止まっていた時間 7
☆☆☆
「ブレッド!ブレッドしっかりして!」
気が付けば俺は暗闇の中で地面に座り込んでいた。
なぜ今まで気づかなかったのだろう。
俺は全く接点のない人間だと勘違いしてのうのうとここまで来てしまった。
そうか・・・俺はジンクスの相棒だったのか・・・。
そうだよな、じゃなきゃこんなに強いわけないよな。俺は流れ込んできた記憶を整理しないままにイブの手を振り払った。こんな俺に生きている権利なんて存在しない。だって・・・俺はジンクスを殺したのだから・・・。
「ブレッド!」
背後からイブの叫び声が聞こえる。しかし、俺はただひたすらに走ることしかできなかった。
「グォォォ!」
前方からはハバネロの鳴き声が聞こえる。
俺は一切の迷いもなく空中に飛び出した。
魂法を発動させた剣がもう目の前に迫った奴のうろこを照らし出す。
真っ赤に染まったうろこが俺の心拍を高めていった。
そして一撃叩き込む。
(ガッシャン!)
奇妙な音と同時、奴の傷口から大量の黒煙が噴き出してくる。
それでも俺はさらに4連撃で奴の皮膚を切り裂いた。
「ウグァ!」
はるか上空で小さく声を漏らしたハバネロ。
今度は俺めがけて巨大な翼から無数とも思える紫色の針を飛ばしてきた。
残りの魂法をその針にぶつけるべく剣を振るうがあまりの量に剣が間に合わない。
一つの光の針が俺の腹を貫通した。
そして、2つ目、3つ目と徐々に貫通していく針は俺から完全に力を抜き取っていく。だんだんと地面が近づいていく。
俺は右手から剣をはなした。
そうだよな、そうだ。
もともと無理な話だったんだよ。
俺に誰からを守ることなんて・・・それは3000年後の世界でも16年前の世界でも今でも何ら変わらない。
もうやめよう。
抗うのも、
逃げるのも、
いっそのこと負けてしまおう。
そのほうがずっと楽だ・・・。
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