第5話

綾瀬真麻は何度も礼を言ったあと部室から出て行った。

 相談者がいなくなった部屋で、比空は預かったブルマとメッセージをじっと見ている。

「被るのか?」

 言ったあと、我ながら妙な質問だなと思って頬を掻いた。

「ううん。その前に他にも被害者がいないか確認してくる。だって七ってことは、他に六人被害に遭ってる子がいるかもしれないってことだしね」

 比空は勢いよく立ち上がって部室から出て行こうとした。その腕を奥苗が掴む。

「確認ってなにするつもりだ?」

「そんなの、訊いてまわるしかないでしょ。他にも下着切られた子がいるなら、その子の悩みも解決してあげないと」

「やめとけって、比空がそこまでする必要ないだろ」

 比空は奥苗の手を振り払った。

「奥苗のそういう言い方大嫌い」

 と、比空は吐き捨てて乱暴に扉を閉めて出て行ってしまった。

 なんだよ。

 一人残された奥苗は深々とソファーに体重を預ける。

 腹が立つ。最近の比空は他人のためだと自分で信じたら後先考えずに行動する。その行為が誰にどんな影響を与えるのかじっくり考えないのだ。綾瀬のブルマを切った犯人に比空がもし話しかけたらどういう結果になるのか。

 こっちの言うことを聞かないなら勝手にすればいい。

 奥苗は目を閉じる。

「マーシア」

 自分の口から出てきたこの言葉がどこから得た知識なのかを思い出そうとする。

「マーシア、七王国……ブルマ」

 ああ、そうか。奥苗は目を開く。

「あいつから聞いたんだ」

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