三神合身スサノオン 転校生のロリばばあが世界を救えとロボを呼ぶ!

キサガキ

機神タジカラオウの章

第1話 ヨモツ獣を倒せ! 機神タジカラオウ登場 その壱

 一話 

 

「ごめんね、響樹くん。長い間お店手伝ってくれて、ありがとね」

 さびれた商店街。シャッターが閉まった店が並んでいる。

「いえっ、こちらこそありがとうございました」

 少年が頭を下げている。

 古い作りの木造の二階建ての住宅。

 二階部分が住居で、一階が駄菓子屋として昨日まで営業していた。

 主な客層は小学生の子供たち。

 学校が終わるとグループで下校、その帰り道にここで買い食いするのが、子供達の日課となっていた。

 オープン当時は店の主である老夫婦で切り盛りしていたのだが、年齢を重ねるにつれて体力の低下が著しくなり、一年前から高校生の少年、御門 響樹がアルバイトとして働き始めた。


「娘夫婦が一緒に住もうって、言ってくれてねぇ」

 綺麗な白髪を後ろでひとまとめにした老婆が、嬉しそうに語る。

「ヒビキくん、これ少ないけど美亜ちゃんと食べ」

 頭がツルツルに禿げた、温和そうな顔つきの老爺が、ビニール袋にいっぱい詰まった駄菓子を渡す。

「おおっすいません。妹の分まで」

 ビニール袋の中身を嬉しそうに覗く。

 沈黙。二人は寂しそうに響樹を見つめている。

「それじゃ、お世話になりました。失礼します」

 響樹はもう一度頭を下げると、振り返らずに駄菓子屋をあとにした。


(さて困ったな、新しいバイト探さなきゃ)

 そんな事を考えながら、交差点の横断歩道で、歩行者用の信号が青になるのを待っている。

「あっ、いたっ。お〜い」

 道路を挟んだ向かい側から、少女の声が聞こえた。

 響樹はそれに気づかない。考え事していて、心ここにあらずだ。

 むうっ、少し頬を膨らませ少女は飛び跳ねる。

 両手を大きく振って、ぴょんぴょんと元気に飛び跳ねる。

 ツインテールの髪がその度に、上下に揺れた。

「んっ?」

 やっと少女の存在に気づき、右手を上げた。

 信号が青に変わる。

「どうした美亜、寄り道か?」

 左右を一度確認して車が来ない事を確認して、交差点を横断する。

「も~やっと気づいた。今日でバイト解雇されたって聞いたから迎えにきたんだよ」

「か、かかか解雇ちゃうわ。ほら、やるよ」

 そう言って、駄菓子の入った袋を手渡す。


 周囲が不意に薄暗くなる。

 空が雲に覆われたわけでも、日が暮れたわけでもなかった。

 兄妹は顔を上げて、天を見た。

 墜ちてくる。闇が、黒く染まった塊が。

 落ちて、くる。


 ズシンと地響きが鳴り、アスファルトを砕く。砂は舞い嵐のように吹き荒れる。地震のように揺れる道路に響樹は立っていられない。

「美亜!」

 姿が見えない。すぐ隣にいたのに。

 まさか破壊されたアスファルトに巻き込まれたか。

 そこまで考えた所で、響樹は首を振り思考を切り替えた。

(そんなわけあるか)

「美亜どこにいる」

 ズシンズシンと地鳴りがして、再び地面が揺れた。

 音が動いている。

 砂煙が薄れていく。

 何だあれは……。

 響樹は目を細める。

 巨大な人影がそこに立っていた。

 身長は五メートルを超えている。太く逞しい二本の足で立っているが、人の姿には程遠い異形なる姿をしていた。人というよりも獣に近い。後足で立ち上がるといった方が、違和感がなかった。

 ガッシリとした太い肉体に鎧のような外装。

 姿勢は自然と前に屈んでいる。

 手と足、長く伸びる尻尾の先には鋭い突起物が生えていた。

 視線をあげる。

 空は灰色に染まっていた。

 あの異形なる獣は、あそこから落ちてきたのか。

「グルルル」

 獣は低い唸り声をあげ、頭を左右にゆっくりと動かす。まるで何かを探している様だ。

「お……お兄……ちゃん」

 美亜の声が聞こえた。たどたどしく小さな声だが、はっきりと耳に届いた。

 見つけた。だがその場所は獣の足元。

 破壊されたアスファルトの死角に、美亜は蹲っていた。

『に……え』

 頭上で音がした。

 獣が発したのか?

