第129話 「俺の故郷へおいでよ」

 ソフィことステファニーが、父親のオベール様と感動の再会をして……

 早や1ヵ月あまり。

 

 16歳の誕生日を迎えた俺は、ようやく7人の嫁ズと、結婚式を挙げる事となった。

 とはいえ、俺が生きていた前世の、イベント等に凝った結婚式とはまるで違う。

 地味な田舎の地味な村の結婚式だから、けして派手ではない。 

 しかし、村の領主として招待したオベール様の、粋なはからいがあった。

 

 御祝い金を貰ったのと……

 エモシオンの町から、司祭ひとりと数人の楽隊が派遣され、村はお祭り騒ぎとなったのだ。


 村民が着ている服は、『お祝い着』として配ったクラリスの力作。

 まるで、たくさんの花が咲き乱れているようにカラフルだ。

 独特な音色のオルガンが鳴り響く中、老齢の司祭がおごそかな声で質問をする。


なんじ、夫ケンは7人の妻へ変わらぬ愛を注ぐ事を誓いますか?」


 司祭の問い掛けに対して、俺は「ここぞ!」とばかりの大きな声で返してやる。


「誓います!」


 村中にオルガンの音色と同じ位、俺の大声が響き渡った。

 ここでしっかり、『愛の約束』をしておかないと、後で嫁ズから非難ごうごう怒られるのは必定だから。


 次に、司祭は嫁ズへ問い掛ける。


「リゼット、クッカ、クーガー、レベッカ、ミシェル、ソフィ、クラリス、そなた達妻は夫ケンに変わらぬ愛を注ぐ事を誓いますか?」


「「「「「「「はい! 誓います!」」」」」」」


 嫁ズも元気良く返事をしたところで、村中が大きな歓声と拍手に包まれた。

 ジョエルさんも、フロランスさんも、ガストンさんも、ジャコブさんも……

 老若男女、村民の皆が喜んでいる。


「あれ?」


 俺はふと、オベール様が気になった。

 何故か、やたらにミシェルの母イザベルさんと寄り添っているのだ。

 かたわらのイザベルさんも、満更ではないらしい。


 そういえば……

 オベール様はステファニーと再会した後、大空屋でずっとイザベルさんと話し込んでいたっけ。

 

 村の人で、嫁ズ以外に俺の秘密をある程度知っているのは、イザベルさんだけである。

 オベール様とは、娘が旅立つ寂しさを話しているうち……

 パートナーと死に別れた同じ境遇の片親同士、意気投合したらしかった。

 ソフィによれば、イザベルさんは亡くなったステファニーのお母さんに、どことなく似ているという。


 それ以来、数回ボヌール村へ遊びに来ていたのだ、オベール様。

 ステファニーに会う口実の筈なのに、何とイザベルさんと話して行く時間の方が多いという怪しさである。


 まあ良い。

 娘のミシェルもイザベルさんを応援しているようだし、皆が幸せになって欲しい。


 俺は祝福されながら、そう考えていた。

 そんなこんなで……

 村はもっともっと、『どんちゃん騒ぎ』になって行った。


 でも、凄かった!

 何が凄いって?


 うん!

 ボヌール村の結婚式って、超が付くほど楽しいんだ。

 村民全員が思いっきり、飲み、食い、歌い、踊る。

 

 前世の結婚式って……

 俺も子供の時に出席した事があるけど殆ど儀式じゃない。

 

 だけど俺が挙げた結婚式は、もろお祭り。

 大人も子供も心から喜ぶ、何と言うか、心身が解放されるような雰囲気がある。

 

 俺は傍らの嫁ズを見て改めて誓う。

 彼女達を愛し、俺は大人になる。

 そして全員で幸せになるのだと。


 結婚式があった日……

 ボヌール村は、俺が来てから一番のにぎやかさであった。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 そして月日は、更に流れ……

 俺が結婚して……

 約2年が経った。


 相変わらずボヌール村は、変哲のない日々が続き、何事もなく平和である。

 

 リゼットのハーブ園は、「そこそこ」大きくなった。

 あまり大きくすると、目立つから地道にやっているのだ。

 クッカとクラリスも、大好きなハーブに囲まれ楽しそうに働いている。


 クーガーとレベッカの武闘派コンビは、俺と共に森で新鮮な獲物を狩って来る。

 俺の提案で採用した氷室の効用もプラスして、村の食生活事情はだいぶ良くなった。

 

