第22話「奇跡の再会、奇跡の邂逅①」

 俺は、クラリスと話した翌日から……

 彼女と相談して、『サプライズ』の段取りを組んで行った。

 当然、他の嫁ズやお子様軍団には一切秘密にして……


 ざっくり聞いたら……

 描いた絵を見せて、俺と嫁ズを驚かせる事らしいのは分かった。

 まあ、ほぼ予想通りである。

 但し、肝心の絵の内容は、手伝う俺でさえ教えては貰えなかった。


 そんなこんなで、俺と話してから1週間後……準備は整った。

 新作の絵を描き始めてから、丁度3週間。

 遂に、クラリスの『サプライズ』は、お披露目となったのである。


 結局、お披露目のタイミングは夜となった……

 まあ仕方がない。

 昼間だと全員仕事で忙しいし、突然の来客もある。

 お子様軍団も元気に活動中だしね。


 うん! そうなんだ。

 可哀そうだけど……今回の企画はまだ、子供達には内緒だって。

 クラリスの希望で、今回はとりあえず『嫁ズだけへのサプライズ』というになった。


 という事で、魔法も使ってお子様軍団を完全に寝かしつけ……

 俺と嫁ズは全員集合した。

 こっそり、俺の私室へね。


 唯一の例外として……

 お子様軍団のうち、末っ子のベルティーユだけは、グレースの胸に抱かれ、この場に居た。

 まあ、赤ん坊のベルを放置するなど出来ないから。


 母グレースに抱かれたベルは、当然起きてなどいない。

 「すやすや」と、天使のような寝顔でぐっすりと眠っていた。

 

 もうお分かりだろう。

 他の子同様……

 起きないように……グレースの了解を得て、ベルにも睡眠の魔法をかけてあるのだ。

 ちなみに、部屋全体にも防音の魔法もかけてあるから、多少大きな声を出しても安心だ。


 さてさて、話を戻そう!


 俺と嫁ズが注目する壁には……

 何と!

 2枚の絵が掲げられている。

 

 1枚は70㎝×70㎝くらい、もう1枚は更に大きくて1m×1mもあった。

 この2枚の絵、まともに運ぶと結構目立つから、俺の転移魔法でひそかにアトリエから運び込んだのである。


 両方の絵は白布で覆われ、まだ内容は分からない。

 覆われた2枚の絵を見て、俺は素直に感動してしまう。


 クラリス、お前、たった3週間でこんなに大きな絵を、2枚も描いたんだ。

 家事は勿論、農作業とか、他の仕事をしながらも。

 俺は彼女を、褒めてあげたい。

 凄く頑張ったな……偉いぞって。

 

 頑張り屋の、クラリスが誇らしい。

 俺には勿体ない、最高の嫁だって、あちこちへ自慢したい。


 まあ、俺の嫁は……全員が最高なんだけどね。


 え?

 爆発しろ?

 ですよね、済みません。


 という事で早速、クラリスが2枚の絵の前に立ち、話し始める。


「今回はいろいろとご迷惑をおかけしました。こそこそしてしまって」


 クラリスの謝罪に対し、一番最初に返したのは、やはりリゼットである。


「大丈夫です。家族を思うクラリスの気持ちは全員分かっていますから」


 他の嫁ズも何か言いたい事が、聞きたい事があったやもしれない。

 でもリゼットがこう言えば、全員が納得したようだ。


 そんなリゼットの心遣いを、クラリスも感じたらしい。


「ありがとう、リゼット。申し訳ありませんが……絵を見せる前に、少しだけお話しさせて下さい。皆さん、レイモン様の話は覚えていますよね?」


 クラリスの問い掛けに対し、嫁ズ全員、頷いた。


 レイモン様の話は、先日聞いたばかり。

 最初は、嫁ズ全員が吃驚した。

 まさかクラリスの絵の上得意が、王様の実弟、レイモン宰相だったなんてと。


 愛する奥様がお亡くなりになった話を聞いて、全員レイモン様に同情した。


 そしてレイモン様が力強く復活して立ち直り、固く決意した事も……

 素晴らしい話だと、全員が感じた筈だ。

 俺達の家族クラリスの描いた、たった一枚の絵が……

 絶望に陥った、この国の宰相の心を救ったのだから。


 クラリスは言う。

 少しだけ照れて……


「レイモン様から丁寧にお礼を言われ、私はとても感激しました」


「…………」


「私の描いた絵が、レイモン様のお役に立てたのをお聞きして、凄く嬉しかった。だから今度は……家族の為になる絵を描きたくなったのです」


「…………」


「まず1枚目の絵、付けたタイトルは……奇跡の邂逅です」


 クラリスは、やや小さい方の絵を指さした。


「奇跡の邂逅?」


 タイトルを聞いたリゼットが、少し?マークを出して返せば、クラリスは即座に答える。


「はい! 邂逅とは偶然の出会いの事、つまり巡り合いです。この世界に生きる私達と、異世界から転生して来た旦那様の出会いは、まさに巡り合い……そして奇跡と言って構わないでしょう」


「…………」


「今回描いた絵は……実は、『シリーズもの』です。そして、一番最初の絵なのです」


「…………」


「絵の趣旨ですが……」


「…………」


「……私は……妻全員から聞いた、旦那様との運命的な出会いを、私のイメージを加えて、描き上げたいと思いました」


「え? 私達と旦那様との出会い?」

「それって?」

「もしや!」

「まさか!」


 嫁ズの気持ちが、『ひとつの方向』へと向き出した。

 彼女達の想像が、考えている事がピタリと重なって来る。


 当然ながら俺も、クラリスの意図がようやく見えて来たのであった。

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