止まっていた時間 2

頬をなでる窓からの風が俺を夢の世界から切り離した。

だんだんとはっきりした視界にはセミロングの瑠璃色の髪がタレ込んでいる。


「ブレッド。いつまで寝てるのよ」


振られる肩に俺は全身で伸びをした。


「あと、5分」

「ダメ!、今日は一緒に買い物にいくってやくそくしたじゃない」


あっさりと俺の意見を否定したイブは無理やり俺の手に財布を握らせる。

俺は目をこすりながらあくびと同時に起き上がった。


「というかなんでイブがここにいるんだ?」


目覚めた思考が数々の疑問を浮かべる中、視界に映り込む恋人へと向かう。


「そんなの起きるのが遅かったからに決まってるでしょ。もう、やくそくくらいまもってよ」


プンとそっぽを向きながらほっぺをかわいらしく膨らませたイブに俺は隠しきれない笑みを浮かべる。


やばい・・・超かわいいじゃん・・・。


「いいから、早く支度してね。私、まってるから。もう二人は狩に出かけたから朝ご飯はお店に言って食べようね」


笑顔で話すイブに俺はそれを超える笑顔というより笑みを送る。


「そうだな。じゃ、三分で支度してくるよ」

「了解」


柔らかく言った彼女の目には真っ白な光が乱反射していた。


慌てて向かった先は魂法で圧力を調節しているという水道のまえ。

そこで俺は顔面にバシャバシャと水をたたきつける。

そして、寝間着を脱ぎ新しく新調した指定レザーコートを羽織った。


「よし、行こうかイブ」


イブは「私も準備はいいよ」と一言いうと木製の扉を力ず良く押し開けた。

俺もそれに続いた後、廊下一面に惹かれた真っ赤なカーペットを踏み込んでゆっくりと歩き出す。


「で、ブレッドは何が食べたい?」

「そうだな・・・フレンチでも食べたい気分かな」


フレンチなんて食べたことがない俺だがイブは「もう・・・フレンチってなに?」とまじめな顔をして聞いた来た。

なんだか非常に悲しい気持ちがするがこの時間軸にはフレンチ料理がないのだから当然だ。


「じゃ、どこでもいいよ」


そういうとイブは多少なりとも困った顔をした。

そして、人差し指をピット立てると「それじゃ、適当なお店でも見つけて入ろうか」と明るく応答する。


赤いカーペットの上を堂々と胸を張って歩くのはなかなか気分がいいものだがそれもあっという間に終わりシャンデリアのかかった純白のロビーを抜けるとそこはたくさんの人が行きかう道。

俺はそこで一瞬立ち止まると思わずイブの私服へとめがよっしまう。

俺は普段から何が起こるかわからないため常に装備全開で生活しているがイブは女の子だ。

普段はおしゃれをしていたいのだろう。

今は真っ白いワンピースを着ていてそこから伸びたスレンダーな足がいかに白いかをよく実感できる。


「それで、どこか行く当てでもあるのか?」


ちょうど止まった俺の真横まで歩いてきたイブは何やら誇らしげに胸をはる。


「それはねぇ。この間おいしそうなパンケーキ屋さんを見つけたから一緒に食べに行こう」


なるほど、パンケーキか。悪くないな。俺は内心で納得しつつ前方へと歩いていくイブについていった。

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