【完結】ここは…2.5次元!?

月穂

第1話

「ちょっとそこ、起きなさい!」

 

 パシンッと良い音が響くと同時に女性教師の声も響く。

 

 こうゆう時の女性の声って高すぎるとヒステリックだけど、落ち着いてる感じの声質で授業を聞いていて心地よく知識がしみていく気がする。こうゆう怒ってる声も、ハリがある感じで悪くないと思う。

 まぁ、批評してみたところで今怒られたのは確実に自分なので、仕方なく顔を上げる。目はパッチリ二重とかではなく、どちらかと言うと切れ長な感じの一重で化粧も素っ気ない。そこがまた飾らない感じでいいんだよね。というのが俺の考えで……

 スタイルは、スレンダーって感じかな。全体的に肉がない感じで細いだけじゃないけど、見え隠れする繊細さっていうのかな。強がってる感がかわいい


「ちょっと、あなたのことよ?」


 ヤベ 怒られてるんだった


「ニヤニヤして、きもちわる~い」


 そう声をかけてきたのは列を挟んだ隣に座る生徒。

 こっちは…教師とは正反対だな。スタイルも顔も。みんながみんなカワイイ♡と言いそうなタイプ。性格も人懐っこい感じで今みたいに授業中に話しかけてくることもよくある。


「ねぇ、なんの夢みてたのよ?ニヤニヤしてたけど?」

「うるせぇな。お前には教えてやんない」

「なによぉ。日向ひなたくん?教えてくんないと宿題みせてあげないぞっ」

「チッ」

「あーひどぉい。舌打ちしたでしょ」


 こいつ、勉強はできるんだよな。「授業が終わったら。」そう伝えてそっぽを向くと諦めてくれたらしい。

 そっぽを向いた先でフフッと笑った直後真顔に戻ったのは、反対側のお隣さんである生徒だが……こちらは残念ながら男。イケメン……ではあるんだけど、ジャニーズとかにいるような爽やか+可愛いみたいなイケメンではなく、マッチョ系のイケメン。肩幅とかも結構あるし、一見すると怖いんだけど、中身は人懐こくて犬みたいな感じのやつ。


「わらってんじゃねーよ」


 そう口パクで言うと、「らぶらぶー」と同じく口パクで返してきた。


 授業が終わると待っていたかのように肩に刺激を感じる。流行りの夏色ネイルラメを乗せた爪で、つついているのが目に浮かぶようだ。「寝てるのかな~」なんて思いながら眉尻さげてるのかな、なんて思ったらちょっと面白くって寝てるフリを続けてみた。諦めたように爪先が離れた後、手のひらが触れて大きく体をゆすった。


「ねぇ、起きてるんでしょ?分かってるんだからぁ」

「ばれてたのかよ、めんどくせぇから無視してやろうと思ってたのに」

「あ、ひどぉーい。それで、どんな夢みてたのよぉ」

「しょーがねぇな……


 本当は夢なんて見ないで爆睡してただけで、ニヤニヤにてたのはもっぱら教師の観察をしてただけなんだが、「ジェットコースターに乗っている夢だったのだが、最終的にはジェットコースターが何故か宇宙に飛んでいく」という作り話をして聞かせると目を輝かせていたから……まぁ、悪い気はしないな。

 その流れで俺はジェットコースターが大好きだという話をし、今度一緒に遊園地に行かないか、と約束を取り付けた。

 俺が思うに、ここがこの学校にいいところで……つまり……フラグを立てれば美女とデートに行けるということ。まるでゲームの世界みたいだと思う。


「おい、デートだって?」


 授業開始直前に声をかけてきたのは隣の席の男。こいつ……


「んー羨ましいのかな、あっちゃん?」

「はっ、あっちゃんとか言ってんじゃねーよ」


 顔を真っ赤にして怒るあつしは男の俺から見ても可愛くて……女子に「かわいいー」とチヤホヤされてるのも理解できちゃうんだよな……。そんなことを思いながらイジっていると……


キーンコーンカーンコーン


 チャイムが鳴るが教師は変わらない。それもそのはず2時間続けて数学という憂欝な土曜日なのだから。でも……この授業が終われば月曜日が祝日なので3連休だ。


「この授業が終わったら3連休なんだから、集中するのよ!」


 この声は嫌いじゃない。嫌いじゃないんだけど……数学は嫌いなんだよな~。

 そう思いながらも俺はノートを広げ……ることなく眠りについた。


 その日の放課後……授業中はよく寝ているか、落書きをしているか、寝ているかなので不真面目な生徒だと教員達の間では噂されているかもしれないが、俺は結構、本という物が好きなのである。

