第327話 大阪市中央区千日前のチャーシュー麺
「遂に、終わるのか……」
『シン・エヴァンゲリオン 劇場版』の公開日。『新世紀エヴァンゲリオン』が1995年秋からの放映だった。もう、25年以上に渡る付き合いか。
幸いにして初日に仕事帰りでも鑑賞可能な時間帯のチケットが取れたので、私は劇場のある難波の地に降りたっていた。
上映開始までは1時間弱ある。
そして、
「腹が、減った、な……」
空腹で集中力が散漫になるのは何としても避けねばならぬ。ならばと、普段行かない千日前方面へと足を運ぶ。
食い倒れの道頓堀方面に向かっているのだ。飲食店には困りはしない。さて、どこへ行くか? エヴァと言えば……
「そうだ、ラーメン喰おう」
となれば、千日前なら久々にあの店に行ってみよう。ニンニクもあるしな。
千日前通りの北側を東へ歩き、ビックカメラ前を過ぎた辺り。
少し奥まったところにその店はあった。
「うん、すぐ入れるな」
まだ食事時には早い時間でもある。サクッと入ってサクッと喰えそうだ。
店舗に入って手指の消毒をし、入って右手の食券機へ。
「……チャーシュー抜きは寂しいから、いっそ増やすか」
ということで、チャーシュー麺をチョイス。
案内されたカウンター席へ付いて食券を出せば麺の固さを問われるので、
「固めで」
と応じ、
「あと、ニンニクを下さい」
と付け喰われる。
「1人前でよろしいですか」
「はい」
ということで、こちらのオーダーも通す。
そう、この店はホクホクの揚げニンニクをなんと無料で付け合わせに出して貰えるのだ。
これで、ニンニクラーメンチャーシュー抜きならぬ、ニンニクとチャーシュー麺のオーダーの完成である。
座席に置いてあるセルフの水を入れて一息吐き、これまた座席に用意されているキムチを容器から皿に取って準備したところで、『ゴシックは魔法乙女~さっさと契約しなさい!~』を起動する。ざっとおでかけを……
「お待たせしました」
いや、待っていないが。流石に、固めにすると早いな。ここのところ太麺が多かったので忘れていたスピード感だ。
ということで慌ててゴ魔乙を終了し、麺に向き合う。
丼の周囲三分の二ほどに沿ってチャーシューがズラリと並び、内側には細ストレート麺。その上には、ネギとメンマ。小皿に盛られた四方のニンニクも一緒だ。
「いただきます」
麺をずるりと。パツパツ固めの麺には豚骨味がよく馴染んでいる。食べ応えは太麺に比べるべくもないが、この食感がなんだか久しぶりで嬉しくなる。
贅沢に盛られたチャーシューは、素朴な豚の旨みで頂くタイプで、麺を包むようにして行くのもまたよし。そこに揚げニンニク。ホクホクに上がっていて塩でニンニクそのものの旨味が味わえる。これ単体で立派な居酒屋メニューになりそうな旨さでありながら、無料。
別皿のキムチで口内に変化を付けつつ、再び麺に戻ると新鮮な味わい。キムチを投入するのもありだが、今日は、そのままの味を楽しもう。
とはいえ、細麺はズルズル行けばあっという間だ。
気がつけば、チャーシューが半分ほど残った状態で麺が尽きた。
が。
「替え玉をお願いします」
と、実は最初に席に用意されていた替え玉無料券を出す。そう、この店は替え玉一回無料なのだ。ありがたい。
そうして、再び麺がやってきて、丼の中が賑やかになる。
スープに馴染ませる前に、席に置かれた塩を軽く振って一口。
「ああ、これは、和え麺で行ける味」
出汁が効いた塩で、これで麺が喰えてしまう。だが、替え玉なのでスープを楽しみたい。
スープに馴染ませ、再びパツパツの麺を楽しむ。流石に、二玉目になると腹に溜まってくる。心地良く、腹の虫が宥められていく。
キムチとニンニクの味わいで変化を付けつつ、豚骨ラーメンを楽しむ。
いいね、こういうのも。
と。
「終わり、か」
キムチもニンニクも含め食い尽くした。スープも勢い飲み干した。
全ての終わり。
最後に、水を一杯飲んで口内を落ち着け。
「ごちそうさん」
店を後にする。
「では、行くか」
さて、どんなラストなのか? 劇場へと、向かう。
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