第348話 大阪市中央区難波千日前の賄いポン酢
「兎は、やはり凶暴な生き物なんだな」
名作ダンジョンRPG『ウィザードリィ』に置いて、兎は恐怖の対象だった。クリティカルヒット。首を刎ねられるのだ。
あの愛らしい兎がそんな凶暴な訳がない。そんな過ちを正してくれたのが映画『ランペイジ 獣大乱闘』、失礼、噛みました。『ピーターラビット』だった。にっくきマグレガー殺す兎となってあの手この手で責め立てる。
そんなピーター達が、マグレガーとも家族となって迎えたのが『ピーターラビット2』である。先ほど観終わった映画が、それだ。
前回とは毛色の違う物語だが、やはり動物達は大暴れ。巨大化はしないですが、それでもあちこちに被害を出したり。
それでも、ファミリーの物語、いや、家族の物語でホロリとくるところもあったりして、楽しい映画体験だった。
映画の終わる時間は、ちょうど昼時。それなりにカロリーが高い映画だったのもあり。
「腹が減ったな……」
最近はすっかり暑くなってきた。ここはサッパリしたものがいい。ポン酢とか、いいな。そこに、ネギなんかも添えると健康にも良さそうだ。豚ともやしにポン酢とネギをぶっかけたものとか、夏らしいサッパリしたメニューで最高だ。
いわゆる豚しゃぶ的なものだ。
「そうだ、それなら、あの店だな」
条件に当て嵌まる店が思い付いた。劇場からも近い。
ということで、道具屋筋方面へ向かい、入り口の手前で左折。次の角で右折。道具屋筋の一つ東側の道を真っ直ぐ進み、なんさん通りにぶつかる手前、コンビニの前に目的の店はあった。
「少し並んでいるか」
昼時だから仕方ない。むしろ、先客2人は少ないぐらいだろう。
さっさと列に入れば、直後に何人か続いてくる。ほぼ同時に、案内が始まった。
どうやら、満席ではなく席の片付け待ちだったようだ。そのまま、すんなりと厨房をコの字にカウンターが囲む店内に入り、食券機前に立ち。
「当然、これだな」
ポン酢とネギのトッピングの食券を確保し、案内されたカウンター席へと。
「にんにく入れますか」
「入れてください」
と、マシはないのに罠のような確認に答えて食券を出せば、後は待つばかり。『ゴシックは魔法乙女~さっさと契約しなさい!~』を起動する。現在は、マリコとロータスの物語が展開中。あちらにはあちらの事情がある、という感じだ。
そんなストーリーを楽しみつつ、イベントのミッションをこなしていれば、時が経つのは早い。気がつけば、注文の品がやってきた。
「ああ、夏らしいメニューだ」
山盛りのもやしの底に、埋もれた豚と刻みニンニクのチラリズム。丼の表面は薄褐色のスープが滲む。別皿に、山盛りのネギ。
「いただきます」
軽く野菜をスープに浸していたたけば。
「ああ、しゃぶしゃぶ感」
ポン酢の風味で野菜を食えば大体上手い。そこに豚の出汁まで絡んで来るのだ。豚しゃぶだ。若干、アブラが多い気がするが気にしてはいけない。
夏らしい味をいただき、ある程度野菜を消費したところで、底から麺を引っ張り出す。しっかりとスープを混ぜておく。
麺を啜れば。
「お、なんか今日はいい感じだ」
いつもは、ややデロんとした感じでそれはそれでよかったのだが、今日はガッチリ硬い。これぐらいなのも、またいい。サッパリしたポン酢の風味で啜り囓るのが幸せを感じさせてくれる。
そこで、ネギを投入する。ネギに塗れた豚をポン酢の利いた出汁で喰えば、もう、本当に、豚しゃぶだ。さっぱりした夏の味わい。ややアブラっこいし混ぜたことでニンニクもそれなりにガツンとくるがそこは気にしてはいけない。
ネギとポン酢のマリアージュ。最高だ。
後はもう、欲望に任せて喰らうのだ。
麺を野菜を豚を、喰らう。
時に、魚粉を振り掛けて和の味わいを加え。
時に、胡椒を振り掛けてピリリと刺激を加え。
時に、一味を振り掛けて唐辛子の香りを加え。
存分に、喰らう。
これなら、夏バテの心配なんていらないだろう。ポン酢とネギでもやしと豚を喰らう、サッパリしたランチだ。
だからこそ、ペロリと食い尽くすのも必然だろう。
最後に、スープを飲む。
ニンニクやら後から足した薬味の数々が合わさっているが、ポン酢とネギの風味でサッパリした味わい。アブラでヌルヌルしているが、そこは気にしてはいけない。味はサッパリしている。
名残が残るが、水を一杯呑んで断ち切り。
「ごちそうさん」
食器を付け台に戻し、店を後にする。
「さて、腹ごなしに歩くか」
なんさん通りの向こう、オタロードへと足を向ける。
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