待ち合わせの果てに 6

 目を焼き付ける朝日。そして、ひさしぶりに踏んだコンクリートが固く感じられた。

今日は月曜日だ。土曜日、日曜日と間を挟んで、もっとも自殺率が多いといわれる月曜日だ。


「あぁ、いったいなぜ文科省は月曜日という日を作ったのだろう。いっそのこと土日月って休みにしてしまえばよかたのにな・・・」

「何言ってるのよブレッド。そんなことしたってただ学校に行きたくない気分が増えるだけで自殺率が減るどころの騒ぎじゃなくなるわよ」


隣で冷静な判断をしているのは俺の彼女であるイブだ。なにかと現実主義なところもあるが俺的にはこの短いスカートと真っ白い肌。そしてよく気が利いた性格に瑠璃色のセミロング、この辺がとにかくカワイイ。


「ど、どうしたのブレッド」


俺が下から上に徐々に見たところを彼女は頬を赤めて胸元に手をクロスしながら訪ねてきた。


「い、いや、なんでもない」


なぜか俺まで照れながら答えた。こういう行動がまたかわいいわけなのだ。要するに俺はこいつが大好きだ。頭だっていいし料理もうまい。俺の彼女にはもったいなすぎるほどにできすぎた女の子である。


「なぁ、今日もイブは塾があるのか?」

「うん、最近忙しくて」


まぁ、大体予想はしていたがそんなもんだろう。俺も塾に通っていることには通っているんだがクラスが違いすぎる。頑張って追いつきたいものだがなかなかそううまくも行かず、塾の時間だけは一緒にいられないという悲しくて寂しい現状にいるわけだ。


「気をつけて行って来いよな。最近の世の中は物騒だぞ」

「そんなことわかってるわよ。子供じゃあるまいし」


なんなことを言いながら彼女と俺は同じクラスの教室に入っていった。



「き~んこ~んか~んこ~ん」


鳴り響いたのは帰りのホームルーム終了のチャイム。俺はイブのいる教室に向かいそのまま二人で家に帰った。イブがすぐに塾に出かけてしまうと俺は家の中に一人なる。親は海外に出張していていないし兄弟もいない。薄暗い蛍光灯の明かりの中、俺はみぎてにスマホを左手に勝ったばかりの漫画を持って大爆笑していた。そうこうしている間に時間は立ち、俺は布団の中で眠りにつく。次の日の朝、俺はいつものようにテレビをつけた。今日はある話題でテレビが盛り上がっていた。


[18歳の少女が原因不明の死をつげました]


そんな報道がどのチャンネルでも番組表を無視して放送している。俺が食いつくように画面を見ていると話はますます興味深い方向へと流れていった。


[死因は不明のままですが少女は神隠しにあった模様です。監視カメラの映像をご覧ください]


アナウンサーの言葉と同時、画面が暗い夜道へと切りかわる。そこへ一人の少女が歩いてきた。モザイク越しからもわかる瑠璃色の髪にすらりとした真っ白い脚。そして、その少女が空き地を通った瞬間から少女の周りに紫色の煙が出現し始めた。恐怖のあまりに停止する少女。しかし、そんなことおかまいなしとでもいうかのように煙はどんどん少女のことを包み込んでいく。そして瞬きをした瞬間には画面から少女がの姿はなくなっていた。彼女は一体、誰だったのだろうか。よくイブに似たその少女の名が次のカットであげられることとなった。その少女の名はイブ。高校3年生18歳の女の子。そう何度もテレビで報道されていた。俺の両手から力が抜けるのを感じた。信じられない。そもそも神隠しっていったいなんだよ。なんで、なんで彼女はそんな意味わかんないことで死んだんだよ。ありえねぇんだよ。なんで・・・なんで・・・・。俺の頭をそんな言葉が何度も駆け抜けていった。一体彼女が何をしたというのだろうか。何もしていないじゃないか。


その日を境に俺は現実が怖くなった。こんな悲しい思い、もう二度としたくない。だれにも合わなければ・・・・現実から完全に逃げてしまえば・・・そうすれば、もうだれかを失うこともないんだ。そうすれば、俺がまたこんな気持ちになることもない。絶対に。だってもう二度と誰かとかかわることなんかないのだから・・・・。

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