13「過去4」
「すい」
「へー」
「りー」
「べー」
廊下を歩きながら、二人の少女が音程をつけて歌っている。
「僕の船」
「唯、それで一つじゃないよー」
「知ってるよ、それくらい」
唯が頭の中で原子配列表を思い浮かべる。
階段を上がり、木の板で出来た廊下を突き当りまで進んで行く。左側にはクラス教室が、右側には特別教室が互いに牽制をしているように向かい合っている。
「ん、どうしたの?」
足を止めた美咲に唯が首を傾げた。
その唯に、美咲はいつもと同じ柔らかい表情で答える。
「用事。先に行っていて、ね」
美咲はそれだけを言って、唯が返すよりも前に元来た廊下を戻り始めた。
「美咲、どこに?」
背中を向けたまま、美咲は右手を上げてひらひらと振る。
普段通りに彼女に、普段通りだからこそ違和感を持ちつつも、唯は歩き始める。
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