第13話「特別研修、勇者に同行③」
クーガー、サキ、ロヴィーサ、フィオナと一旦別れ、西の森奥へ踏み入った俺。
この森は相変わらずゴブリンが多かった。
これは俺が転生し、この異世界へ来た時から変わらない。
その数、ざっと数百体……
しかし俺の敵ではない。
Sレベルの剣技に無敵の天界拳、そして至高の魔法。
徹底無双した俺は、いつものように
これでとりあえず、この森における任務は完了。
時間もないから、次の任務地、東の森へと向かう。
俺は、念話でクーガーへ呼びかける
『お~い、今、終わった。ゴブリンをバッチリ狩った。そっちは異常なしかな?』
俺の呼びかけに対し、即座にクーガーから返事が戻って来る。
『お疲れ様。異常なしよ! 私達3人は当然無事。そしてこっちもバッチリ、作業をしながら、ロヴィーサへほぼ事情を話したわ。ついでにサキも一緒にね』
『おお、そうか』
『サキは、ふるさと勇者イコール旦那様の活躍を改めて聞き、おおって、喜んでた。ロヴィーサは素直に納得してくれたよ。というか、逆に、反省し過ぎて恐縮しちゃった』
『ロヴィーサは反省し過ぎて恐縮か……目に浮かぶな』
『うふふ、世間知らずでごめんなさいの連発よ。戻ったら、旦那様からケアしてあげて』
『了解』
と、いう事で俺はすかさず転移魔法を使い、3人とフィオナが待つハーブ園へ戻った。
ハーブ園は明るかった。
俺が呼び出した魔導煌が、文字通り
灯りの中に、3人の女子と馬が一頭立っていた。
笑顔のクーガー、手をぶんぶん振るサキ、馬に擬態したグリフォン女子、護衛役のフィオナ。
そして口をへの字にし、今にも泣きそうなロヴィーサである。
「お~い、お疲れぇ!」
俺が声を張り上げると、それがまるで合図のように……
「うわあああああああああん! ケン様ぁあ!! ご、ごめんなさ~~いっっ!!」
何と!
ロヴィーサは号泣してしまったのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
号泣したロヴィーサを何とかなだめ、俺達は東の森へ……
ここは西の森と違い、オーガが多く、一番奥に広大な湖がある。
一旦、森の入り口に到着した俺達は、間を置かず湖へ……
先ほどのハーブ園と同じく、ここで3人プラス一頭にスタンバイして貰う。
夜の湖は、真っ暗闇。
昼間だと陽の光が反射して、水面が綺麗なのに何も見えない。
俺は再び、魔法煌を呼び出し、灯りを点けた。
索敵を発動する。
「ええっと、森の中にオーガの気配を感じる。そうだな、100体を少し切るくらいだな」
「うん、それくらいだね」
俺とクーガーの会話を聞き、サキは感嘆する。
「わあ! さっすが! 旦那様とクーガー姉は、はっきり分かるんだ。私は何となくオーガが居るくらいしか感じられない。よっし! 未熟者は修行頑張らなきゃ!」
「わ、私もサキと同じです……駄目ですね」
ここでも性格の差が出る。
ロヴィーサの実力も見えて来た。
全てをすり合わせしたわけではないが、索敵のレベルはサキとどっこいどっこい。
ハッキリ言って見習いレベルだ。
だけど前向きなサキに比べ、ロヴィーサのコメントはとことんネガティブである。
「ふたりとも、まだスタート地点からそんなに進んでないだろ。これからさ」
「わお! 元気出て来た! いい事言う。さっすが旦那様」
「これから……ですよね?」
「村には俺、クーガーにクッカ、そしてベアーテも加わって、上級魔法使いが4人も居る。王都の魔法女子学園よりも、めぐまれた修行環境だろ」
「いえぃ、いえぃ! その通り! サキも頑張って上級魔法使いになるっ!」
「わ、私も! が、頑張ります!」
おお!
いい感じだ。
やはりサキがロヴィーサを引っ張ってる。
ロヴィーサはサキを良きライバルとして見ている。
競い合う存在として、大いに刺激としているんだ。
これで今後の作戦は、完全に見えた。
そして決まった。
サキを煽りつつ、やる気を出させ、ロヴィーサにライバル心を燃やして貰う。
そして魔法使いとして、更に秘書として、否、全てにおいてもふたりに成長して貰う。
そんな俺の思惑にクーガーも気付いたようである。
ウインクして、俺へ言う。
「さあ! 旦那様! 後は私とフィオナに任せて! とっととオーガ狩りへ行ってらっしゃい!」
するとサキも、
「旦那様! 気を付けて! クーガー姉と修行しながら待ってるよ!」
となれば、ロヴィーサも当然引っ張られ、コメントも前向きとなる。
「ケン様! 私は早く一人前になるよう頑張ります! お気を付けて!」
ああ、良かった。
今夜ふたりを連れて来て、本当に良かった!
クーガー、同行の提案してくれてナイス!
「おし! 行って来る! 何かあったらすぐ念話で報せてくれ!」
今度は俺がクーガーへ、お礼のウインク。
すかさず転移魔法で、森の奥へ向かったのである。
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