第304話 大阪市中央区日本橋の塩ラーメン(並ヤサイマシマシニンニクマシマシアブラカラメ魚粉)

「なんだか、疲れたなぁ……」


 ここのところ仕事が俄に忙しくなってしまい、疲れが溜まりがちだ。


 リフレッシュのために、仕事帰りに日本橋オタロード界隈を散策するのもいいかもしれない。


 そう思って、御堂筋線なんば駅に降り立ち南側から出て、オタロード方面へと。


 道具屋筋を少し南下して東へ抜け、そのまま進み、オタロードへと続く細道へ入ったところで。


「あ、3人しか並んでないな……」


 ふと開店直前の店舗が目に入り。


 ふらりと並び。


「よし、今日は塩にしよう」


 食券を買い。


「麺の量は」


「並で」


「ニンニク入れますか」


「ニンニクマシマシで。あと、ヤサイマシマシアブラカラメ魚粉で」


 と、注文を済ませていた。


「はっ! なぜ、気づくとマシマシを頼んでいたんだ?」


 どうやら、疲れを癒やすには何が一番か、考える前に身体が覚えていたらしい。


 いいだろう。こうなれば後は癒やしを待つばかりだ。『ゴシックは魔法乙女~さっさと契約しなさい!~』を起動する。


 現在はハロウィンイベントで乙女達の衣装と属性が入れ替わっているということで、リリーがカモミールとゴシックチェンジして風属性なのである。しかも、乙女ごとのステージでポイントを稼ぐ方式。


 頑張るしかない。


 という訳で、おでかけを手早く仕込んで時間が許す限り出撃していれば、時が経つのは早い。


 注文の品がやってきた。


「うんうん、健康的な佇まいだ」


 黒い丼から円錐状に盛り上がった野菜の山には、アブラとカツオ、そして魚粉。麓には、豚肉塊とタップリのニンニク。


 これが健康的でなくて何が健康的だというのか?


「いただきます」


 まずは、スープを飲む。


「う~ん、豚……」


 塩だけに、こってりした豚の旨みが塩で引き立てられて口内に広がる。醤油のガツンとくる感じもいいが、このスっと広がる旨味もまた、いい。アブラで更に丸みをおびているのか?


 この旨味に浸しながら喰う、カツオと魚粉とアブラでコーティングされた野菜が旨くない筈がない。これなら無限ヤサイだ。


 モリモリヤサイを喰ったところで、スープの中に箸を突き立て麺を引っ張り出す。塩だけに黒ずまず生の色合いの麺肌を頬張れば、塩豚味をしっかり纏って噛めば噛むほど幸せになれる。


 そこに、豚の肉塊で追い駆ければ、少々パサついたところにスープの丸みある出汁を加えて豚豚豚。ああ、豚喰ってるって幸福感。


 そこまで堪能したところで、ニンニクが広がる一体にレンゲを差し入れ、スープに混ぜ込み。ヤサイを押さえて麺を引っ張り出し。ニンニクを馴染ませつつ天地を返す。


「ああ、これは、いい」


 丸みのある旨味にニンニクの刺激が加わり、幸福感がマシマシだ。アブラも全体に広がっているのも、いい仕事をしている。


 麺豚野菜麺豚野菜麺麺豚豚野菜野菜……


 一味胡椒。


 麺麺豚野菜野菜麺麺麺豚野菜麺豚野菜……


 健康を、摂取すれば。


「もう、終わりか」


 豚の旨みを楽しんでいれば、丼に残るのはスープのみ。


 しばしレンゲで名残を惜しみ。


 最後に、水を一杯飲んで未練を断ち切り。


「ごちそうさん」


 店を後にする。


「腹が満たされたし、今度は心を満たしに行くか」


 大好きなモノで溢れる、オタロードへと足を向ける。




 


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