 治安面でも俺と従士の力が加わって、ゴブやオーク、オーガはこの地方からとりあえず姿を消した。

 天敵が消えたその分、狩猟対象の猪や鹿、兎が増えたから万々歳であった。

 注意するのは肉食獣の狼、熊くらいとなっている。


 だけど魔物って、クッカとクーガー曰く異界からどんどん湧いて来るらしい。

 なので、また増えるのは確実だろうけど。


 ミシェルと、ソフィは大空屋をメインに仕事をするようになった。

 クラリスが作る服もだいぶ普及して、村の雰囲気も明るい。


 こうしてボヌール村が「のびのび」やれているのもソフィの父、領主オベール様が村の自主性を認めてくれたからである。

 

 そのオベール様だが、やはり!

 ミシェル母のイザベルさんと結婚した。

 

 何と、俺が結婚したすぐ後に!

 それも側室じゃなく、『正妻』として平民のイザベルさんを迎えたから誠実さパーフェクトだ。

 

 王都の貴族と違って、オベール様は地方の騎士爵。

 だから貴族とはいえ、平民との結婚に融通もきいたらしい。

 噂では、年齢を感じさせない「アツアツぶり」のふたりだそうで、羨ましい限りである。

 

 ミシェル、ソフィと俺の3人でたまにエモシオンの町へ『仕入れ』に行く。

 イザベルさんへの顔見せ、ソフィの里帰りも兼ねていて、オベール様もご機嫌である。


 そのエモシオンの町も、最近はお祝いムード。

 

 オベール様とイザベルさん夫婦に男の子が生まれたのだ。

 フィリップと名付けられた元気な男の子で、彼がオベール家の跡取りとなる。

 ミシェル、ソフィの弟となり、次代の治世も平和になるだろう。


 え、俺にはって?

 えへへ、今迄言わなかったのに鋭いね!

 よければ、おめでとうと言ってくれ。

 

 俺にも、子供が4人も出来たよ。

 クッカとミシェルに女の子、クーガーとレベッカに男の子の4人だ。

 

 全員が安産、元気に生まれてすくすく育っている。

 いろいろ経験して、子供の世話って、ここまで大変なのだと初めて知った。

 

 でも!

 やっぱり、子供って可愛い!

 リゼットも最近妊娠したし、ソフィとクラリスも時間の問題みたい。


 え?

 何故、子供が出来るのが分かるかって?


 俺のスキルには、予知もあったみたい。

 それによれば、不幸の予感はしないんだ。

 今の所は、『多分』だけどね……

 管理神様もそう、予言してくれたから。

 

 でも油断はしない。

 今の幸せを、絶対に壊したくないから。


 うん!

 話を戻そう。

 まあ、ボヌール村の暮らしって、肉体労働が基本だからきつい。

 それに自然が相手だと、天気や作物の出来、狩りの獲物など不確定要素も多い。

 

 だけど!

 少々辛い事があったって、家族全員で乗り切って行ける。

 

 加えて、頼りになるのは実の身内だけじゃない。

 村民全員が家族!

 それがこのボヌール村の良さなんだ。

 

 前世で本当の故郷ふるさとに帰る事は、結局出来なかったけど……

 クミカにも嫁ズにも巡り会えたこの俺の、新しい第二のふるさと……

 すっごく、いいっしょ!


 ここで村長見習いの俺としては、村のアピールをしておこう。


 そこの貴方! 

 まじめに働くのなら、異世界転生してボヌール村へ来てみない?

 最近は、村から出て行った美少女達も戻って来ていて、またまた男不足なんだ。

 貴方の人柄と実力次第で、ハーレムもOKだよ!

 

 ええっと、当然、女性も大歓迎さ!

 そこの貴女!

 男の村民も増えれば、オベール様へ申請して逆ハーレムもありかもしれない。

 どう?

 イケメン集めて、夢の国とか?


 まあ平和にのんびり暮らしたい人なら、全員ウエルカム!

 いざとなれば、俺がレベル99の力でバッチリ助けるし(内緒だぜ)。


 待ってるからね!

 じゃあ、またっ!


 ※本編の『ど新人女神編』はこれで終了です。

 次話からは主人公が結婚後の続編になります。

 

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