サドンリーゲーム

奥田啓

第1話

暇を持て余して

ダラダラとベットで寝っ転がって過ごしている

「あーやることねえ」ひとりつぶやく。

携帯をみる

彼女の未羽が暇とメールを送ってくる。

そんなんいってもやることねえし金もないしなあ

めんどくさいから見たまま放置した。



大学の夏休みにはいったもの、そんなに交友関係広くもないからかなり持て余している。

「なんか面白いことねえかなあ」


「お前今暇なの?」


急にどこかから声がした

ベットから起き上がって辺りを見回すけどなにもない

窓の外を開けてみるけど

とくになにもなく静閑な住宅街が広がってるだけだった。

窓を閉めてベットに戻ると

「おーい、ここだよ」とまた声が聞こえる。

気持ち悪くなってバットを取り出し、構える。

よく耳を澄ましてたら

後ろから聞こえるのでバッと振り向いたら


なにもいない。

「下だよ下」という声に従い、下に目を向けると可愛らしいなにかのキャラクターのぬいぐるみがあった。

猫と犬とおおかみをたしたみたいなもので、そいつが動き出している



「うわ!!!!」

あまりにびっくりして大声をあげた。


「ゲテゲテゲテゲテ」

それは、へんな笑い声をあげた。

腰が抜けてしまった。

「ぬいぐるみが…」おれは絞り出したように声をだす。


「おれはぬいぐるみじゃねえ、ヒマナンデスっていう娯楽の神様なんだよ」



「は?ひ、ひま?神様…?」


「ヒマナンデス、娯楽の神様」

腰に手を当ててしわ寄せながらいう



「全然神様らしくないだろ」


「いろんな神様がいるんだよ。おまえがしらないだけだ」


「つかなんで神様がこんなところくるだよ」



「きまぐれだよ、天界はつまんねーからにんげんかいにきて、それでおまえをたまたまみつけただけだ。」


「そうなのか、それがなんのようなんだよ」


「お前今ひまなんだろ?」


「えっいや…」

なんか暇というと怖いのでつい否定してしまった

「いやいや、忙しいやつの過ごし方じゃねーって暇なんだろ?」


「まあ…それがどうしたんだよ」


「おれとゲームしてくれよ」



ゲーム…?


「そう!どこかで突然おまえに俺がいたずらするからさ、それをおまえが切り抜けるっていうゲーム。題してサドンリーゲーム?いいだろ?」


「は、はあ…」

おれはよくわからないのでそう答えるしかない。


「唐突になにかがおきるけどそれはそのときにならないとわかんねーからな」


よっしゃーたのしくなってくるぜとニヤニヤしはじめた。


「そういや切り抜けたらひとつ褒美やるよ、そしたらおまえにもメリットあんだろ」

「褒美?」


「まあなにかはクリアしてからのお楽しみだな。それじゃーまたあとで」



そういうと突然消えた。



え、なんだったんだよいまの

夏休みボケか?

