第17話

次の日。奥苗は比空と共にまた登校し、教室で久住佑が現れるのを待っていた。

 久住が現れると、無理矢理腕を掴んで廊下に連れ出す。

「なにすんだよ」

 久住は怒りの表情で奥苗の手を振り払った。

「お前に訊きたいことがあんだよ」

「は? 綾瀬真麻のことか? なら話すことはないな」

 久住はそう言うとまた教室に戻ろうとする。奥苗は腕を掴んでその動きをとめる。

「まだ話は終わってねーよ」

「じゃあ、さっさと訊きたいことを訊けよ」

 剣呑な空気が漂う。

「久住。お前この前のプールの授業中どこ行ってた?」

「……そんなこと関係ないだろ」何かを隠すような口調。

「答えろよ」

 久住の腕を握る力が強くなる。久住は顔をしかめた。

「なにもしてないっての。なんでそんなことお前に教える必要があんだ?」

 奥苗は答えに窮する。証拠は何もない。全て憶測の域を出ていないのだ。

「そんだけなら、もういいだろ」

 久住は奥苗の手を剥がして教室の中に入っていった。

 そうだ。証拠は何もない。久住が何も話さないのだとしたら、これ以上情報を聞き出すことはできない。

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