『にえ』

 間違いないこの獣が発している。


 頭の動きが止まった。黄色く濁った瞳は一点を只、見つめている。

 そこにあるもの、それは怯えた表情を浮かべた少女であった。

『にえ、ニエ、『贄ッッッッ』

 獣は吠えた。

 死角になっていたアスファルトの破片を、弾き飛ばす。


 美亜の姿が晒された。

「あ、あぁぁ、あぁぁあ」

 美亜は、自分に向かって伸びてくるゴツゴツした岩の様な掌を見て、恐怖に震え声をあげる。


「この化け物がぁぁ!」

 迷いはない。響樹は妹を守るために巨獣に飛びかかる。

 ゴンッと、鈍い音が聞こえた。


 まとわりつくハエを追い払う牛のように、獣は尻尾を振る。

 攻撃をしようとか防御しようとか、そんな気なんて毛頭もなく、ブンブンと煩いから追い払う。

 尻尾が響樹の身体を弾き飛ばした。


「ぐっ!」

 口から鮮血。

 機能していない信号機の柱に、背後から叩きつけられる。

 意識はまだ飛んでいない。軽く撫でられた程度だから、このくらいで済んでいるのだ。

 獣は美亜を掴んだその手を、自分の胸の中央に持っていく。

 中央には、赤いクリスタルが埋め込まれていた。

 いや……嫌と首を振る美亜を、それに近づける。

 バクンと音をたてて、クリスタルが中央から左右に開き、そこから蜘蛛の糸のような細く半透明な糸が繭状に、美亜を包んでいく。

「お……兄……ちゃん……」

 プツンと不意に電源を落とした様に、美亜の動きが止まった。

「み……あ……」

 夢を見ているみたいだ。絶望的な悪夢を。

 意識朦朧としながら、響樹は思った。


『パァアアアアアアアアアアアアンンン』

 突如、鳴り響く車のクラクション。

 響樹の前を、ものすごい速度で走り抜ける白いワゴン車。

 獣の気がそれに向いた時、車の屋根から何者かが飛び出した。

 何者かは宙を舞い、獣の胸の上に着地する。

 赤いバトルスーツにフルフェイスのヘルメット。

 丸みを帯びた体型と二つの大きな頂。

 その姿は女性を連想させた。


 両腕を広げる。拳に光の粒子が集まっていく。

 天照力光刀。(アマテラスブレード)

 手甲に収納されている刀が、光に覆われながら伸びる。

 バトルスーツの女性、暁 沙耶は繭の前に刀を近づけた。

(待っててね、今助けるから)

 右腕を頭上に構える。

 捕らえられている贄の少女を傷つけないように、寸分に狂いも無く繭の表面を斬った。

 少女の半身が晒される。

 獣は獲物奪われてなるものかと、再び糸を吐き出した。

「させない!」

 次から次へと伸びる糸を、両手の刀で休みなく斬った。繭の再生速度よりも早く早く早く。

 少女の全身があらわになる。沙耶は力強く抱きしめると、速やかに退避した。

 着地点には、血だらけの少年が倒れていた。

 みあ……みあと、うわごとの様に呟いている。

 沙耶はバトルスーツの首元を触った。フルフェイスのヘルメットが外れ展開すると、素顔が外気に触れた。

 サラサラな黒髪のポニーテール。前髪をピンで留めている。綺麗な顔だちで大人びて見えるが、実際はまだ十代半ばの美しい蕾であった。

「黒崎さん!」

 白いワゴン車の運転手の名前を叫んだ。


 ワゴン車は沙耶が叫んだと同時に進路を獣に向けた。かなり速度が出ているため、このままだと獣にぶつかるまで、そんなに時間はかからない。

「『逢魔が時』が終わるまで残りわずか。決着をつけるぞ、ヨモツ獣」

 黒崎は無意識にメガネのフレームを触る。

 黒崎 護。年は二十代後半の男性。背は同世代の平均よりも頭一つ高い。髪は短髪で黒縁のメガネをかけている。沙耶と色違いの白に青のラインのバトルスーツを装着していた。

「来い、タヂカラオウ」

 黒崎は低く叫んだ。

 突如、激しく道路が横に揺れ始める。

 進行方向先のアスファルトが砕け、大きな穴が開いた。

 ギチギチギチギチと、錆びた鎖が擦れた様な音が、底から聞こえてくる。

『ぎぃぃ!』 

 獣はその音に反応する。

 穴の中から、巨大な黒い棺桶が現れた。

 黒崎はそれを避けようとはせずに、更にアクセルを踏み込む。

「機神合身」

 頭上に設置されているレバーを握ると、前方にスライドさせる。

 車は蒼白い光の球体に包まれ、宙を飛んだ。

 棺桶の中心に穴が開く。

 車はそこが目的地だったのか、引き寄せられる様に内部へ吸い込まれた。

 

「気をしっかりもって、ミアさんはここにいるから」

 沙耶は響樹の隣に、意識を失っている美亜を寝かせる。

「美亜」

 響樹は美亜がそこに存在する事を確認する様に、手を力強く握りしめた。

「ありがとうございます。妹を助けてくれて」

 立ち上がろうとする響樹を沙耶は制する。

 響樹は腰を下ろし、壁に寄りかかると、美亜の頭を太ももに乗せて、会釈した。

「ごめんね。早く二人を安全な場所に連れてきたいけど、アレがいる間はちょっとね」

 申し訳なさそうに言うと、黒い棺桶とヨモツ獣に視線を向けた。

「黒崎さん!もう時間が!」

「わかっている」

 棺桶の中から、黒崎の声がする。

 ギィィィィィと音が聞こえ、扉が開かれた。

『ジッジッ』

 獣は唸る。敵だと認識したようだ。

 両肩の装甲の一部が展開する。何層にも積み重なったスリッド型が、細かく上下に振動していた。

『ジャアアァァ』

 脳天を貫くような咆哮。ビリビリと空間が揺れる。

 怪音波と呼べばいいのか、その攻撃は棺桶に直撃した。


「きゃああああ」

「ぐっっっ……!」

その余波は近くにいる沙耶達も襲った。


 無数のヒビが棺桶に走り、ボロッボロッと砕けていく。

 ニィィィっと嬉しそうに笑うヨモツ獣。

 だが、そこから現れたのは、蒼き異形なる巨人。

 機神タヂカラオウが立っていた。

 

 獣は笑うのを止めた。

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