第15話「4者会談開催!⑥」

『次の議題は情報の共有に関してです。今回最大の懸案事項である悪魔侵攻対策の議題と併せて協議したいと思います』


『いよいよ本題か……』と、オベロン様

『メフィストフェレスめ! あの嫌味な顔を思い出す度、ぶっ飛ばしてやりたくなる!』と、イルマリ様

『悪魔の侵攻か……私が見た夢のように壮絶なものとなるのだろうか?』と、不安げなレイモン様。


 このレイモン様のひと言が、イルマリ様には気になったらしい。

 何か、話すタイミングを待っていたようなフシもあった。

 おずおずと質問する。


『レ、レイモン……殿、あ、貴方が見た夢とは、一体どのようなものなのか?』


 以前、俺が明かした半生、秘密は今回共有しても構わないと全員へ伝えてある。

 なので、レイモン様はあっさり答える。


『はい、イルマリ様。私の見た夢とは管理神様が見せてくれた神託であり、内容はケンの半生です』


『な? ケンの半生?』


『ええ、私が特に印象に残っているのは、現在は彼の奥様である魔王クーガーとの戦いなのです』


『魔王クーガー……今はケンの妻か。話はちらと聞いていたが、そんなに壮絶だったのか?』


『ええ、魔王クーガーは麾下の全軍で地上へ、我が王国ボヌール村の近郊へ侵攻しました。悪魔、ドラゴン、オーガ、ゴブリンの混成部隊から構成され、総数は約11万です』


『はあ!? じゅ、じゅ、11万だとぉ!? ば、バカな!』


 想定外の大軍を告げられ、驚愕するイルマリ様。

 しかし、レイモン様は臆せずきっぱり。


『確かです。数えたわけではありませんが……』


『な、ならば、何故? 何故分かる?』


『管理神様のご神託ですから。直接私へはっきり仰いました。ちなみに11万の敵軍に対し、ケンはたった5人で戦いました』


『はあ!? ご、5人!? 11万にたった5人!!』


 イルマリ様は、驚愕の連続……

 と、ここでオベロン様のフォローが入る。


『イルマリ!』


『は、はは! オベロン様!』


『その話は確かだ。レイモン殿の言う通りさ。私も管理神様から直接お聞きした』


『な? 管理神様から直接……むむむ……ケン、何故もっと詳しく教えてくれなかった!』


 おっと!

 矛先ほこさきがこちらへ来た。

 イルマリ様は、自分だけ知らなかったという事実が悔しいに違いない。


『すみません、イルマリ様。俺の半生はいろいろあって、やたら長い話になるので……』


『構わない! 今度じっくり聞かせてくれ!』

 

『了解です!』


 という前振りがあり、話し合いはようやく始まった。

 まず俺が口火を切る。


『皆様、戦いとは……軍の強さは勿論なのですが、情報戦の優劣が全てを制すると言って過言ではないでしょう』


『情報戦……成る程』

『どういう事だ、ケン。単純に兵の強さではないのかな?』

『いや、ケンの言う通りかもしれませんぞ』


 という3人の反応。


『実際、俺が寡兵でクーガーの軍勢を打ち破る事が出来たのも、事前の情報を分析し、思い切った作戦を取ったからです。まあ最後はピンチに陥り、管理神様に助けて頂きましたが……』


『『『…………』』』


『話を戻しましょう。魔王軍がいつ侵攻するのか? どこに現れるのか? 軍勢はどのような構成で、いかほどの数なのか? そして最も重要なのは魔王の意図です』


『魔王め、私達の肉体ごと魂を欲しているのではないか?』

『むうう、だとしたら私達は単なる食料か! おぞましい!』

『魔界だけでは満足出来ず、版図を広げたいのではないか?』


『ええ、皆さんが仰る通り、いろいろな可能性が考えられます。魔王の考えにより、戦い方が変わって来るでしょうから』


『確かにそうだ!』

『情報は大事だな』

『悪魔対策は確かに必要だが、財政の問題もあるし、出来れば効率良く対処したい』


『ここで俺から提案があります。情報の共有と伝達方法です。これは悪魔対策だけではなく全ての政策につながります』


『ケン、頼む!』

『ぜひお願いしたい』

『私達も全面協力する』


『情報の伝達方法ですが……俺が作ったホットライン的な特製の魔法水晶を配布します。この魔法水晶を各自の執務室に設置するんです』


『『『…………』』』


『この魔法水晶は、通常は透明ですが、何か起こった際、5段階の色に変化し、危険度が最も高い、緊急事態の時は真紅となります』


『『『成る程!』』』


『通常連絡も可能でして、魔法水晶に手を触れ、心で相手をイメージすれば、誰でも念話を使う事が可能です』


『『『素晴らしい!』』』


『情報の発信は、管理神様から来たモノは俺から皆様へ、オベロン様から来たモノも俺経由で、皆様へ間を置かずに念話でお流しします。但し緊急の際は、その限りではありません。直接やりとりして頂いて、結構です』


『『『了解!』』』


『情報元ですが……天界、アヴァロン発信以外に、猫のネットワークも考えています。俺の従士に妖精猫ケット・シーのリーダーがおります。なので、世界中の家猫&野良猫が目に耳にした内容を必要があれば発信します。当然イルマリ様、レイモン様からの情報も大歓迎ですし、経済活動にも反映出来たらと思っております』


『よし! どんどん情報交換を行おう!』

『うむ! 商品の情報も積極的に!』

『もしも天候などの予報も可能なら、ありがたいな!』


 というわけで……

 その後もいくつかの議題が出され、話し合いが行われ……

 会議は無事終了した。


 その後は、お待ちかねお楽しみ、全員で懇親を兼ねた食事会。

 形式は茶の湯方式……


 俺とアテンド女子クラリス、アマンダ、タバサが、

 接待役として、首脳達をもてなすという形をとった。


 共に食事をすれば……

 それも和やかに美味しい食事をすれば、確実に心の距離は縮まる。

 結果……わだかまりは解消され、ぎこちなさもなくなり……

 他愛のない話題で盛り上がる。


 こうして……

 種族を超えた4者会談は、大きな成果を見せたのである。

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