65.曜日
──湘南が【
悲嘆に叫び悶える二人の
「うっっっっぎゃあああああああああああああぁぁぁぁッッッッ!!!!」
「あっっっっひゃああああああああああああぁぁぁぁッッッッ!!??」
絶望し絶叫するその声の主二人。
【
「ねっねねねっねねねねねっね」
「ねねっねねっねねねねっねね」
強大無比にして残虐非道の
その理由とは──
「ネットがッッッッ!!!!」
「繋がんねーーーーっっっっ!!??」
…………その慟哭は双方混じり合いながら周囲に反響していった。
「ネット環境の無い場所とかアマゾンの奥地と変わんないじゃんっ! 嫌だーっ! 耐えられないーっ! 水飲むなって言われる方がマシだし! どころかっ! 嘘だ嘘だ嘘だぁーーーー! あの【
「ソシャゲ開けないーーーーっ! ログインできないーーーーっ! スタァミナァがぁ! あーーふーーれーーりゅぅぅぅぅううううっっっっ!! やああーーー! 携帯用Wi-Fiルーターも機能してないしっ! ダメダメダメダメなんでなんで何でなのぉ! 半日もログインしなかったらフレンド切られるぅ! 切ーらーれーちゃーうーー! 厳選に厳選を重ねてきた百戦錬磨のフレンド達なのにぃ! てか! 明日中には終わるよね!? 出られるよねここ!? でないと! 連続ログイン途切れる!! サービス開始からずぅーーーっとログインを積み重ねてきたソシャゲの数々があ!! やめてやめてやめて! 出して出してだぁしぃてぇここから出してーーーー!! お願いじばずぅぅぅぅぅ!!!!」
絶望に喘ぐその悲鳴は、誰にも届くことなく消えていくのでありましたとさ…………
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「電波の類いは全てシャットアウト。外部との通信は不可能だ」
「ん。流石に流石の一言だねーイルマは。お疲れ様ご苦労様ー」
鎌倉一帯を収監した監獄──その外で会話する者達がいた。
「ぶー。せっかくとうさまとミヤコとおはなししてたのに」
「あらら、ごめんねー
「…………はーい」
語り合うのは
その側に立ち黙して語らず佇んでいるのは今回の祭典の運営者とも言える
「まあ、ただでさえ危険な爆弾である【
流石に大規模な自らの監獄の維持、管理に集中しているのか、目を瞑り身動ぎ一つしないまま【
「…………へーえ、そう。そりゃご丁寧な説明に感謝するよ」
そう応えるのは、車椅子に座った──灰色の
「──百余年ぶりだね、【
「開口一番随分な挑発ねー。相変わらず私の事が嫌いかな?
【
【
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「なーんで付いてくんのよー。ラ・フランスだからどっか行きなさいよー」
「ラ・フランス…………ああ
「…………(怒)」
「あだぁ! な、殴ったぁ! 殴られたー! 暴力を振るわれたっ!」
何故だか全くもってわからないが。
あたし、
「あー…………そういや前にも見たね、あんた。あたしと
「
「そっか
「り、理不尽っ! 問答無用が過ぎますっ! ラスボスを糾弾する熱血系主人公ですか! 『俺は馬鹿だから難しいことはよくわからないけどお前が間違ってる事だけはわかる』ですか!」
ピーチクパーチクと、随分と騒がしい。
騒がしいヤツは別段嫌いじゃないけど、コイツはなんかいちいち言葉の節々に性根のダメさを滲ませてるから割と耳障りだった。
ともあれ、目的もなくコイツと漫才してる暇は無さそうだった。
現在地である材木座方面から、一先ずはもっと人の多そうな所──鎌倉駅辺りを目指して北上する事にしよう。
人の多い所に
「あぁー、待ってくださいよう」
「だから何でだって。あたしゃもういくからあんたも好きにしろっての」
「つ、着いていきますっ。いかせて下さい!」
「はあ~~~~?」
なにゆえ?
