第201話 大阪市東成区東小橋のラーメン(ニンニク多め、ヤサイましまし)
「そうだ、映画行こう!」
所用で休みを取って作業に勤しんでいたのだが、夕方にどうにかケリをつけることに成功していた。
丁度今日は気になっていた映画の上映開始日でもあるからな。
そういう訳で、ポイント鑑賞を利用して贅沢な一時を過ごすべく『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』の IMAX+3D の予約を完了していた。
幼い頃に夢中になったあの怪獣やあの怪獣が、ハリウッド映画で大暴れするのだ。観ないなんて選択肢はない。
気持ちが昂ぶるが、まだ上映まではしばらく時間があった。
そこで、ふと気づいた。
「腹が、減った……」
そういえば、作業に夢中になる余り、昼食は作業の合間にスナック菓子をつまんだ程度だった。そりゃ、空腹だ。
ならば、行きがけに何かを喰って行くのもいいだろう。
「そういえば、新しい店が出来ていたな」
かくして、私は鶴橋駅に降り立っていた。
JRの駅を千日前通り方面に出て、右へ折れて少し。目的の店は、すぐに見つかった。真新しい、小綺麗というか小洒落たというか、そういう店舗だ。
「流石に空いているな」
平日終業時間前の夕方だ。当然だろう。
早速店内に入り、食券機へ向かう。
「つけ麺も気になるが、ここは、ノーマルでいくか」
通常のラーメンの食券を確保し、まっすぐのカウンターだけの店内中程の席に着く。
「好みをどうぞ」
ということなので、座席前に張り出された内容を見つつ。
「ニンニク多め、ヤサイマシマシで」
と注文を済ませる。そう、ここはそれ系の店なのだ。
あとは待つばかり。『ゴシックは魔法乙女~さっさと契約しなさい!』を起動する。現在は、黒罪カルミアのイベント中だ。それよりも、パーティーリリーの確保が最優先だったが、無事に聖霊石500個と引き替えに確定でゲットしていた。
軽くスコアタに挑み、おでかけを仕込んでいると、思いの外早く注文の品がやってきた。
「なんか、つやつやしているなぁ」
インスタ映えを意識しているようで、盛り付けはとても丁寧だ。
ヤサイの山は崩れないように少し周囲に隙間を空けて高く盛られ、頂上にはこれまたゼラチン質のみの見た目の美しい脂が塗されている。麓には、周囲に焦げ目の付いた大ぶりのチャーシューが三枚並び、その隣には山盛りの刻みニンニク。
店の雰囲気にあったマシマシであるな。
「いただきます」
まずは、レンゲでスープを。
「なるほど、上品だな」
豚骨醤油のベースだが、ガツンとくるよりまろやかさを感じる。そこに、シャキシャキのヤサイを浸して食べるのもまたよし。ほどよく掛かった脂も旨味調味料的でギトギトしていない。
チャーシューは、見た目通り、味はしっかり目だけれど、スープがまろやかなので合わせてもくどくない。
「で、麺は……」
太麺だがストレートのこれまたツヤッツヤの麺だ。これはこれでいいな。
そうこうするうちに、ニンニクが段々とスープに溶け込んでパンチを加えてくる。これぐらいで、丁度いいかもしれない。
自然と天地が返り、麺をモリモリ食いながらヤサイとチャーシューを適宜食べ進めていく。とてもすんなり食べられるので、初心者にも安心だな。
だけど。
「流石に薄まったか」
ベースがそこまで塩っ気が強くないので、ヤサイを沈めるとどうしても薄まってしまう。
だけど、ここには座席に色々調味料があるのだ。ラーメンのタレ、一味、魚粉、豆板醤、酢。
まずは魚粉をまぶしてヤサイをいただく。うん、いける。
次は、
「やっぱり豆板醤だよなぁ」
ただ、量を誤ると豆板醤の味しかしなくなるので、匙に大盛一杯程度を丁寧に溶かし込む。ついでに、ベースが薄まっているのでタレも足しておく。
「おお、いいバランスになったな」
豆板醤の風味がプラスされつつ、元の豚骨醤油も感じられる。いいぞ。
そのまま、豆板醤味を楽しんでいく。どうしても、ヤサイで刻一刻と薄まるのでタレを足しながら、するすると胃の腑に収めていく。
すると、あっという間に丼の中が寂しくなってきた。
「最後は、これか」
酢を回しがける。
「さっぱりするなぁ」
ほどよい酸味で、豆板醤などのくどさが消えて、とても口当たりがよくなる。最後に残った麺やらヤサイやらをサルベージしていると。
「もう、終わりか」
呆気なく、赤みを帯びつつ脂が適度に浮いたスープが残るのみ。
レンゲで名残を惜しんでみれば。
「ああ、丁度いい感じだな」
スープ割りで薄めた感じというか、ごくごくいけそうな感じである。
だが、久々に戒めを思い出す。
汝、完飲すべからず。
ここは、ガマンだ。
水を一杯のんでリセット……失敗してレンゲでひと掬い。
気を取り直して、水をもう一杯。
今度こそは、荷物を纏め、席を立ち。
「ごちそうさん」
店を後にした。
「さて、映画を観に行くか」
難波へ向かうべく、千日前線の駅へと向かう。
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