幕間

        §


 胸が苦しい。動悸が治まらないのは、走りすぎたせいばかりじゃない。

 一目見て気が付いた。当たり前だ。ずっと見ていたのだから。


 でも、きっと彼女は自分を覚えていない。

 当たり前だ。目立たないよう、注意深く過ごしていたのだから。


 感情を隠すのだけは上手かった。

 痛くない。苦しくない。そう言い聞かせて、全てをやり過ごす。


 元気な莉理まつりは連れていかれた。

 泣き虫のリィズアンナもいなくなった。


 あの女の目に留まらぬよう、興味をひかないよう。

 彼女もすぐに目を付けられた。当たり前だ。目立ち過ぎるのだから。


 でも、天使に選ばれたのも彼女だ。


 石ころのように、うずくまっていただけの自分を置いて、全ては終わって始まった。


 一体自分はどうすれば良かったんだろう。


 クリームパンはあんなに美味しかったのに、胃には硬いものを詰め込まれたよう。

 腕の端末が鳴っている。倒れていたせいで定時連絡が滞っている。


『何かあったのか? 報告を』

「なんでもないです。鳥型5体。獣型3体。欠片の回収は14」

『痕跡の清掃はこちらで済ませておく。続けて実戦になりそうだが、行けそうか?』

「問題ないです」

『何か食べておけ。すぐに動いてもらう』


 紙袋の中のパンを取り出し、口にする。味のしないそれを、無理矢理飲みくだした。


        §

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