「え、えーっと、ホラ、あれですよあれ。【
「『的な』って何よ『的な』って」
もうちっと口から出任せ感を取り繕え。
碌に考えもしないまま適当言ってるのが見え見え過ぎるわ。
「で、ではえーっと、そうですね。貴女様のお人柄に惹かれましたのでお供させて下さいっ!」
今度は時代劇みたいな事を言い出したな。
「なーにが人柄だっての。見るからにあんまそう言うのに興味ないタイプでしょうが。典型的な人間嫌いって感じだわ」
「に、『人間嫌い』な人なんて、この世に存在しませんよ」
「へーえ」
たまには良い事も言うじゃん。
前向きだね。
「もし『人間嫌い』だなんて痛々しくも自称しちゃってる人がいたら、十中八九その人はただの『
「…………」
底意地の悪いこと言うなぁ…………
割と核心を突いてる所が尚更タチが悪い気がする…………
「はあ。怒らないから正直に言いなさいよ」
「あ、ホントですか? なんか今の状況ものすごーくデンジャラスな模様なので、あなたみたいにお強い人の側なら安全かなと」
「姑息が過ぎるでしょ」
脛を蹴ってやった。
「あ、あだぁー! 嘘つきっ! 嘘つきぃ! 怒らないって言ったのにぃ!」
「アホ臭いなもう…………人多い所いけばお仲間も見つかるでしょ。もうすぐ鎌倉駅着くからそこで大人しくして──んん?」
あたしはそこで足を止めた。
「あれ、どうしたんですか?」
「いや…………あれ? 北に真っ直ぐ…………進んだ筈」
なのに目の前に見えるのは──
「あっれー? 湘南名物…………モノレールじゃないですか」
「いや…………えぇ? なんでここでモノレール」
材木座からはもっと西方向──江ノ島寄りにある筈でしょ、湘南モノレールは。
「…………『西鎌倉駅』、だ」
そのまま歩き続けて見つけたのは、鎌倉駅ではなく頭に『西』とついた鎌倉駅。
「はっはーん…………これはつまり──方向オンチですねっ、うっかりやさん♡」
「ぶん殴るぞ」
「うぎゃっ! もう殴ってる! ぶん殴ると心の中で思ったなら既に行動は終わっている!」
ギャーギャーと騒ぎ立てるヤツを尻目にあたしは考える。
確かに北へ向かって進んでたのに西に移動していた。これはつまり…………
「スタンドこうげ──うげぇ!」
尻を蹴りあげた。
緊張感を無くすのに全力を費やしてるのかあんたは。
「んー…………まあいいや。こういう時は取り敢えず人に訊いてみよう。民間の人達は普通にいるみたいだし、何かに気づいた人もいるかもしれない」
「村人全員に話しかけてフラグを立てるわけですね。かしこまりっ!」
無視。
知らん。もう知らん。
一先ず目前の北鎌倉駅へと入る──
入ろうと、して。
ぞろぞろぞろ、と人混みが一斉に転がり出てきた。
「あん?」
「ふぇ?」
出てきた人々は服装からしてただの民間人らしい。
だが、どうも様子がおかしかった。
目は虚ろ。
血色は青白い。
そしてあたし達を視認した瞬間──
「逃げるよ!」
「はい? はい、いいぃぃぃいいぃぃ!?」
「う、ぅぃぃぃぃぃいいいいああああぁぁぁぁぁ!?」
頓狂な悲鳴を上げる荷物をスルーしつつ、背後に目を遣る。
町の其処ら中から現れた顔色の悪い連中があたし達を目掛けて走り出してきた。
覚えがある。
これは。
「【
「ひ、ひぎぃ──しょっしょしょっ」
窒息しかけながら後方の光景を目にした
「湘南オブザデーーーッドっ!!」
「………………」
後でまた殴ろう。
念入りに。
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