第237話 大阪市浪速区難波中のチャーハンセット(こってり)
弔うのは誰か? 彼方に死地はある。
夢が芽吹いて静寂を破る……
ギリギリのところでごまかしつつ、今日は仕事帰りにゾンビがアイドルになってサガを救うアニメ……と案の定コラボした『ゾンビランド:ダブルタップ』を鑑賞しようと思い立ち、仕事帰りに難波の地に降り立っていた。
とはいえ、映画までの時間は少し余裕がある夕食を先に済ませるのが吉だが。
「おっと、今月末までだったな」
11月も終わろうかという時期。無料券がまだ使っていないのを思い出した。
ならば、決まっている。
御堂筋線なんば駅の南の改札を出て、高島屋方面にいかず南へ直進。エスカレーターを上って道なりに南へ向かい、途中で信号のない横断歩道でタイミングを計って横断。
そのまま更に進み、信号を渡りマクドの左側から高速の下を回り込めば、目的の店がある。
「って、食券になったんだよなぁ……」
未だ慣れない。親切な店員にあれこれ確認して、無料券を割引券として適用してセットメニューも購入可能ということなので、チャーハンセットの食券を購入。
適当なカウンター席について荷物を置いて食券を出す。
が、そこから準備がある。
「ニンニクとネギの量は自分で調整できるようになったのはありがたい」
新たに設置された薬味コーナーから器にネギとおろしにんにくを取ってスタンバイ完了。
後は待つばかりになれば、『ゴシックは魔法乙女~さっさと契約しなさい!~』の時間だ。『NieR:Automata』コラボもクライマックスだが、どうも出撃する時間はなさそうだ。おでかけを仕込んだりしている間に注文の品がやってきた。
「定番、だな」
灰褐色のポタージュスープに中細面とチャーシューメンマ、ネギ。チャーハンは、飾り気のないネギ玉子チャーシュー。
だが、そこに。
「前は最初から入ってたからな」
麺に、ネギとニンニクを入れて混ぜる。
そこから、スタートだ。
「いただきます」
早速、スープを啜る。
「うんうん、これだよ、これ」
この店の個性。最近は、似た系統もあれこれ出てきてはいるが、昔からの伝統のどろり濃厚スープは、やはりいい。麺をずるずる啜って、むさぼるように味わう。否応なく食欲が刺激されたのだ。
ついで、チャーハンを喰えば。
「お、なんか、前より味がしっかりしたような」
これまでは、比較的あっさり目だった印象なのだが、味がしっかりめになっている気がする。気のせいかもしれないが、今、美味しくいただけているのだからこれでいいのだ。
だが、だ。
だからこそ。
「お、紅ショウガもあるじゃないか!」
薬味のコーナーから紅ショウガを適量確保してチャーハンに混ぜれば、さっぱりプラスでいい塩梅だ。
もう、ここからは、難しいことはいい。
個性的なラーメンを味わい、オーソドックスでしっかりした味わいのチャーハンを食す。
途中で、麺に辛みそをプラスして変化をつけ。
ラーメンのたれをチャーハンに掛けたらちょっとしょっからかったりしつつ。
ガツガツと喰う。
気が付けば、チャーハンは空。
麺もなくなり、わずかなスープが残るのみ。
戒めなど知らない。
このスープは、飲み干してなんぼだ。
そこで、気まぐれに今まで一度も掛けたことのない故障を振りかけて最後の数口をいったのだが。
「あ、結構コショウ合うんだな……」
三十年以上喰って今知る新鮮味。
いいんだ。こういうのがあるから、食は楽しいんだ。
などと思っていると、どんぶりも空に。
最後に、水を一杯飲んで一息。
「ごちそうさん」
店を後にする。
「さて、劇場へ向かうか」
飢餓はすでに解き放ったので、尊厳の愚弄は大丈夫だろう。
などとよくわからないことを考えながら、マルイ方面へと。
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