第4話 罰ゲーム、よくない
「あ、朝倉さん?」
「はっ!!」
夜野君の声で石化が解ける。結構な時間固まっていたようだ。
こうしちゃいられない!
素早く教室を見渡し、一番最初に目に飛び込んでいた掃除用具入れめがけて走り出す。ガコンッと勢いよく開けるも、ここはどうやら外れのようだ。箒、塵取り、雑巾しかない。
なぜか雑巾から牛乳の匂いが……給食じゃないのになぜ? 誰か牛乳持ってきてこぼした?
「どこ?! どこにあるの?!」
「朝倉さん、落ち着くんだ!」」
「落ち着いていられない! 早く……早く奴を見つけなければ!」
「む、奴? 奴とは?」
「隠しカメラが……私を狙ってる!」
「何っ!? それは大変だ! 俺も探そう!」
驚いた顔をして、夜野君も怪しい部分を探してくれた。
パターン青、使徒です!
仕組まれている終結……じゃない隠しカメラがあるはず。じゃないとイケメンが、教室で告白なんて三次元の私には起こり得ないんだよ。これが二次元であれば間違いなく真の告白で、それを受け止めて良かった良かった、めでたしめでたし、はい、最後のスチル回収ってなるんだけど。悲しいかなこれは現実世界。自分で言うのも悲しいけどこれは百パーセント……Soかもね! いや確定です。
「これは罰ゲームだ!」
「罰ゲーム!?」
中学の頃、罰ゲームで告白してきた男子いたよ。戸惑ってたら「何本気にしてんだよ、ばっかじゃね?」って鼻で笑われた上、隠れていたクラスメイトがわらわら出現して私はすぐさま『逃げる』を選択したね。しかもそのあと二週間ほど罰ゲームのネタでクラスは大盛り上がり。私にとっては嫌な思い出だったけど、クラスが明るい雰囲気だったのは良い事……そんなわけあるか。
「朝倉さん、落ち着くんだ」
「落ち着いていられないでしょ!」
「違う、罰ゲームではない!」
教室の後ろにあるロッカーに首を突っ込んで探そうとしていると、一緒に探していてくれたはずの夜野君に、ロッカーから引きはがされた。背中が、夜野君の胸板にぴったりとくっつく。何これ、シャンプーの香り漂うんですけど。私より女子力高いんじゃないの?
身近な男子=弟は野球部だからいつも汗臭いんだよね。だから意外。
それよりも今、夜野君なんて? 罰ゲームじゃない?
「罰ゲームではないぞ! 本気だ」
「う、嘘だよだって」
「嘘ではない」
「だって話したこともないのに?」
「一目ぼれなのだ」
「ひ、ひとめぼれ?」
君にHITOMEBORE? それともお米の方?
「うむ」
そのまま、夜野君はそっと抱き寄せた。
ドクドクと鳴っているのは自分の鼓動か、それとも……。
「入学式で、朝倉さんに一目ぼれしたのだ」
耳元で囁くように、けれどはっきりと夜野君はそう言った。
ああ、まだ罰ゲームを続ける気なの? どうしたのゲームか何か負けたの?
その割には、夜野君の体温が少し高いのは気のせいだろうか。
鼓動が早く感じるのは、気のせいだろうか。
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