 そんな俺が向かったのは、ご存じ図書室。本の発する古い香りと程よい明るさの自然光を取り込んだ空間が意外と好きなんだよね。

 

 図書室の空気を楽しみながらも足は自然と最近ハマっているシリーズ物のある棚へと向かう。俺がハマっているシリーズ物というのは……ミステリーなのだが、次々と人が殺されたり事件が起こったりとすることはなく、何気ない日常の一コマが事件へと繋がっていく様が描かれていて、自分の身にも起こるのではないかという恐怖を誘う。なんだかんだで続きが気になり、今日探しているのは3巻目なのだが……


「ひゃっ」


 下からなぜか小動物の鳴き声が……

 そう思って下を見ると、そこにはやはり小動物……ではもちろんないのだが、なんとなく猫を思わせる少女が立っていた。靴紐の色から察すると後輩らしく面識は特にない。向こうも俺とは初対面らしく、何が起こったのか理解できていない様子……


 3秒後……理解した。


 どうやら俺は本棚の上部にある”3巻目”を捜していたために下の方が見えておらず、身長の低い後輩とぶつかってしまったらしい。


「あ、ごめん。大丈夫?」

「いえ…私こそ…前見てなくて……えっと……その……見逃してくださいっ!」

「え……見逃すって?」

「すみません…本当に、なんでもしますので……どうか……」


……ん?……何言ってんだ、こいつ?……


「……………!」

「……………?」

「いやいやいやいやいや、そうゆうのじゃないからっ」

「”そうゆの”じゃないということは……」

「うん、違うからっ」

「お金ではなく……?」

「うん、お金ではなく。」

「では……なにをすれば見逃していただけますでしょうか?」


……ん?……なんか変なこと言ってるぞ?……


「ちょっとそこ!図書室は私語厳禁ですっ」


 地面から響いてきたんじゃないかと思うほどひび割れた低い声が俺のこんがらがった思考回路を震わせた。


 ナイスだぜ★図書室のばぁちゃん!


「ちょ……ちょっと、外にでようか?」

「ひぃっ」


 あー俺怖い奴じゃないんだけどなぁ~


 冷房の効いていない廊下は図書室よりも数倍暑いけど、こればっかりはしょうがない。とにかく、早急にこの小動物(仮)を処分どうにかしなければ…


「ふぅっ」

「あ……あのぉ」

「あぁ、ごめんな驚かせちゃったみたいだね(ニコ)」

「あ……いえ、そんな……」

「そんなにビクビクしなくてもいいんだよ?


 カクカク……シカジカ……


「つまりね、お互いの不注意でぶつかっちゃったってだけだから、お金とかは関係

 ない。理解?」


 5秒後……


「……!」

「……?」

「つ……つまり……お互いの不注意でぶつかったので、お金の要求等は無い、と?」

「うん、つまり、そうゆうこと」


 ん?コイツいまリピートしただけだよな……?


 変なやつに引っかかったな……とりあえず今日は3巻借りて帰ろう。そう思って図書室に引き返そうとした時、一番見たくないものが視界に入った。

 それは……小動物(仮)に抱えられたためか、やめに大きく見える……俺の探し求めていた“3巻”……!


「あのっ……それっ……!」

「はひ?」

「その3巻って……あーいや、なんでもない。ごめんな」


 変な奴に巻き込まれるし、借りたかった3巻はその変なヤツに先を越されてるし……本当に散々な一日だった。今日はもう帰ろう「はぁ~」と大きな溜息をもらしたその時、神の声が聞こえた……?


「あ、あのっ……この3巻、先輩先に読みますか?」


 1秒経過……


 2秒経過……


 3秒経過……


「えっいいの?」

「はい、構いません。今日の一件は私も悪かったし……」


 それから……お互いに借りようとしていたシリーズ物の話や好きな作家、おすすめの本などの話で俺たちはしばらく盛り上がり、そのうちに意気投合し、すっかり仲良しになってしまっていた。

 小動物(仮)改め理乃亜りのあと俺は文学の趣味がよく合って、連絡先を交換し、これからもおすすめの作家や本を紹介し合うことを約束した。




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