22.猶予(偽)
(こいつ、堂々と地雷踏み抜いたっ…………!)
「良い質問ですねぇ!」
と、
「…………はひ? 池上さん…………?」
と、間抜けな声色で、残る
「知らざあ言って聞かせやしょう!」
「こ、今度は弁天小僧っ……」
「説明しよう!
「な、なるほどわからん!」
「正直か」
実直な
そんなやり取りにはまるで興味がないのか、一切気にする事なく
「さてさてではでは今期一の期待のホープ、
「な、なんだってー!?」
「…………」
「………………」
「……………………」
「…………………………チッ」
満面の笑みで放たれた
あからさまなオーバーリアクションをとる
無表情で聞き流す三名。
鬱陶しそうに舌打ちするのが一名。
「つまりそうだね。ラジコンという喩えはいささか旧すぎた、VRと言った方が伝わりやすいのかな? 其処にいるけど此処ではない何処かで闘う。それこそが君達──
「は、はい! すごくとってもバッチリミッチリ余すところなく隅々までよくわかりました!」
「絶対嘘でしょ」
あかべこのようにコクコクと頷き言う
「わからない事はわからないって言いなよ、
「い、いえ。アタシは、その、よく周りから『よくわかってないのにわかったようなフリをするな』と窘められる感じですので、高校デビューに際し直していきたいなーと思う反省点なのです」
「直ってないじゃん。反省がまるで活かされてないじゃん。まさに今わかってないのにわかったようなフリをしてる最中じゃん」
「え、ええっ! なんでアタシがわかってないのがわかったんですか
心底から驚いた風な声をあげる
腹底からガッカリした風に生暖かい目を向ける
「…………わかるわけない事聞いといてわかったようなフリをするのはよしといた方がいいよ。うん」
「な、なるほど…………勉強になります! つ、つまりこういうときはわからないフリをするべきなんですね!」
「フリもクソもないでしょ実際わかってないんだから! 素直にわからないって言やーいいんだよ!」
「え、嫌です。そんな事言ったらまるでアタシがバカみたいだと思われるじゃないですか」
「………………」
みたいも何も、間違いなしの掛け値なしに純度100%であんたはバカだ。
という言葉を必死に呑み込む
本当に良い子なのである。
ともあれ『わかったようなフリをするな』というアドバイスを受けて『バレないようにわかったようなフリをしよう』となる辺りから、この
こうなるといよいよもって濃厚になってきた、
「ええっと一先ず──
「そう! それこそが今現在我々が直面している問題ではないかと思うのだよ! 肝心の戦場に立って
が、その結果はいまいち芳しくない模様で。
「いやー…………いいでしょ別に…………ねぇ?」
「まぁ実際のところ、運用法についてならともかくとして
「まぁ確かに、そうっすよね…………」
「無用の長物です。必要な知識は訓練生時代に座学で履修しています。余分な学習をする暇があるなら戦闘面の自己研鑽に努めたいものですね」
「まーったくこれだから最近の若いのは! そんなだから私がワザワザここまで来る羽目になったんだよ? 新局員を含めた君達にこの私が!
「本音は?」
「
「…………悲しいけどね、
「は、はひ…………」
沈痛極まりない表情で、
「ふーんだ! まったくみんな
「いや、それはみんな肝に命じて重々承知ではありますが…………」
「どーだかねー。みーんな気にしてるのはせいぜい
「嫌味を言いに来るためにここまで来たんじゃないでしょう。ほら、新局員達の基礎演習も終わったみたいですし、講義の時間ですよ。ちゃんと仕事してください。でなきゃ忙殺された
「はいはーいと。やれやれ、なんやかんやで生真面目なコらが多いよねー
「は、はひ。よ、よろしくお願いいたしますです。う、うぇへへへへ…………」
「うんうん。卑屈さと媚びが渾然一体となった良い愛想笑いだね~。ま、君も新局員なのだから、そう緊張せずに肩の力を抜いていきたまえよ。さ、授業の始まりだ」
肩を組みながら、
そして、その六人が
──
「…………仕事中だ。案件だけ言いたまえ」
周りに聞こえない、最小限の声色で
『火急の連絡です。
「…………残りの四人か。板橋での
『はい。まさにその件です。
──
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ぎ ゃ り ぎ ゃ り ぎ ゃ り ぎ ゃ り ぎ ゃ り ぎ ゃ り ぎ ゃ り ぎ ゃ り ぎ ゃ り ぎ ゃ り ぎ ゃ り ぎ ゃり ぎ ゃ り ぎ ゃ り ぎ ゃ り ぎ ゃ り
「ヴぎゃああああぁアあぁアあっあっあばババばバばバっアあッッハあぁあアアアぁァんッッ!!」
「はーい、痛かったら右手上げてね~」
ぎ ゃ り ぎ ゃ り ぎ ゃ り ぎ ゃ り ぎ ゃ り ぎ ゃ り ぎ ゃ り ぎ ゃ り ぎ ゃ り ぎ ゃ り ぎ ゃ り ぎ ゃ り ぎ ゃ り ぎ ゃ り ぎ ゃ り ぎ ゃ り
「がばバば、あっ、はバばババばっバばバばっババばばっババ! あ"ーッ! はーっ! うッッッぎゃあアアあア"あ"あああアアアああああ"ア"アアああああアあ"あァああア"ア"ア"ア"ア"ア"あ"あ"あ"っっ!!」
絶叫。
絶叫絶叫絶叫絶叫。
慟哭。
慟哭慟哭慟哭慟哭。
東京都板橋区。
夕冥暮れ泥む誰そ彼刻、ある廃ビルの一角での事である。
「早く答えてくれないかなー。あたしこういうのそんなに得意じゃないし。あ、性分的な話ね? そんなワケだからとっとと吐いてほしいんだけど。……なんで、あんたみたいな木っ端
「ふーっ、フーッ、ふーっ、フーッ、ふーっ、フーッ………………」
その壁に背を預け座り込む女性の
まず、残っている四肢は半分。右腕と左脚のみだった。切断──否、破断されたように見える左腕と右脚はどうなったのか。予想するのも憚られる。片目は無い。潰されてしまったらしい。顔全体が蒼痣まみれになっていることから、恐らくは執拗に殴打された事が窺われた。残っている右腕の先、五本の指は一本としてまともな方向を向いていない。タコもかくやというほどにしっちゃかめっちゃかな有り様だった。おまけとばかりに爪まで剥がされている始末である。
端的に言って。
ここは、拷問現場以外の何でもなかった。
「──誰の差し金?
「う、う"ウ、うううヴうウウぅぅ…………」
頭部をゴリゴリと踏みにじられながら、その
そして。
「言え、ない…………」
「………………」
「言えっ、ない。言えないっ……言えない、言えない。言えない! 言えない言えない言えない! 言えない言えない言えない言えない言えない言えない言えない言えないっ……!!」
「…………へぇ。ふーん…………おっけおっけ。わかった。うん。ごめんね酷いことして。もう逝っていいよ。じゃ、死に花咲かせろ~(キメ台詞の無駄遣い)」
ぐちゃり。
「ふーむ…………あそこまで嫐り倒しても吐かないか…………けど忠誠心故、って風にも見えなかったな。『言わない』じゃなくて『言えない』だもんね。言ったら──あたしに嫐り殺されるよりも恐ろしい目に遭わされる、って事かな?」
ふむふむ、と独り言ちるのは──黒衣を纏いし、蒼褪めた死神。
「──【
階層まるまる壁ぶち抜きな廃ビルの中。
白衣を纏いし人間達が来訪する。
「──うん」
それを見て、【
「そーだよ?」
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