パルム 6

[・パルム君は・・・いや、レッグ君はおそらく、今ジルト村の崖の上で町の破壊を執行しようとしているだろう。今すぐ行って止めてくるんだ・]


俺は都合上どこか人間離れしたあの男のいう通り、この事件を解決しなければならない。しかし、おそらく俺にそれを成し遂げることはできないだろう。なぜなら、その方法が・・・・[この事件を解決するためにレッグ君を殺すしかない。しかし、意思だけを殺害する方法は世の中に存在していない。そのため、君にはパルム君を殺す寸前まで持ち込んでほしい。そうすればレッグ君の存在がなくなるはずだ]そんなものなのだ。俺に彼を殺す勇気はない。しかし、やるしかないのだ。俺は思考を振り切って走った。最近は走りっぱなしの気もするが・・・。高速で走ること数十秒。


森を揺らす風が紫色のリボンを引き始めた。

だんだんと匂いが焦げ臭くなり信じられないことに空気には小さな炎がぽつぽつと上がり始めている。


「これはまずいかもしれないな」


俺の直感が騒ぐ。うごめくリボンが増えるにつれ俺はホープセーバーに手をかけた。空気を揺らして右側に振り下ろす。森から光が漏れ始めたころ、俺は魂法剣技を発動させた。

次の瞬間、視界に入ったのは空に向けて紫色の光源を作るパルム。その光源を中心に空気は燃え、宙を紫色のリボンがまっていた。


高まる緊張感が心地よく感じる。俺は全神経をあの光源に集中させ発動させた魂法剣技を

打ち込んだ。猛烈な突風とともに四方に散ったリボン。すでに後ろにいるパルムは妙な笑みを浮かべて次の打撃へと向かう俺に右の手平を向けた。パルムの動きのあまりの速さに俺の足が停止したかのようにスローモーションに入り込む。そして飛んできたのは太すぎる光線。ぎりぎりでかわした俺だがその顔面には強烈な熱戦が襲った。少なくともパルム・・


いや、レッグは俺のことを殺そうとしているようだ。瞬間的な回避により体制を崩した俺めがけて飛んできたのは無数にすら到達する量の氷。俺は目の前に迫ったそれらを片っ端から切り割った。四散する氷の破片。太陽の光を乱はん反射させる破片を剣の一振りで吹き飛ばすと俺は後ろ側に立つパルムへ突っ込んだ。魂法剣技独特の金属音が鳴り響く。そして、パルムの頭上に振り下ろした。まるで見えない壁に・・・実際見えない壁に防がれたのだろう。俺の剣は火花を散らして頭上で静思する。気づけはレッグの右手が光っている。


「おいおい、ブレッドよォ。まさかあんたを敵にまわしちまうとはな。パルムはあんたのことをえらく感謝してるみてぇだったからよ」


軽々と俺の一撃を止めてみせたレッグは今なお絶えない笑みを俺に向けている。


「そうか、それはよかった。でも、お前はパルムじゃない!もうこの世に存在してちゃいけないただの死人だろうが!」


一瞬レッグの瞳孔が見開く。そして犬歯むき出しで笑った。

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