三章

怪しい人影


 真夜中。

 人里離れた山道を進む、一人の男がいた。

 その男は、一本の松明を手に持ちながら、あるものを目指す。

 しばらく行くと。

 道の先に、ほこらのようなものが見えてきた。

 その祠は、小さなお堂のようになっていた。

 頑丈そうな扉には、大きな鍵がかかっている。 

 その祠の前に立つと。

――――突然。

 男は、祠のとびらをこわし始めた。

 扉に貼られたお札を乱暴にはがし、けやぶる。

 鈍い音がして、祠の扉は簡単にこわれた。

「これで、我が望みが…………叶う」

 こわれた祠の扉を見て、男は、笑いをこらえられないという風に、口元にゆがんだ笑みを浮かべた。

 男の、獣のような狂った笑い声が、辺りに響く。

 月明かりが、辺りを怪しく照らした。

 どこかで、オオカミの遠ぼえが、聞こえた。


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