を滅びという終着点へと押し流す、無為なる巡礼。
似て非なる二つの死の神話体系は
「………………」
「………………」
互いの世界が崩れ去り、両者はそれでもまだ対峙し続けている。
が、それも束の間。
「が、はっ…………」
大きく吐血し、その場に倒れ臥したのは──【
「ごめん…………ミヤ、コ」
掠れた声でそう溢し、そのまま
「…………やれやれ、何処に謝る理由があるのやら」
老練なる
「──貴方の勝ちですとも、【
ズズ、と響いた音は、袈裟斬りにされた【
そのまま【
「ぐ、あ…………」
『始まりの
そこに。
「あぁー、いたいた。りっくん──て、うぇえ!? やだ、胴体風穴空いてるじゃない! ちょっとしっかりしなさいよー!」
先刻まで死闘が繰り広げられていた緊迫した空気をあっさりと粉砕しつつ、黒髪の乙女──【
「おやおや…………」
「──フン。がきんちょ相手に随分としてやられたようだな、【
重厚な足音を鳴らして歩み寄り、【
「ざまあない」
「…………これはこれは、相変わらず、手厳しいですな…………【
【
【
「さっきまでこのおかしな牢獄で分断されてたとこだが…………ついさっき空間のシャッフルが止んだ。戦闘が終息した
「ほほ、まあ、そんな所かも知れませんな…………」
そう口にした【
【
即ち。
(気を遣わせてしまいましたかな…………やれやれ)
存外に小粋な計らいをしてくれた後輩に、【
「まあ、一世紀以上の顔見知りに看取られる、という体験は、定命の身では叶わぬものでしょうな…………そう考えると、いやはや、望外な最期と言えましょう」
「ふん。流石のお前も臨終の際には少しはしおらしくなるかと思いもしたが…………徹頭徹尾掴み所の無い事だ。折角足を運んでやったというのに、なんとも妙味に乏しい」
「【
「それを言うならお前もだろう。随分と熱心に指導していたように思える。
言いながらに【
もはや視力も失ったのか、目を瞑ったままの【
「彼は…………
「そうか。まあ、終点終局はどう足掻いても動かないと踏んでるのかも知れんが…………いや、或いは動いてもそれでよしとする気なのか。何にせよ、あの女は我々とはスケールが違う。人類が今日に至るまで築き上げた死という幻想──その結晶体だ。その上で…………とうの昔に、アレは歪み皹割れ、狂い極まっているのだろうしな」
紫煙を吐きつつ、何処ともつかぬ方向へ目をやりながら【
「我等
「は。気儘なもんだ。…………が。恐らくは最も人々に望まれる死の形。それを統べたお前の終わりが──安らかでない理由が、無かったな…………」
老いたる
眠るように。
霞むように。
★◉★◉★◉★◉★◉★◉★◉★◉
◉★◉★◉★◉★◉★◉★◉★◉★
湘南の寂れたラブホテルの一室にて、あたしこと
「闘いに来ました、ねぇ…………」
わかりやすさが限凸しちゃってるよ。
お陰でこっちは逃げ場がないじゃん。
と、内心でため息を吐き散らかしつつあたしは急ぎ思考を巡らせる。
目前の女の子
他人に言えた事じゃないのは百も承知だが、厚着だ。
寒がりが多いのだろうか。
寒いのは身体じゃなくて心だ、とか言い出すほどセンチメンタルな連中じゃないのは間違いないが。
…………現実逃避はほどほどにしよっか。
とにかく、あたしの直感は最大の警鐘を鳴らしている。特級にヤベー奴であると。
そんな相手に迂闊に飛び込むと碌な事にはならないと流石のあたしも学習しているのだ。
…………してるよ?
「話し合いで平和的に文明的に解決する──とかってのはナシなんだよね、どうせ」
「貴女はそういうのから最も遠い位置にいると聞いていますが」
「誰だそんなこと言ったの。心外な。デマだねそれは」
「何にせよ、貴女を捕えろとの命令ですので。おしゃべりは得意ではないのでさっさと始めてしまいましょう」
ああ、そうかい。
あたしは腰を落とし、相手のどんな
──たと思った時には、あたしの
「──ッッッ!!!! 【
反射的にあたしは【
「はっ、はっ、はっ、ふ…………」
呼吸が詰まる。冷や汗がどっと湧き出る。
咄嗟に具現化させた蒼の大車輪のお陰で斬撃の軌道は曲げられたようだ。
喉──いや、首を落とす勢いだったが、顎を少し裂かれる程度ですんだ。
「け、けつあごになったらどうしてくれんのようら若き乙女に…………」
「そのくらいすぐに戻るでしょう。…………しかし、流石に良い反応です。皆大抵初撃で終わってしまうので」
少しだけ声と表情を崩しながら言う少女
その形状は──
(槍…………いや、薙刀? しれっと【
「ああ、これは私の
「…………へー、そう」
解放せずにあの初速か。
どうなってんだ、いったい。
「えーっとさあ、ちょっと質問したいんだけど」
「…………時間稼ぎでしょうか? まあ数分程度なら付き合いますが。何です?」
「
「【
「別に、なんにも。十が
「そうですか。生憎私からしても、メンバーのナンバリングに関してはよくわかってないです。他の皆さんに聞いたこともありますが、皆知らないようでしたね。【
「わー、スゲー説得力」
「別に番号が若ければ偉いというような風潮も感じたことはありませんし…………まあ、トップ3の方々は『別格』としての風格を感じさせられますが。古株ですし」
内情を聞けるのは新鮮っちゃ新鮮なのだが、聞きたいのはそういうのじゃない。
「じゃあ、誰が一番強いの?」
「さて、強さの定義にもよりますね。皆得意不得意というものがあります。例えば単純な偏在率、偏在規模で言うなら断トツで【
「あー、あの雪女ね」
それは納得。
だが、あたしが知りたいのは。
今あたしの目の前にいる、あんたが──
「ですが、そうですね…………純然たる戦闘力、戦闘技巧という点では
私が一番強いと思いますよ」
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