僕とあいつと氷ときせき ~青春フィギュアスケート小説~

作者 宮 都

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★★★ Excellent!!!

負けるな! アイスダンスと出会って、少年はここから滑り出していく

アイススケートは遊びとして好きで、幼なじみの果歩に引っ張られてモミの木リンクで滑っている。
まあまあうまい自信はあって、背は低いけど運動能力は低くないと思っている。
そんな中学生男子、制覇。

帰国子女の転校生、流斗はアイスダンスの選手だったといい、凄まじくうまい滑りで制覇を圧倒する。
闘争心に小さな火が点いた制覇は、ひょんなきっかけからアイスダンスに挑戦することになったが、雑草育ちで先生に習ったこともなく、靴さえ持っていない。
高飛車な先生や嫌味な同世代のスケーターに心を折られそうになったとき、手を差し伸べてくれたのは、アイスダンスのパートナーを探している美少女、陽向だった。


「やるスポーツ」としては馴染みのないフィギュアスケートの中でも、アイスダンスは知名度が低いものです。
主人公である制覇も、最初はアイスダンスの概要すら知らず、練習法やバッチテストのシステム、ステップや要素の名前と、勉強しなければならないことが山積みでした。
作中では、そうしたアイスダンスの基礎が丁寧に解説され、制覇と一緒に競技の世界に入り込むことができます。

また、果歩や流斗をめぐる学校やモミの木リンクの人間模様、陽向を中心とする練習環境での制覇の感情、制覇を見守って協力する家族の言葉など、少年の成長物語としての要素がアイスダンスを身近に引き寄せるのに大きな役割を果たします。

アイスダンスといえば、『キス&ネバークライ』という女性向け漫画がありました。
ヒロインの過去やミステリーの要素を苦手に感じましたが、アイスダンスを知ったのはあの作品がきっかけでした。
『僕とあいつと氷ときせき』は爽やかで読みやすく、本編終了後の彼らの活躍が気になります。

僕自身、フィギュアスケートの話を商用のティーンズラブとして書いたことがありますが、氷上での動きの描写は本当に難しく、専門的な知識やスケートの経験を必要とします(僕は要素の説明を断念して「演技の表現に行き詰っている」という葛藤を描くことで切り抜けました)。
作者様のアイスダンスにかける情熱が一文一文から伝わってくるようで、脱帽しました。