第11話「結局は……」
ひと夜のうちに、鋼鉄製の立派な門が《王国砦払い下げの中古だが……》据えられ、門番がライフワークだと公言するガストンさんが気に入った物見やぐらの土台も出来た。
夜が明けて、農作業に出た村民達もびっくり。
「ボヌール村は大騒ぎさ!」の状態となっていた。
でも……
しばらくの間、新門は開閉される事はない。
開け放たれたまま、旧門を使い続ける事となる。
何故なら、仕上げをしてくれる石工軍団さんが、
エモシオンのオベール城壁と街壁の工事にかかりっきりだからだ。
ふたつの工事が終了後、石工の親方が魔法鳩便で連絡をくれる事となっている。
と、いう事でその間、こちらはこちらで進められる事をやっておく。
まずは、1km四方先へ延長した事で拡大されたボヌール村敷地の利用法、
及び割り振りである。
農地、宅地、その他となるだろうが、村民達の希望を聞きたいと考えたのである。
ちなみに、公衆浴場――銭湯もこの地の一画に建築しようと考えていた。
また、丁度よい頃合いだと思ったので、村内会議のメンバーの再考と方法も変更した。
現在、村内会議のメンバーはほぼウチの家族のみ。
しかしボヌール村の将来の為には宜しくない。
なのでズバリ!
ユウキ家カラーを薄めようと決めた。
元々、第一夫人リゼットの実家ブランシュ家が村長を何代か担った家柄の為、
ユウキ家が引き継いで村の運営管理をやっているが、世襲ではない。
なので村長選挙を行っても構わない。
但し、どこぞの政治家と違い、ボヌール村の村長以下の役職には、
そこまで利権はない。
村長及びスタッフの報酬は日本円にして、月額1万円から2万円の程度のお小遣いレベル。
本業――農業等をこなしながら務めているから、却って、手間と苦労が多い。
なので、村民達には、俺が私が村長になりたいという執着はない。
名誉欲、権勢欲というものが希薄なのだ。
しかし、古参の村民は勿論、アンリとエマ夫婦、家族を得たデュプレ3兄弟など……
新参の村民も、このボヌール村を良くして行きたいと思う者は大勢居る。
俺はそう信じている。
なので、まずは村民達へ、オープンな村内会議開催を告示した。
参加者について、ヴァレンタイン王国成人の16歳以上を条件とし……
自主的な立候補を受け付け、続いて他薦も可能とした。
不参加の者は委任状を提出して貰う事となった。
そして俺の構想。
最初のみ、オベール家宰相の俺、村長のリゼット、そしてクッカ以下嫁ズ全員が参加。
以降は、俺とリゼットはレギュラー参加で、他の嫁ズは議題によって、
臨機応変に参加者を決めるつもりだ。
……と思っていたが、村内会議の当日、意外な事となったのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
という事で、自ら名乗り出た者達を交え……
休日の学校で新・村営会議が開催された。
しかし集まったメンバーは、俺、嫁ズ以外には、
アンリ、エマ夫妻と、アベル、アレクシ、アンセルムのデュプレ3兄弟、
そしてマチルドさんの6名のみであった。
6人以外の成人村民は……全員が委任状を提出して来たのである。
これには……俺も嫁ズも、がっくりだ。
互いに意見を出し合い、協力して、村を発展させようとする気持ちがないとはいえないが、弱いのだろうかと……
しかし、俺達家族以外の6名の参加者は……
全員が「委任状提出も致し方ない」という、反応であった。
どうして多くの村民が委任状を出したのか?
それは……
「ケン様、これまでお出しになった実績が抜きんでいますし、現状も全てが上手く行くどころか、行き過ぎているからですよ」
「ええ、夫の言う通りですわ。ユウキ家の仕切りで、オベール家とはとても折り合いが良く、ボヌール村はどんどん発展し、生活レベルも凄く上がっていますから」
と苦笑するアンリ、エマ夫婦。
「はい、アンリ夫婦の言う通りで、馬は馬方 って、……事です」
「はい、蛇の道は蛇……ですね」
「つまり、結局大多数の村民達は、何事においても、オベール家宰相であるケン様と、代々村長を務めていらしたブランシュ家の娘であるリゼット様にお任せするのが一番良いと判断したのです」
と、相変わらず無表情のアベル、アレクシ、アンセルムのデュプレ3兄弟。
そして、マチルドさんも。
「私達6人も同じですよ。宰相レイモン様ともご懇意にされているケン様と奥様達の実力と血縁、人間関係等々を考えると、村内の事も、対外的な事も、ユウキ家にお任せした方が宜しいと思います」
それに……とマチルドさんは更に言う。
「私のように、ボヌール村へ移住して来たばかりだと、村の運営に参加するという事よりも村での人間関係を構築させ、つまり立ち位置を作る事を、そして生きて行く為、生活の
マチルドさんがそう言うと、6名全員が頷いた。
でもなあ……
ロジックは確かに理解出来る。
けれど、「全部お任せします」なんて、これじゃあ思考停止じゃないのかなあ……
考え悩む俺であったが……
傍らに居たリゼットも笑顔で……
「旦那様、これは村民の総意です。理由はいちいち納得出来ますし、マチルドさんのおっしゃる移住したての村民の事情は尤もです」
「まあ、確かに……俺もボヌール村へ来たばっかりの頃は、立ち位置固めを優先していたものなあ……分かった。とりあえず俺達で取り決めをして、村を運営して行くか!」
「そうですよ! だから、良い方向に考えましょう。現状でベストなのは私達が村を運営する事。委任状はこの場に出席していない村民全から受け取っています。この場の、19人全員で意見を交換し合い、動かして行くのが宜しいと思います」
するとクッカ以下の嫁ズも、
「「「「「「「リゼットに賛成!」」」」」」」」
と唱和し……
結局、村内会議は当分の間……
俺と嫁ズの13名と、カミングアウトして、内々の事情を知る、
6名の仲間計19名で動かして行く事となったのである。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます