ユウキ家の親子面談編

第1話「子供達の進路相談をしよう」

 アマンダの兄アウグストが婚約者のノーラさんとエモシオンへ旅立ち、レミネン商会の『仮営業所』をオープンして既に1か月が経った。


 『最後の協力』として、俺が転移魔法でふたりをエモシオンへ瞬時に送り、

 オベール様とイザベルさんへふたりを紹介。

 いろいろとお願いしておいた。


 少し経ってからすぐ、アウグストとノーラから、

 魔法鳩便でお礼の便りがあった。


 その後も何度か便りがあり、いろいろと問題は生じながらも、

 ふたりで助け合いながら、何とかやっているようだ。


 とりあえず安堵した俺とアマンダであったが……

 ボヌール村の我がユウキ家には全く別の新たな問題が持ち上がった。


 かと言って、例の悪魔侵略とかいう、深刻な事案ではない。

 だけど、ユウキ家の未来、そして家族の夢が絡んだ複雑且つ微妙な問題なのである。


 大仰な言い方となったが、この問題が起こった原因は、

 俺と長女タバサが実施した『卒業旅行』である。


 表向きは王都だけの旅、実は妖精の国アヴァロンも含んだ壮大な大旅行となり、

 大人への階段を上るタバサの成長に大きな影響を与えた。


 こう言えば、お分かりになった方も居るだろう。

 そう、今回起こったのは、タバサ以外の我が子達の進路問題なのである。


 念の為、我が子達はまだまだ幼い。

 タバサが長女で8歳。

 長男レオと次男イーサン、次女シャルロットが追っかけ同じ8歳になったばかり。

 続いて1歳違い、7歳組のフラヴィ、ララ、ポールと続くのである。


 グレースの子ベルティーユはまだ2歳になったばかりだし、先日レベッカが産んだアンジュとロランはまだ完全に赤ん坊。


 今回の問題が到来するのはまだまだ先。

 母親達と、先々の夢を語るくらいのレベル。


 話を戻そう。


 前世なら、遊びたい盛りの子供達なのだが……

 俺の居る異世界は、子供の頃から仕事をして大人になるのが早い傾向がある。

 結婚も16歳からOKだし。


 まずレオ達だが、王都という外の世界を見たタバサが羨ましかったらしいのだ。

 そしてクーガー達母親も、タバサの急速な成長を見て大いに刺激を受けたらしい。


 結果……

 子供達から、現状の希望、つまり将来への夢を聞いて、

 何か手助け出来ないかという趣旨である。


 レオを始め、誰かをすぐ王都へ連れて行くという事は難しいが……

 とりあえず個別の相談を行う事にした。


 つまり俺の前世であった両親同伴の、

 いわゆる進路相談を行う事としたのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 善は急げと言う。

 

 更に俺は嫁ズと相談。

 スケジュール調整もついた。

 話はとんとん拍子に進み、早速今夜から『親子面談』を行う事と相成った。


 ちなみに進路のアドバイスをする教師役は俺が務める。

 まあ、教師役とはいっても、基本は聞き役だけど。


 この『親子面談』を行う前に各自母子で下打合せも行われた。


 ちなみにこの『下打合せ』も、これから行う『本番』も子供の希望を最も尊重し、強制させる事は絶対なしと嫁ズ、つまり母親達には約束して貰った。


 さてさて!

 子供達からは、どのような話が出て来るだろう。

 俺は期待半分、心配半分であり、嫁ズも同じ気持ちらしい。


 面談の順番は不公平のないよう本人達のくじ引き。

 いつもは生まれた順、つまり年上の子から、対応していくが、

 今回は特別。

 何の仕掛けもない、フェアなくじ引き。


 重ねて言ったのは、あくまでもフェアなくじ引きだったが……

 引きが強いと言うか、しょっぱなの相談者は、

 偶然にも長男のレオとクーガーというペアになった。


 レオは相変わらず、頻繁に鍛冶場へ顔を出して、俺の作業、

 ナイフの刃づくりを飽きもせず、見学していた。


 あ、そうそう。

 俺は子供も母親も心は読まない。


 そこまでして本音を探ろうとは思わないし、

 長い付き合いだから、スキルを使わずとも気持ちが理解出来るのだ。


 ちなみに面談場所は、俺の私室とした。

 

 そうこうしているうちに約束した時間となった。


 とんとんとん!


 リズミカルにノックがされた。

 これはレオではなく、クーガー。

 俺はノックの癖まで憶えている。


「入ってください」


 俺が入室を了解すると、

 扉がゆっくりと開いた。


 そしていつもの通り、泰然自若のクーガーと、

 やや緊張気味のレオが入って来たのである。

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