第363話 大阪市中央区難波千日前の賄い醤油

「なるほど、こういう続編になったのか」


 今日は、休日を利用して以前観て面白かった盲目爺が大活劇を繰り広げる『ドント・ブリーズ』の続編を鑑賞しに難波に出てきていた。


 爺さんの趣深い在り方はそのままに、ストーリーはこうきたか! という感じで、中々胸糞悪いような悪くないような。でも、オチが好みだったのでよし。


 そんな爺の活躍を堪能した後は、


「腹が、減ったな」


 上映時間の都合で、昼を大分過ぎている。


「さて、今日は久々にガッツリ喰うか」


 かくして、劇場を出た私は、なんばパークスの南側から出て南海通りを東へ向かい、とんかつチェーンのある角を北へ。


 せっかくなので、設備更新で休業していて最近営業再開した店に行こうという心づもりだ。


「ん? 込んでるが」


 店内を覗けば、パラパラと空き席はある。


 先客が食券購入中で少し待ったものの、すぐに店内へ。


「お、タッチパネルか」


 以前はボタン式だったが、食券機がリニューアルされていた。


「と、今日はオーソドックスに行くか」


 基本の醤油の食券を購入する。トッピングも、今日はいい。


 店員に案内された、アクリル板で仕切られたカウンター席に着き食券を出す。


「ニンニク入れますか?」


「入れてください」


 マシはないのでニンニクを入れることだけを告げれば後は待つばかり。『ゴシックは魔法乙女~さっさと契約しなさい!~』を起動する。


 現在は、ジルバラードの『はじまりの物語』の後編のイベント中だが、今日は土曜日だ。スコアアタックの日である。


 せっかくなのでスコアタに励み、それなりのスコアをたたき出せたところで、盛り付けが始まる気配があった。


 少しして、注文の品がやってくる。


「うんうん、こういうのでいいんだよ、こういうので」


 大きな丼には、こんもりと山盛りの野菜。麓に並ぶ分厚い豚。にじみ出す褐色のスープ。どれもこれも、食欲をそそるというものだ。


「いただきます」


 まずは、スープを。ガツンとくるこってり豚骨醤油。野菜をからめて喰えば、もう、それで完成された味わい。


 とはいえ、メインは麺だ。


 野菜をある程度崩したところで、平たく太い麺を引っ張り出して頬張る。


「おお、醤油」


 底にタレが溜まっていたのか、一段階強い醤油味がする。更には、にんにくもいい感じに溶け込んでいて、なんというか、旨い。食が進む味わいだ。


 ずるずると麺を啜り野菜を頬張り、豚を囓る。細かいことは、もういい。


 ガッツリといくのだ。


 半分ぐらい進めたところで、


「味変の時間だな」


 まずは、一味と胡椒をぶっかける。


 異なる辛味と風味が加わり、更に食が加速する。


 そのまま、更に半分、四分の一ほどになったところで。


「これも少しは楽しむか」


 タバスコを掛けてみる。


「お、こういう感じになるのか」


 酸味が加わってこってりが緩和されて、これはこれでいい味だ。だが、全部がこれになるのもなんだかなので、このタイミングに少量で試したのは正解だっただろう。


 最後は、魚粉。


「つけ麺の定番の味が、豚骨醤油というのがよく解る味だなぁ」


 こちらも少量で試すが、やはりそういう味になる。


 ここまで堪能すれば、もういいだろう。


 残った麺を豚を野菜を、喰らい。


 スープをレンゲで楽しみ。


 余韻に浸る、前に。


 あと、もう一口。


 二口。


 醤油が立ったスープをいただき。


 最後に、水を一杯飲んで一息入れ。


「ごちそうさん」


 食器を付け台に戻して店を後にする。


「さて、少し、歩くか」


 腹ごなしがてら、オタロードを目指す。




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