それにしたらかなり深刻だな。




携帯がなる

大学での唯一の友達の出川からの電話だ


「おまえいまひま?」

すこしびくっとなった。さっきのがあったせいなのだろうか

「どうした?」

なにもいわずに黙っていたので変なが間がうまれ、気になった出川が呼びかけてきた。

「おお、わりい暇だよ」

俺は急いで返事をした。

「そんならドライブでもいかね?」

「おーいいよ」

快く返事する。

そういえば未羽も暇っていってたな


「未羽も誘っていいか?」

少し間があった。

あれ?どうしたんだと

「出川?」と伺うと


「おうごめんごめん、いいよ!」といつもの明るい出川の声が聞こえてホッとした。

タイミングがわるかっただけか。


「んじゃあ駅前集合な、俺迎えにいくから二人で一緒にいてくれ」

「おっけー」

「んじゃまたあとで」

そういうと電話をきる。


未羽にも連絡をして、すぐにいくと返事が来た。



駅前にいくと未羽がきた。

「あっきーおまたせー」

あいかわらずほわほわした顔、格好だ。

その隙のある感じがまたエロいんだけどな。

こないだも顔に似合わず迫ってきてめちゃくちゃ興奮した。

だらしない女ってえろいわ。


未羽が一方的にはなしてくるのを携帯いじりながら話半分で聞いてると

出川のワンボックスがきた。


挨拶しながら乗り込み、

俺は助手席、未羽は後ろの席に座り、シートベルトをしたら発進した。


「どこいくかー」

「海いかね?」おれがいうと

「いきたいいきたーい」とはしゃぐ未羽。

「ちょっとこえでけえよ」

というとすこししゅんとなった。

その時出川から視線を感じたような…

でもいまみると普通だ。


「んじゃあ海でもいくか!」といってどんどん走り出した。


「夏休みなのにやることねえよなあほんと」と俺がいうと

「未羽ちゃんとでかけないのか?」出川がまえをみながらいう

「金もないしなー暑いし行く気がうせるのよね」

「ひどいよーどっかつれていってほしい、ひどくない?出川くん」

「おまえ味方つけんじゃねーよ、おまえだってかねないだろが」

「夫婦喧嘩はやめろよな」出川は笑いながらステアリングを指でとんとんとさせる



高速に入る。


「この高速にはいってく感じいいよな、スピードでて、ドライブってかんじでるじゃん」

おれのふとした感想に

「たしかに、わかるわ」と運転しながらも返事してくれる。



「そういや腹減ったら後ろにお菓子とかあるからたべていいよ」

「やったー」

未羽がはしゃいでお菓子をとる

「あと、パーキングもうすぐだけどトイレ行きたかったらいってくれよ」と気遣いをしてくれる出川

よく見ると結構顔整ってるんだよな。でも彼女いないんだよな

きつかえるのに、なんでだろう?

「出川って彼女つくんねーの?」

ふとした疑問をぶつけてみる


「たしかに出川くんもてそう!」後ろから未羽も参加する。


出川は「いやいや、おれはもてないって、だからひとりなわけじゃん」

また笑って答える。

「ずっと片思いしてる人がいるとかか?」

おれはニヤつきながら言った。

「いやまあ」

「あっこれはあたりやな!だれだよー」

おれは茶化しながらいう

出川がステアリングを指で叩く

「いやいや、いいよ」

「俺とお前の仲じゃん!いえって〜」ステアリングを指で叩く回数が増えていく

「いやいや」

その押し問答を続けていたら


「おれのこと気遣いっていってくれるじゃん?」

すると妙に冷静にいう

「俺が気遣いなんじゃねーよ普通だよ。鈍いのはお前だよ」

「えっ?」

おれはこいつがなにいってるか理解できなかった。

「おれはさあ、未羽ちゃんがすきなんだよ」

「は?」

「でもおまえも好きだってのを知ってたからさ、身を引いたんだよ。そしててにいれてさ、でもおまえは未羽ちゃんないがしろにしてそんなに真剣でもねえかんじで、でも未羽ちゃんはすっげぇ彰人のこと好きだしよ。おれは我慢してるのにおまえはてにいれたものを大切にあつかわねえ。

こうやってドライブの運転もおれがやってんのなんでだ?代わろうかくらいいえよ」

「いやそれはおまえがドライブいこうっていいだしたから…」


ステアリングを強くたたく


俺と未羽はびくっとなった。


「おまえらの命おれが預かってんだぜ?口には気をつけたら?」


どうなってんだ、こいつこんなにキレるやつだったのか…

「もう俺きめたわ」

出川は不気味な笑いを浮かべた。


「どうせてにはいらねーならおまえらごと道連れにして死ぬわ!ひゃっはっはっは!!!」


そういうとアクセルを踏んでスピードをあけた。

「やめろ!!!」おれは非常識なスピードをだす車に振り落とされないようにつかまる

こいつ本当に出川なのか?


するとゲテゲテゲテゲテとどこからか声がする


聞き覚えがあるあの声が。


アイツはいた。



ミラーにぶら下がるかわいらしいぬいぐるみが不敵な笑みを浮かべてる。


「さあ、彰人くん!ここでゲームスタートです!道連れにしようとしてる友人から逃げ出すことはできるのでしょうか〜〜〜!ゲテゲテゲテゲテ!!!」


おれは退屈とは幸せだったのだろうかと思った。




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サドンリーゲーム 奥田啓 @iiniku70

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