第367話 兵庫県西宮市津門稲荷町のギョポン(小)ニンニクマシヤサイマシマシカラメ
「お、限定にありつけるか」
色々と複雑なご時世ではあるが、必要な外出として西宮を訪れることになっていた。目的地は『凉宮ハルヒ』シリーズに縁の深い阪急西宮北口駅である。
ところで、そこから海側に15分ほど歩けば、JRがあり、国道二号線がある。
国道二号線沿いは、各所に色々と麺を喰える店があったりするのだが、JR西宮駅か少しいったところに、ずっと気になっていた夏限定メニューを出している店があるのだ。
昨日で限定が終わるという情報もあったが、ダメ元でJRで西宮へ向かっていたのだが、道中で確認したSNSの情報によると、あと20食残っているということ。
賭けに勝った気分でJR西宮駅へ降り立ち、南側へ。因みに、この辺りでは山側=北、海側=南である。
そうして、国道二号線沿いに東へ少し歩くと、目的の店が見えてくる。
「む、並んでいるか」
開店から10分ほどだが、十人以上の列がある。ということは、店内は既に満席と言うことだ。
「20食、間に合うか?」
ドキドキしながらも、店の前にある待機のルールを確認する。どうやら、先に食券を買うのではなく列に入るシステムになっているようだ。
最後尾に並んでも札を出す必要はない。待ち時間に『ゴシックは魔法乙女~さっさと契約しなさい!~』を起動する。現在は『怒首領蜂最大往生』コラボイベントで、今朝配信された朱理もストーリーの石で確定確保済み。巡回するのもいいが、一つ残ったイベントミッションもこなしたい。
コンボを20000出さないといけないのだが、ショットを色々変えても18000であと一歩が届かない。
と、結構ガチで試行錯誤していると、店員が注文の確認にやってきた。
「ギョポン、まだありますか?」
運命の質問に、
「あります」
ということなので、即決。トッピングも色々あるのを確認して、
「ギョポン小、ネギとタマネギトッピングで」
という形で注文を通した。
よし、限定にありつけたぞ。早くに家を出て来た甲斐があった。
満足感に浸りながら、ゴ魔乙で試行錯誤してミッションは達成できないまま、時は流れて店内へ案内されるときがやってきた。
食券機で食券を確保、水とおしぼりとレンゲと箸はセルフで確保して、案内された番号の席へと。店員のオペレーションがしっかりしていて解り易い。
あとは待つばかりだが、先に注文を通してあったので、一息吐いている間に麺上げた始まっていた。ゴ魔乙は終わりにして、待つことしばし。
ネギとタマネギが小さな器で先に提供され、
「ニンニク入れますか?」
コールのときがやってきた。
「入れてください。ニンニクマシヤサイマシマシカラメで」
と詠唱を済ませれば、ほどなく注文の品がやってきた。
「これはこれは」
山盛りの野菜は鰹節でコーティングされている。麓にはニンニクと豚が寄り添っているが、たっぷりの鰹節が覆っている。
「いただきます」
まずは、野菜。
「ああ、鰹の風味……」
流石ギョポン、魚とポン酢を関するだけはある。スープに辿り着く前から魚介出汁である。
少し野菜を処理してスープへの導線を確保したところで、れんげで一口。
「想像以上にさっぱりしてるな」
ベースは同じ豚骨系なのだが、魚粉の香りとポン酢の酸味で本当にさっぱりしている。夏向けというのは確かだ。鰹節が更に加わって、スルスルと喰える。
野菜が減れば、麺への導線も確保できる。麺を引っ張り出して天地を返せば、ニンニクがスープに溶け込んでいく。
ガツンとした刺激も、酸味で中和されてほどよい。
麺を喰らい、豚を喰らい、野菜を喰らい。
「ここで、ネギだな」
まずはネギ。
「うんうん、ポン酢に合わないはずがないよな」
心地良い風味が加わる。そこに玉葱を加えれば。
「これはピクルスにしてあったのか、ポン酢の酸味か?」
とにかく辛味より甘酸っぱい味わい。
どちらもバッチリ、ギョポンに合っている。
スルスルと麺も野菜も豚も胃の腑に吸い込まれていき。
「え? もう終わり」
あっという間に食べ終えていたのだ。
残ったスープは、沈んだ魚粉でそちらの風味が効いてまた少し違う味わいを楽しませてくれ。
余韻に浸りながらも、一時間弱並んでいたので予定の時間がある。
最後に水を一杯飲んで気持ちを切り替え。
「ごちそうさん」
食器を付け台に戻し、おしぼりを入り口の籠に放り込んで店を後にする。
「さて、西北へ向かうか」
北上すれば着くのだろうが、道をよく知らないので、確実に道が解る始点となるJR西宮を一旦目指す。
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